ナナ

楪 ぷぷ。

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「たまにはいいだろ?」


「そうね。」



いつも家でシてばっかの私たち。



今日はたまたま夜遅くまで外にいたから近くにあったホテルに泊まることにした。



「さすがにホテルのお風呂って違うね。」


「まぁ、プロが手がけるからな。」



湊都に後ろから抱きしめられるようにして湯船に浸かる。



幸い、泡のおかげで裸体が見えることは無い。



「俺たち、初めてだよな。」


「何が?」


「こうやって“普通に”風呂入るの。」


「・・・“普通に“入れないのは湊都のせい。」


「じゃあ、今日も俺のせいにするか?」



耳元で囁かれる。



「んっ・・・。」



湊都の手がお湯の中で妖しく動き始める。



「ちょっ・・・さすがにベッドにしようよ。」


「何で?」


「何でって・・・。」


「初めて風呂でシた時のこと思い出すから?」


「・・・。」


「図星か?」


「・・・言わないで。」


「ほんとお前って可愛すぎる。」



顎に手を添えられ、優しくキスをされる。



何度も啄み、甘くキスをする。



湊都にしては珍しく可愛げのあるキス。



「んぁっ・・・。」



空気を求めて薄く唇を開くと、見計らったかのように湊都の舌が入ってくる。



「んっ・・・。」



もうこうなると湊都のペース。



性感帯を刺激される。



体の力が抜けていく。



ゆっくり唇を離される。



伏し目がちな色っぽい湊都の目に頬が紅潮する。



「キスだけで感じるとは、お前も染まってきたな。」


「湊都のせいでしょ。」


「あぁ。俺のせいだ。だから・・・。」



濡れた手で私の髪を耳にかける。



「この体を俺に染めて最後まで愛し抜く。」








湊都に最後まで“愛し抜かれた”私の体は疲れきっていたもののまだ動ける範囲だった。



お風呂から上がり、少し休憩する。



「お疲れ。」


「お疲れ。」



カンっと音を鳴らし、お酒の缶をぶつける。



ここに来る時にコンビニで買ってきたお酒を飲みながら今日も月を眺める。



と言っても今日は曇り空で月も星も何も見えない。



「月・・・見えないね。」


「あぁ。そうだな。」



間接照明がオレンジ色に部屋を照らす。



少し暗くて湊都の表情をはっきり確認することは出来ない。



「湊都。」


「何だ?」


「セックスしたい。」


「さっきシたばっかだろ。」


「健全なセックスがしたいの。」


「・・・誘ってんのか?」


「うん。誘ってる。」



そう言ってバスローブを脱ぐ。



下着姿になり、窓際に座る湊都の上に跨る。



驚いた表情の湊都。



ここまで近くにいないと表情って確認できないんだ。



「どうしたんだ、急に。」


「近くにいたい。」


「・・・。」


「湊都の1番近くにいたいの。」


「どうなっても知らないぞ。」


「早くシて・・・。」








side湊都



欲情したナナの顔。



色っぽくて綺麗で可愛くて。



俺を誘惑するその体は仄かに赤く見えた。



興奮すると肌が赤くなる。



俺のことを求めてくれている証拠だった。



ナナの後頭部に手を回し唇を塞ぐ。



ナナの腕が肩から背中に回る。



激しくキスをしながらナナをベッドに降ろす。



「早く・・・。」


「勿体ないだろ?」



ナナの声。



吐息。



反応する体。



快感を隠せない表情。



全てが愛おしい。



俺の手に堕ちていくナナが。



俺に染まっていくナナが。



愛おしくて仕方がない。



「なぁ、ナナ。」


「なっ・・・に?」


「俺、お前の名前入れようかな。」


「じゃあっ・・・私も入れようかな。」



ふんわりと笑うナナ。



やっぱり手加減なんて出来ない。



その笑顔を見て抑えるなんて出来ない。



「ナナ・・・愛してる。」
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