1 / 106
1 最終決戦
しおりを挟む
「せっかくここまでたどりつけたのに……」
「強すぎる。どれだけの魔力をため込んでいるんだ!?」
目の前には、俺たちの倒すべき対象――魔王ディアブロがいる。魔法や聖剣で傷をつけたはずが、たちどころに治癒し、逆に魔法の反撃を食らってしまった。
ただの《魔弾》だけで、苦戦を強いられるほどの威力。
「よく我が牙城にまでたどり着けたな。――だが」
魔王ディアブロは強大だった。魔獣の頭骨で作った兜をかぶり、黒いローブを羽織り、赤く長い髪をなびかせる様は、異様な威圧感を空間全体にはらませていた。
「貴様らはここで終りよ!」
どれほど強くても、魔王を倒す。
俺たちはそのために来たのだ。
魔王を倒す方法――魔王はただ攻撃をするだけでは倒せない。魔力のない通常の武器では傷一つつけられない。魔法などで攻撃しても、無尽蔵ともいえる魔力をその体内に宿しており、ダメージを与えてもすぐにその魔力で再生してしまう。
しかしその身に宿す魔力をすべて消失させれば魔王も消滅する。
魔力は肉体の維持にも費やされるため、供給していかなければ徐々に失われていく。
だから魔王そのものを封印し、長い年月をかけ魔王の中の魔力を失わせることで、魔王を消滅させる。それを可能にするのが《封印の聖槍》と呼ばれる、聖女が生み出した特殊な槍だ。魔王に《封印の聖槍》を突き立て、その身を封印する。一撃でも突き立てられれば、封印は完遂する。
それが、俺たちに課された使命だった。
「いくら攻撃しても無駄よ。この魔王ディアブロは倒せん」
勇者ラザレス・イースデイルが《封印の聖槍》を手に立ち上がった。
「敵わなくとも、槍さえ魔王に突き立てられれば勝てるのに!」
「これだけ隙がないのではな……」
魔法使いのロイ・グロースターも苦い顔をする。
「皆さん、頑張って下さい。こんなことしかできませんが……!」
聖女のネル・アッシュモアが魔法で傷ついた勇者たちを回復させる。
「俺が切り開く」
俺が前に出た。
「俺が魔王と戦い隙を作るから、その間にやってくれ」
「ゼノン、だめだ!」
さすが勇者ラザレス、勘がいい。
俺のやろうとすることがわかっていて、止めようとした。
けどな。
「俺がやるさ。やらせてもらう」
「やめろ!」
右腕の紋章が光り、精霊剣を召喚する。
「――《精霊剣使い》ゼノン・ウェンライト。五つの精霊剣を操る剣士か」
「知っているなら話が早いな魔王よ」
《第一精霊剣・ブーステッド》。
俺の右腕に刻まれている第一の紋章が光る。
身体機能を極限まで上げて、駆け抜け、魔王に肉迫する。
「おおおおっ!」
「たかが剣士風情が!」
魔法障壁を貼る魔王。かまわない。速度と力に任せた一閃で、障壁を破る。
だが破った衝撃か、俺の右腕に痛みが走る。
骨にヒビの一つでも入ったか。
「くっ!」
それでも、精霊剣を叩きこむ。
連撃。
矢継ぎ早に振るわれる刃は、魔王の体を傷つけるも、傷つけたそばから治癒していく。
「ちいっ!」
すかさず、腕に刻まれている五つ目の紋章が光り、新たな剣を召喚。
《第五精霊剣・精霊王の剣》。
実体と非実体が混ざり合った、『あらゆるもの』を切る剣だ。精霊王から賜った、五つ目の、最後の精霊剣。
それを左手で持ち、ブーステッドで強化した体で魔王に突き立てる。
――が、しかし。
「ふん、甘いわ!」
魔王の放った《魔弾》が、俺の体を貫いた。
腹に穴が空いたのがわかった。
「ぐっ、まだだあああ!」
俺はそのまま、踏み出して魔王を押さえつける。
「今だラザレス!」
「ゼノン!?」
まだ《ブーステッド》の強化は効いている。魔王を押さえつけられている。しかし、いつまで押さえつけておけるかはわからない。
「俺のことはいい! 一緒に貫け!」
「しかし……!」
「早くしろ! 魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」
俺ごと《封印の聖槍》で封印しろ、とラザレスに言った。
ラザレスはまだ逡巡していた。
「だが、お前だけ犠牲になんて……!」
「ああ。だから、お前らにも背負ってもらうぞ。事後処理の面倒くさい仕事とかをな」
《封印の聖槍》がまばゆい光を放って、実体がなくなる。光の槍となったそれを構え――
