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22 英雄の町クインタイル、混乱の渦中
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片隅の町クインタイルは、混乱のさなかにあった。
見張りをしていた自警団より巨大なワームが大地を耕しながら迫っているとの報が町中に知れ渡ったのだ。
魔獣災害は昔の世界においても現在の世界においても非常に厄介で予測しがたい災害の一つだった。
逃げ惑う人々を誘導する様に、自警団と冒険者が一丸となり町中の人たちを避難させていた。
――が、しかし超巨大ワーム・グランドイーターの進行速度はあまりにも早かった。
老人や病気の人々が取り残され、そうでない人々でさえ混乱のままどちらに逃げていいのか右往左往しているところに、グランドイーターが木々や街道を飲み込みながら、ついに町へ到達しつつあった。
この魔獣、もはや地中へ隠れてこっそり獲物に近づく必要さえない。超巨大ワームは、ただ進むだけで、大地もそこにある植物も動物もすべて飲み込んでいく。
ゆえの『大地喰い(グランドイーター』という名である。
災害という名にふさわしく、人間の力で止めることなど不可能なほどの質量と勢い。
冒険者の中でも、とくに猛者として位置づけられるA級冒険者でさえ匙を投げる強大さ。
「もう、終わりだ……」
その迫る姿を見た者が、生存をあきらめてへたり込んだ。
「いいから、あなただけでも逃げて!」
足を怪我して動けない母親が、泣きじゃくる娘だけでも助けようとその背中を強く押して声を荒げた。
「もう私たちは十分生きたよ。なあ、そうだろう?」
「ええ、そうね……」
最期を最愛の人と添い遂げようと、老夫婦が穏やかな顔で笑いあった。
「ふざけんじゃねえよ……!」
そんなこの世の終わりのような光景を背にして、町の前に立ちはだかる若い男が一人。
グランドイーターは、すぐそこまで迫っている。
それを正面から見据えて、
「どいつもこいつも逃げたりあきらめたりよ、弱者みてえなリアクションしやがって!」
若い男――ランドは剣を抜いて構え、気炎を吐いた。
ランドの手足は、恐怖で震えていた。
「敵わなくったってなあ! 俺の、思い通りにいかなくったってなあ!」
彼の仲間たちはみんな逃げて行った。
それでも、グランドイーターを止めようという意志で一人、立ち向かおうとしていた。
「俺はこの町を気に入ってる! 生まれ育った、たった一つの故郷なんだ! だから、だからなあ! だから、壊されてたまるものかよ!」
ふいに、大地がめくれ上がり、グランドイーターの半身ほどが地上にさらされた。
「あ……」
例えば、倒れてくる城に剣で切りかかるようなものである。
どうしようもない巨大さに、ランドは唖然となった。
そして悟った。
どうやっても、自分はこの魔獣に勝てない。どころか、足止めさえもかなわない。
自分ごと町の建物を飲み込んで、それでおしまいだ。相手にとっては、ただの食事なのだ。そして自分は、敵でさえないただの食糧だ。
大口を開けて迫るグランドイーターに、ランドは持っていた剣を取り落としそうになった。
その時。
「おおおおっ!」
グランドイーターがランドを飲み込もうとした瞬間、その巨体が、聞いたことのある声とともに横にそれた。
いや、その頭部めがけて、あろうことか横から蹴りを入れた人物がいたのだった。
「男を見せたなランド。見直した」
グランドイーターがひるんで悶絶するのを横目に、その男――冒険者トントンはランドに笑いかけた。
見張りをしていた自警団より巨大なワームが大地を耕しながら迫っているとの報が町中に知れ渡ったのだ。
魔獣災害は昔の世界においても現在の世界においても非常に厄介で予測しがたい災害の一つだった。
逃げ惑う人々を誘導する様に、自警団と冒険者が一丸となり町中の人たちを避難させていた。
――が、しかし超巨大ワーム・グランドイーターの進行速度はあまりにも早かった。
老人や病気の人々が取り残され、そうでない人々でさえ混乱のままどちらに逃げていいのか右往左往しているところに、グランドイーターが木々や街道を飲み込みながら、ついに町へ到達しつつあった。
この魔獣、もはや地中へ隠れてこっそり獲物に近づく必要さえない。超巨大ワームは、ただ進むだけで、大地もそこにある植物も動物もすべて飲み込んでいく。
ゆえの『大地喰い(グランドイーター』という名である。
災害という名にふさわしく、人間の力で止めることなど不可能なほどの質量と勢い。
冒険者の中でも、とくに猛者として位置づけられるA級冒険者でさえ匙を投げる強大さ。
「もう、終わりだ……」
その迫る姿を見た者が、生存をあきらめてへたり込んだ。
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足を怪我して動けない母親が、泣きじゃくる娘だけでも助けようとその背中を強く押して声を荒げた。
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「ええ、そうね……」
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「ふざけんじゃねえよ……!」
そんなこの世の終わりのような光景を背にして、町の前に立ちはだかる若い男が一人。
グランドイーターは、すぐそこまで迫っている。
それを正面から見据えて、
「どいつもこいつも逃げたりあきらめたりよ、弱者みてえなリアクションしやがって!」
若い男――ランドは剣を抜いて構え、気炎を吐いた。
ランドの手足は、恐怖で震えていた。
「敵わなくったってなあ! 俺の、思い通りにいかなくったってなあ!」
彼の仲間たちはみんな逃げて行った。
それでも、グランドイーターを止めようという意志で一人、立ち向かおうとしていた。
「俺はこの町を気に入ってる! 生まれ育った、たった一つの故郷なんだ! だから、だからなあ! だから、壊されてたまるものかよ!」
ふいに、大地がめくれ上がり、グランドイーターの半身ほどが地上にさらされた。
「あ……」
例えば、倒れてくる城に剣で切りかかるようなものである。
どうしようもない巨大さに、ランドは唖然となった。
そして悟った。
どうやっても、自分はこの魔獣に勝てない。どころか、足止めさえもかなわない。
自分ごと町の建物を飲み込んで、それでおしまいだ。相手にとっては、ただの食事なのだ。そして自分は、敵でさえないただの食糧だ。
大口を開けて迫るグランドイーターに、ランドは持っていた剣を取り落としそうになった。
その時。
「おおおおっ!」
グランドイーターがランドを飲み込もうとした瞬間、その巨体が、聞いたことのある声とともに横にそれた。
いや、その頭部めがけて、あろうことか横から蹴りを入れた人物がいたのだった。
「男を見せたなランド。見直した」
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