そこに住むのは・・・

1011121301

文字の大きさ
1 / 1

そこに住むのは・・・

しおりを挟む
 当時、私は大学生で地元を出てアパートを借りて一人暮らしをしていました。
 親元を離れてのはじめての一人暮らし。
貧乏学生だった私が探し回ってようやく住み着いたのは築35年は優に超えるボロアパート。そのアパートは年数もさることながら一階部分を駐車場にした4階建てになっており、住宅街に周りを囲まれたその土地ではボロさと建物の高さも相まって少し目立った建物になってました。
 住み始めた1年生の当初はボロアパートながら1DKと一人暮らしにしてはまあまあ広く、私の部屋は一番上の4階にあり、古い建物でエレベーターがなかったので引越しの時や日々の生活での登り降りが大変でしたが、それも考慮されてか家賃も周りの相場と比べだいぶ安かったので特に気にしていませんでした。むしろ、ボロアパートならではともいうべき部屋の状態が問題で、住み始めた当初から風の強い日になると隙間風が吹いたり、扉の建て付けが悪かったり、お風呂が沸きにくかったりとそっちの方に頭を悩ませていました。

 そんなボロアパートに我慢しながら住んでいた私でしたが、1年生の冬になると彼女が出来ました。その彼女というのも偶然、地方の出身で一人暮らしをしていたのですが、お互い一人暮らしで門限なんてものも無かったので頻繁に彼女の家で遊ぶようになり、徐々に泊まることも増えていきました。
 最初のうちは月に数日だったのが、週に数日になり、徐々に自分の家に帰る時間も減っていきました。それこそ、最初のうちは久し振りに帰宅すると生ゴミが腐っていたり、冷蔵庫の中の物が全てダメになっていたりと酷い有り様でしたが次第にそれすらもなくなり、本来住んでた私の部屋からはすっかり生活感を言うものが消え失せていました。
 それからしばらくして、最後にまともに自分の部屋に帰ったのがいつだったか思い出せなくなった頃、彼女と別れてしまい、久しぶりに元の部屋での生活を再開することになりました。

 再開したと言っても、その時にはもう4年生になっていた私は、卒業論文や就職活動に追われてしまい、結局部屋にいる時間というものはこれまでと殆どかわりませんでした。
 ある日、卒業論文の製作の合間に家に帰って過ごしていた時でした。
 シャワーを浴びてリラックスした頃。
 「キィ・・・キィ・・・」
 玄関から音がしたので確かめに玄関まで行ってみると、玄関の扉の鍵がちゃんと掛かっておらず、それが風に揺られて音を立てているだけのようでした。
 「あぁ、またか・・・」
 前述でもお話ししましたが古い建物だったため度々このような事が起きていたのです。
 この時に私ももう少し気に留めておけばよかったのですが、私の地元は玄関に鍵をかける習慣も無いようなど田舎だった為、さして気になりませんでした。
 それからも、間を空けては家に帰るたびに同じような事が起きていました。

 そんなある日、卒業論文も佳境に入り、バイトにも追われ、昼夜逆転の生活になり疲れ切って家で寝ていた頃でした。
 「キィ・・・キィ・・・」
玄関からまた音がしました。これまでもそれ自体は良くありましたが流石に寝る前には確認してから寝ていたので、寝入った後、夜中に扉の音で起きるなんて事は初めてでした。
 「ん・・・」
 疲れもあって夢かうつつかはっきりしないながらもとにかく扉を閉めなきゃという意識だけはハッキリしていて、寝ぼけながらも不思議と玄関まで真っ直ぐ向かっていました。その時、部屋に差し込んでいた光の先に時計があったので目をやると深夜2時を指しており、
 (あぁ・・・折角ゆっくり休もうと思ったのに変な時間に起きしまったな)
 と思いながら玄関の先まで来ました。
 私の部屋の玄関の扉は室内との区切りの所からでも玄関の扉のふちに手をかけて支えにすればドアノブにも手が届くくらい小さな玄関だったのでその時も玄関を下りずに玄関にもたれかかるようにしながら右手を支えにしてドアノブに手を掛けようとした時でした。







 ガッッッ!!!
 ドアの隙間から私の手首を何か手のようなものが掴みました。
 !?!?!?!?
 突然の事に驚いて言葉は出ませんでしたが反射的に手を引こうとした時、耳元で何人かの声を合わせたような声でハッキリと
 「ナンデココニイルノ?」
 と言われその瞬間に私は目が覚めました。

 (ハァ・・・ハァ・・・)
 (夢・・・・・・・・?)

 あまりにの出来事で目が覚めたせいで動悸は止まらず尋常じゃない冷や汗をかいていました。
 (ハァハァ・・・フゥ・・・)
 しばらくして落ち着きを取り戻した私は夢?の中で時計を見ていた事を思い出し時計を見てみると、丁度同じ時間を指していたのです。とにかく気味が悪く、玄関に行って確かに扉の鍵が閉まっている事を確認した私はそのまま朝まで寝れずに過ごしました。
 それからは大学の研究室で寝泊まりをし、卒業と同時に部屋を引き払ったのであの部屋に居たのかは分かりません。あくまでこれは私の推測ですが私が部屋を空けている間にが住み着いていたのかもしれません。
 
 後日談ですが私を部屋を引き払った後すぐに、アパートの前を通ってみると元住んでいた部屋から住人らしき人影を見ました。それが人間なのかなのかは私には分かりません。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

さきがけ
2019.06.27 さきがけ

ボロアパートに住んだことがあるのでしょうか。眼に浮かぶほどリアルな描写で不気味でした。「何か」は元からいたのでなく留守中に住み着いた、というのが新鮮でした。

解除

あなたにおすすめの小説

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

卒業パーティーのその後は

あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。  だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。   そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。

真実の愛を見つけたとおっしゃるので

あんど もあ
ファンタジー
貴族学院のお昼休みに突然始まった婚約破棄劇。 「真実の愛を見つけた」と言う婚約者にレイチェルは反撃する。

予言姫は最後に微笑む

あんど もあ
ファンタジー
ラズロ伯爵家の娘リリアは、幼い頃に伯爵家の危機を次々と予言し『ラズロの予言姫』と呼ばれているが、実は一度殺されて死に戻りをしていた。 二度目の人生では無事に家の危機を避けて、リリアも16歳。今宵はデビュタントなのだが、そこには……。

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。