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第一話 僕だけが見えているもの
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幼い頃から人には見えないものが見えていた。ケラケラ笑う黒いモヤだったり、ぐちゃぐちゃになった何かだったり、もしくは人と変わらない形をした何かだったり。
そんな景色が当たり前だった俺は、とにかく普通の人との区別がつかなかった。
だから幼かった俺はとにかくその何か達に声をかけていた。
「どうしてぐちゃぐちゃになっているの?」
「なんで真っ黒なの?」
「なんで首に縄をかけているの?」
その何か達は俺が声をかけるたびに消えていった。俺は不思議に思っていたが、後にその行為を大きく悔やむのだった。
当然何もない空間にずっと話しかけている俺を両親が心配しないわけがなかった。
病院や保健センターでひたすら検査をしたが、その全てが問題なし、という結果だった。
ついに両親は霊媒師と呼ばれる人間にまで頼るようになってしまった。
車で何時間も山道を走ってたどり着いた大きな屋敷。大きな門のそばにはたくさんの人じゃないものがいた。
皆、何かに縋るように門のそばで手を合わせていた。
「タスケテ…タスケテ…」
「クルシイ…」
そんな声ばかりあげていた。
そのうちの一人が俺を見た。
「タスケテ…タスケテ…」
そいつがゆっくりと俺に近づくと、ふっと何もいなかったかのように消える。
俺は不思議に思いながら、門をくぐる両親についていった。
屋敷に入り、大きな居間に通される。
そこにはピンと背筋を伸ばした老婆がいた。鋭い眼光で俺を見ると、
「お前、何人体に入れてるんだ!」
と叫ぶ。
老婆はズカズカと歩み寄り、俺の肩を掴むと俺の目を覗き込む。
お父さんとお母さんが辞めてださい!と声をあげるが聞く耳を一切持たない。
「お前はあれが人間じゃないと分かっていないな」
「外にいるやつの一人がお前の中にいる」
「それ以外にもたくさん」
「よく生きていたな」
老婆はそんなことを捲し立てていた気がする。
老婆は俺の手を引っ張ると、居間の奥にある祈祷場と言われるところに連れて行かれた。
お父さんとお母さんは老婆を信じたのか、祈るようにずっと手を合わせている。
その時、体の奥で何かが蠢くような感覚に襲われる。
「だって寂しいんだもん」
「出ていきなくない、この子の中あったかい」
そんなこと言うつもりがないのに、誰かの言葉が俺の口からどんどん流れていく。
勝手に口を使われている気分だった。
それから何時間もかけて俺の体から何かを出す儀式をした。
しかし、その結果は失敗だった。
老婆は疲れた様子でぐったりとしながら、
「この子の中から奴らを消すことができない」
と悔しそうに言っていた。
老婆からは、
「今後、奴らを見ても絶対に目を合わせてはいけない」
「お前は究極の霊媒体質だ。だから安易に奴らと関わってはいけない。」
と口酸っぱく言われた。
家に帰るまでの道中、お母さんはずっと泣いていた。
お父さんは何も言わずひたすら運転に集中していた。
帰宅してすぐに俺は凄まじい高熱に見舞われ、緊急入院をすることになった。
病室には何人かの奴らがいた。
いつもなら声をかけたり、じっと見たりしてしまうが、老婆からの教えを守ってずっと目を閉じてその夜を過ごした。
「見える?見えるよね?」
「はいりたいはいりたいはいりたいはいりたいはいりたい」
耳元でずっと奴らの声を聞きながら、俺は自分が今までどれほど悍ましいことをしていたのかようやく理解したのだった。
そんな景色が当たり前だった俺は、とにかく普通の人との区別がつかなかった。
だから幼かった俺はとにかくその何か達に声をかけていた。
「どうしてぐちゃぐちゃになっているの?」
「なんで真っ黒なの?」
「なんで首に縄をかけているの?」
その何か達は俺が声をかけるたびに消えていった。俺は不思議に思っていたが、後にその行為を大きく悔やむのだった。
当然何もない空間にずっと話しかけている俺を両親が心配しないわけがなかった。
病院や保健センターでひたすら検査をしたが、その全てが問題なし、という結果だった。
ついに両親は霊媒師と呼ばれる人間にまで頼るようになってしまった。
車で何時間も山道を走ってたどり着いた大きな屋敷。大きな門のそばにはたくさんの人じゃないものがいた。
皆、何かに縋るように門のそばで手を合わせていた。
「タスケテ…タスケテ…」
「クルシイ…」
そんな声ばかりあげていた。
そのうちの一人が俺を見た。
「タスケテ…タスケテ…」
そいつがゆっくりと俺に近づくと、ふっと何もいなかったかのように消える。
俺は不思議に思いながら、門をくぐる両親についていった。
屋敷に入り、大きな居間に通される。
そこにはピンと背筋を伸ばした老婆がいた。鋭い眼光で俺を見ると、
「お前、何人体に入れてるんだ!」
と叫ぶ。
老婆はズカズカと歩み寄り、俺の肩を掴むと俺の目を覗き込む。
お父さんとお母さんが辞めてださい!と声をあげるが聞く耳を一切持たない。
「お前はあれが人間じゃないと分かっていないな」
「外にいるやつの一人がお前の中にいる」
「それ以外にもたくさん」
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老婆はそんなことを捲し立てていた気がする。
老婆は俺の手を引っ張ると、居間の奥にある祈祷場と言われるところに連れて行かれた。
お父さんとお母さんは老婆を信じたのか、祈るようにずっと手を合わせている。
その時、体の奥で何かが蠢くような感覚に襲われる。
「だって寂しいんだもん」
「出ていきなくない、この子の中あったかい」
そんなこと言うつもりがないのに、誰かの言葉が俺の口からどんどん流れていく。
勝手に口を使われている気分だった。
それから何時間もかけて俺の体から何かを出す儀式をした。
しかし、その結果は失敗だった。
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と悔しそうに言っていた。
老婆からは、
「今後、奴らを見ても絶対に目を合わせてはいけない」
「お前は究極の霊媒体質だ。だから安易に奴らと関わってはいけない。」
と口酸っぱく言われた。
家に帰るまでの道中、お母さんはずっと泣いていた。
お父さんは何も言わずひたすら運転に集中していた。
帰宅してすぐに俺は凄まじい高熱に見舞われ、緊急入院をすることになった。
病室には何人かの奴らがいた。
いつもなら声をかけたり、じっと見たりしてしまうが、老婆からの教えを守ってずっと目を閉じてその夜を過ごした。
「見える?見えるよね?」
「はいりたいはいりたいはいりたいはいりたいはいりたい」
耳元でずっと奴らの声を聞きながら、俺は自分が今までどれほど悍ましいことをしていたのかようやく理解したのだった。
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