「う、うああああっ!」
ラザレスは俺ごと魔王の体を貫いた。
「なっ」
「――っ!」
「なんだとおおおおっ!?」
魔王の表情は被り物のせいで見えないが、しかし声が上ずっている。相当狼狽しているに違いない。女のようなずいぶん高い声だ。ざまあない。
ラザレスは肉体ごと俺たちの魂が槍に封印されていくのを見ながら膝をつき、涙を流した。
《封印の聖槍》の光が収まってきて、槍という実体を取り戻していく。同時に、俺と魔王も光の粒子となって消えつつあった。
「すまない……! 本当にすまない……!」
いいんだ……。これで世界が平和になるのなら。
喜んで犠牲になる覚悟はできている。
俺たちはそういう旅をしてきて、そういう思いのもとに結束した仲間だったじゃないか。
誰かが犠牲になってでも魔王を止める。誰が言わなくても、みんなそれはわかっていたはずだ。
どうせ腹に穴が開いている。半死人のようなものだ。犠牲になろうとそのままだろうと、いずれ死ぬのには変わらん。
その後の平和な世界と、ラザレスとネルが幸せになるのを見届けられないのは、少し心残りではあるか。
しかしいい気分だ。
こんな気分で逝けるのなら悪くない――そう考えたのを皮切りに、俺の意識は途絶えた。
「強すぎる。どれだけの魔力をため込んでいるんだ!?」
目の前には、俺たちの倒すべき対象――魔王ディアブロがいる。魔法や聖剣で傷をつけたはずが、たちどころに治癒し、逆に魔法の反撃を食らってしまった。
ただの《魔弾》だけで、苦戦を強いられるほどの威力。
「よく我が牙城にまでたどり着けたな。――だが」
魔王ディアブロは強大だった。魔獣の頭骨で作った兜をかぶり、黒いローブを羽織り、赤く長い髪をなびかせる様は、異様な威圧感を空間全体にはらませていた。
「貴様らはここで終りよ!」
どれほど強くても、魔王を倒す。
俺たちはそのために来たのだ。
魔王を倒す方法――魔王はただ攻撃をするだけでは倒せない。魔力のない通常の武器では傷一つつけられない。魔法などで攻撃しても、無尽蔵ともいえる魔力をその体内に宿しており、ダメージを与えてもすぐにその魔力で再生してしまう。
しかしその身に宿す魔力をすべて消失させれば魔王も消滅する。
魔力は肉体の維持にも費やされるため、供給していかなければ徐々に失われていく。
だから魔王そのものを封印し、長い年月をかけ魔王の中の魔力を失わせることで、魔王を消滅させる。それを可能にするのが《封印の聖槍》と呼ばれる、聖女が生み出した特殊な槍だ。魔王に《封印の聖槍》を突き立て、その身を封印する。一撃でも突き立てられれば、封印は完遂する。
それが、俺たちに課された使命だった。
「いくら攻撃しても無駄よ。この魔王ディアブロは倒せん」
勇者ラザレス・イースデイルが《封印の聖槍》を手に立ち上がった。
「敵わなくとも、槍さえ魔王に突き立てられれば勝てるのに!」
「これだけ隙がないのではな……」
魔法使いのロイ・グロースターも苦い顔をする。
「皆さん、頑張って下さい。こんなことしかできませんが……!」
聖女のネル・アッシュモアが魔法で傷ついた勇者たちを回復させる。
「俺が切り開く」
俺が前に出た。
「俺が魔王と戦い隙を作るから、その間にやってくれ」
「ゼノン、だめだ!」
さすが勇者ラザレス、勘がいい。
俺のやろうとすることがわかっていて、止めようとした。
けどな。
「俺がやるさ。やらせてもらう」
「やめろ!」
右腕の紋章が光り、精霊剣を召喚する。
「――《精霊剣使い》ゼノン・ウェンライト。五つの精霊剣を操る剣士か」
「知っているなら話が早いな魔王よ」
《第一精霊剣・ブーステッド》。
俺の右腕に刻まれている第一の紋章が光る。
身体機能を極限まで上げて、駆け抜け、魔王に肉迫する。
「おおおおっ!」
「たかが剣士風情が!」
魔法障壁を貼る魔王。かまわない。速度と力に任せた一閃で、障壁を破る。
だが破った衝撃か、俺の右腕に痛みが走る。
骨にヒビの一つでも入ったか。
「くっ!」
それでも、精霊剣を叩きこむ。
連撃。
矢継ぎ早に振るわれる刃は、魔王の体を傷つけるも、傷つけたそばから治癒していく。
「ちいっ!」
すかさず、腕に刻まれている五つ目の紋章が光り、新たな剣を召喚。
