私だけが、あなただと知っていても…

秋風 爽籟

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1章 8話 父との別れ

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父は、なぜこのアパートが分かったのだろうか…



気になったから、川野先生に事情を話して聞いてみた。

川野先生からの返答は…



父は、数十年前から生活保護を受けていて…

その時に福祉課が、梓の居所を調べたそうだ。

でも、梓は施設にいたから、父に援助は出来ないと判断した。

そして、父がもう長くないと知った時に

父は福祉課に娘の居所が知りたいと相談した。

福祉課が、施設に問い合わせをして、住所が分かった。

でも施設の方は、父には直接教えないように言っていたのに…

福祉課が、父に伝えてしまったという経緯があったそうだ。



父が、死ぬ前にどうしても梓に会いたいと頼み込んだらしい…



それから1か月くらい経って…

父が入院している病院から、連絡があった。



「お父さんが、どうしても貴女に会いたいと言っています。一度、病院に来て頂けませんか?」



「分かりました…」



とりあえず、そう答えておいた…



昔のことを思えば、絶対に会いたくない…

でも、父は前世の最初の夫の渉で…

前世でも、梓は渉を見送っている。



とりあえず、病院に行って先生と話してみよう。



梓は、病院に向かった…



病院に着いて…

電話をくれた看護士さんを訪ねた…



「来て下さったんですね…まずは医師から説明があります。こちらへどうぞ」



通された部屋には、優しそうな医師がいた…



「お父さんですが、肝臓癌で余命はもう2週間持つかどうか…というところです。病気が分かった時には手の施しようもなくて…」



「そうですか…」



「お父さんは、ずっと娘さんに会いたいと…おっしゃられていたようです。もし良ければ会ってあげて下さい」



「分かりました…」



それから、看護士さんに案内されて…



父に会った…

父は、もう起き上がれないようで…

でも、少しの会話なら出来ると…



父は、梓の姿を見ると…

泣きながら…



「梓、来てくれたんだね…ありがとう…」



「本当に、すまなかった…お前には酷いことをした…」



「お母さんは、お父さんのせいで亡くなったようなもんなんだよ。今更、何言ってんの?」



梓は、つい大きな声を出してしまった…



「ごめん…何もかも俺のせいなのは分かっている…お母さんが死んだのも俺のせいだ。梓を迎えに行きたかったけど…それも出来なかった…すまない…」



「いくら、謝ったって私は許せない…」



「分かってる…許してもらおうとは思ってないよ…こうして死ぬ前に会えただけでも、俺は嬉しい…」



「私がどんな想いで生きてきたか…」



梓は、泣き崩れた…



父は、ずっと謝り続けた…



梓は、この人のことは許せないけど…

母の死も看取ることができなかったし…

父の死は、看取取らないと後悔するような気がした。



それから…

毎日、仕事が終わってから父の病院に通った。

少しずつ父との会話が笑って出来るようになった頃…



父が危篤だと連絡を受けて…

梓は会社を早退させて貰って…病院に駆け付けた。

父は、もう話すことも出来なかったけど…



父の唇の動きで…



「ありがとう」



と言ったのが、分かった…



そう言った後…

父は亡くなった…



梓は、父を見送って…

遺骨は、持って帰った。



また、私は渉を見送ったんだね…

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