硝子の瞳に映る蜃気楼

鳴沢ゆき

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1話-いつもの朝-

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 意識があるのか無いのかわからない、この寝起きの感覚。鳥のさえずりによって徐々に意識が明瞭になっていく。重いまぶたを開く。まだ視界がぼやけている。ピントボケした私の視界の先から届く声が、私の視界も脳も一気にクリアにした。
「おはよう、千夜ちやどう、今日の目覚めは?」
 その声の正体は、ベットの横に着けてあるサイトテーブルに置かれた、、、、、、「しゃべる人形」。黒髪で、黒い瞳の大和撫子という言葉がふさわしい"西洋人形"。日本人形ではない。西洋人形だ。日本人顔の西洋人形。球体関節人形。私は返事をする。
「とってもいいよ。なんせ、鳥のさえずりで起きているんだからね!おとぎ話のお姫様みたくない?」
それに対して、皮肉を返す咲夜さくや
「ここが森の中ならまだしも、まわりが田んぼの田舎だからねー」
 ちょっと、むっとする私。しかし、事実。家の周りが、田田田畑田畑田田、そしてたまの竹林。しかし、私は反論する。愛すべき富山の為に。
「富山はいいとこだよー。窓を開けたら一望できる立山連邦!それに水がおいしい!最高!」
耳に響くあきれ声。
「千夜はほんと富山が好きね。」
「ふっふっふー。私は富山と咲夜を愛しているのだよ。」
 何も嘘偽りのない返答。事実、私は好きなのだ。富山も、人形の咲夜も。
「ありがとう。そんなことより。はやく準備しないと、学校ちこくするわよ?」
 照れた声で、話を逸らす咲夜が可愛い。咲夜のいうとおりベットから出て、リュックに教科書とノートを詰める。それから、制服を着て、髪にアイロンをかけて、スプレーをかけて、手で揉む。そうすると、ゆるふわな感じになる。
 そのあとに、昨夜を着替えさせる。咲夜は自分一人では動けない。移動などには人の手が必要になる。ちなみに今日の咲夜の服装は、黒のシャツワンピースでモード系な服。
「わたし、この服好き」
 咲夜のこの声に同調して私もデレながら
「へへー私も好きー」
 という。
 ここまでしたら、やっと自室を出る。階段をおりて、長い廊下を歩いてリビングに行く。いつも思うが、ここがめんどうだ。田舎の家は広い。広すぎる。リビングに入るとコーヒーの匂いがする。母は、いつも私が下りてくる時間に合わせて、コーヒーを入れてくれる。母の入れたコーヒーに砂糖を入れてまぜて、椅子に咲夜を座らせて、飲まずにそそくさと、洗面所に行く。歯を磨いて、リビングに戻る。すると、ややコーヒーが冷めている。このくらいがちょうどいい。そして私は、朝、歯を磨いた後に飲むコーヒーが好きだ。飲んでいる途中に母が
「いつも言ってるけど歯を磨いた後に飲むのって、歯磨き粉の味が残ってて気持ち悪くない?」
と聞いてくる。私は、
「そうなんだけどねー。それがいいがよ。」
しみじみと答えてみる。富山県民のソウルランゲージ。富山弁を混ぜて(これといって意図して言ったわけではないが)。
「それはそうと、今日は何時に帰ってくるの?遅くなるようなら連絡してねー。」
「んー。4時には学校終わるけど、そのあと寄り道すると思う。放課後にショートメール送るよ。」
 こんな会話が終わるころにちょうどコーヒーがなくなる。時計を見ると7:20分。家を出る時間だ。リュックを背負って、昨夜を抱えて玄関に向かう。
「いってらっしゃーい。咲夜ちゃんもいってらっしゃーい」
母が言う。
「いってきまーす」
 私が答えた後に咲夜が、
「お母さま、いってきます」
と答える。ちなみに、この咲夜の声は母には届いていない。咲夜の声は、私と、昨夜の"前の持ち主"しか聞こえないからだ。しかし、母は、咲夜が意思を持っていると信じてくれている。普通は信じないだろう。悪ければ精神病院送りにされかねない。いい母を持ったと常々思っている。
玄関を出たら、自転車の前かごに咲夜をのせて、自転車をこぎ始める。
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