封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう

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14 素材を換金する

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町にフォレストワームを担いで帰ると、周囲の人々はざわめいた。
なにやらこちらを見て驚いた表情をしている。

「……なんだ?」

ワームをそのまま売買所へ持って行くと、さらに周囲がざわついた。

「で、でかい……」

売買所には入らず、外に出している。窓の外を見て、売買所のお兄さんは言葉を失っていた。

「たしかに平均よりでかいな」

「すごいですね! こんなでかいの仕留められる人はなかなかいないですよ! BランクとかAランクの冒険者さんですか?」

「いや、今日Eランクに上がったばかりだ」

「え……!?」

「拳と石で倒した」

「ええ!?」

売買所のお兄さんは茫然としていた。

「あとツノウサギの皮もある」

「あ、はい……! ところで、アイテムボックスなどは持ってはおられないのですか? 直接持ってくるよりそちらに入れて持ってくるのが主流ですが」

「ああ、金がなくて買えていない」

「直接背負って持ってくる人なんてなかなかいないですよ。注目されたでしょう?」

「そういえばざわついていた。……バックパックを売っている場所があるなら紹介してもらいたいのだが」

「バック、パック……っていうんですか? そちらの国では?」

……ん? バックパックの話だよな?

「それでしたら、冒険者協会の装備品屋に売っているので後でお立ち寄りください」

いちおう会話はできている。お互い何かかみ合っていない感があるが。

しかし全部冒険者協会なんだな。素材売買も装備品も。いい商売しているな。

「では、買取させていただきます」

フォレストワームは解体の手数料も抜かれる。
それでも個体が個体なのでいい稼ぎになった。

「五万三百バードルです」

言われて渡されたのは、小銭が数枚と、なんと紙切れだった。

「貴様……」

「はい?」

「俺が田舎者だから稼ぎをちょろまかそうとしてはいないか?」

これには俺も憤慨した。

「バードルの価値はわからんが、五万も稼いでおいて紙切れがたった五枚とは……舐められたものだな」

「ええっ!?」

カミではなくカネを渡せと言っている! これだけ言ってまだ誤魔化そうとするか!」

「それがお金ですぅ……」

「なんだと……!?」

お兄さんは涙目で訴える。嘘をついているわけではなさそうなので真実らしい。

話を聞くと、どうやら市場では紙幣と呼ばれる、紙の金が出回っているようだ。

「すまん」

「はいぃ……」

ちなみに食費だけなら、一万バードルでも節約すれば一ヶ月は持つらしい。旅費が欲しいから、もう少し欲しい。

俺の時代において、カネの価値とは、金貨、大銀貨、小銀貨、大銅貨、小銅貨となっていた。

まさか紙が金の代わりになるとは思いもよらなかった。
ちなみに金額が低い場合は普通に貨幣である。銀貨や銅貨もある。紙の方が価値があるのかと驚いた。貨幣の方が価値が高いと思いがちだがそうではないらしい。

一万バードル札には、なんか見知った人物の顔が載っていた。

「これ、もしかしてロイか?」

やや見分けがつく程度だが、かつての仲間、魔法使いのロイ・グロースターである。
トンガリ帽子をかぶった渋い老人の姿で描かれている。かなり精巧に描かれていた。
お前……お金になってたのか。魔法の研究ばかりしていて、お金そんなに好きじゃなかっただろ。
ていうか、ちゃんと老人になるまで生きていたんだな。そこは安心した。

「……ん?」

横を見ると、大変しょんぼりしながら貨幣をほんの数枚握りしめている魔王がいる。

「一日中草取って、たったこれだけか……」

ぼそりとつぶやく。銅貨の価値を聞いて絶望したに違いない。

なんだかかわいそうになってくる。

「ま、近くで木の実を見つけて取って来たし、これで今日はしのぐか……」

食料は一応確保したらしい。俺は満足げに魔王に話しかけた。

「そうしょんぼりするな魔王よ。最初なんてそんなもんだ」

「貴様、アホ剣士! いつからいたのだ!?」

「俺は今から、今日の稼ぎで塩を買う。分けてやろうか?」

「ふざけるでないわ! 塩だけあって何ができる!? 愚かで矮小なる人間が!」

愚かで矮小な魔族が何か言ってるぞ。

俺は閉店間際の市場で塩売りから塩を購入した。まだツノウサギの肉は残っている。今日の夜はこれで塩焼でもして食おう。

「お客さん、その恰好古風でかっこいいね。異国人?」

「あ、ああ、まあ、そんなようなもんだ」

「もしまだ金が余ってるならこっちもおススメだぜ」

と塩売りが別の商品を薦めてきた。

「なんだ?」

「カレー粉っつうんだがよ、これをかければどんな肉だって最高にカレー味になるぜ」

「カレーがよくわからんが、味のバリエーションが増えるなら歓迎だ。もらおう」

「毎度!」

小綺麗な瓶に入ったカレー粉という調味料を買う。入れ物も格段に発達していて、戸惑うばかりだ。塩はもともと持っていた皮袋に入れてもらった。瓶の蓋を開けると、少しツンとする独特の匂いがする。どんな味がするんだ、これ。今日は塩焼きが食いたいから、今度の機会にでも使ってみるか。

「くさっ! なんか臭いぞその粉! 儀式とかに使うのか!?」

魔王は眉間にしわを寄せていた。
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