《第五精霊剣・精霊王の剣》。
実体と非実体が混ざり合った、『あらゆるもの』を切る剣だ。精霊王から賜った、五つ目の、最後の精霊剣。
それを左手で持ち、ブーステッドで強化した体で魔王に突き立てる。
――が、しかし。
「ふん、甘いわ!」
魔王の放った《魔弾》が、俺の体を貫いた。
腹に穴が空いたのがわかった。
「ぐっ、まだだあああ!」
俺はそのまま、踏み出して魔王を押さえつける。
「今だラザレス!」
「ゼノン!?」
まだ《ブーステッド》の強化は効いている。魔王を押さえつけられている。しかし、いつまで押さえつけておけるかはわからない。
「俺のことはいい! 一緒に貫け!」
「しかし……!」
「早くしろ! 魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」
俺ごと《封印の聖槍》で封印しろ、とラザレスに言った。
ラザレスはまだ逡巡していた。
「だが、お前だけ犠牲になんて……!」
「ああ。だから、お前らにも背負ってもらうぞ。事後処理の面倒くさい仕事とかをな」
《封印の聖槍》がまばゆい光を放って、実体がなくなる。光の槍となったそれを構え――
「う、うああああっ!」
ラザレスは俺ごと魔王の体を貫いた。
「なっ」
「――っ!」
「なんだとおおおおっ!?」
魔王の表情は被り物のせいで見えないが、しかし声が上ずっている。相当狼狽しているに違いない。女のようなずいぶん高い声だ。ざまあない。
ラザレスは肉体ごと俺たちの魂が槍に封印されていくのを見ながら膝をつき、涙を流した。
《封印の聖槍》の光が収まってきて、槍という実体を取り戻していく。同時に、俺と魔王も光の粒子となって消えつつあった。
「すまない……! 本当にすまない……!」
いいんだ……。これで世界が平和になるのなら。
喜んで犠牲になる覚悟はできている。
俺たちはそういう旅をしてきて、そういう思いのもとに結束した仲間だったじゃないか。
誰かが犠牲になってでも魔王を止める。誰が言わなくても、みんなそれはわかっていたはずだ。
どうせ腹に穴が開いている。半死人のようなものだ。犠牲になろうとそのままだろうと、いずれ死ぬのには変わらん。
その後の平和な世界と、ラザレスとネルが幸せになるのを見届けられないのは、少し心残りではあるか。
しかしいい気分だ。
こんな気分で逝けるのなら悪くない――そう考えたのを皮切りに、俺の意識は途絶えた。
83
あなたにおすすめの小説
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件
シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。
旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜
もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。
ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を!
目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。
スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。
何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。
やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。
「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ!
ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。
ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。
2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる