封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう

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26 そして殺し合いへ

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町の外、城壁の裏。人気のないところで、俺と魔王は対峙した。

「いったいなんなんだ!? 何をする気だよ! 説明しろ、おい!」

そのまま付いてきたランドは威嚇するように声を荒げた。

「ちょうどいい。ランドよ、見届け人になってくれないか」

「何のだよ!?」

「無論、この戦いの」

「はあ!?」

「――《ブーステッド》」

俺は契約の魔法陣を展開し、精霊剣を召喚した。

魔王は、一定の距離で腕を組み、冷めた目でそれを観察している。

「この度は大変残念な結果になってしまった。なぜなら、お前が生きていた」

言いながら、俺はブーステッドを構えた。

「グランドイーターか。我が止めてもよかったんだがなあ。栄養補給で忙しかった」

「お前に止められたか?」

「無論。今のように栄養補給が済んだ後ならな」

「ふん、魔力を蓄えたか。それは非常に悪い知らせだな」

「祝え。魔王復活の第一歩ぞ」

「いい提案だ。魔王復活阻止のお祝いにしよう」

「やれるものならな!」

「当然だ!」

示し合わせたわけでもないのに、お互い同時に距離を詰めた。

魔王が、その小柄な体格を活かして素早く懐に入り込む。
手を伸ばし、俺の腹に触れそうなほどの距離で魔法陣を展開。避ける暇さえ与えない距離での、魔弾。

「ぬうっ!?」

俺は体を逸らしそれを避ける。
避けた先にあった林へ魔弾が着弾し、一帯を消し炭にする。
そして、その一撃で確信する。まだ魔王の魔力は完全に回復していない。
魔法の質が以前のときと全然違った。スピードも、威力も、全く驚異的ではない。
以前はほぼ無尽蔵に存在していた魔力。その回復には、やはり時間がかかるらしい。

避けざま、ブーテッドの一撃を叩き込む。

「!」

しかしそれを魔王は障壁の魔法で防いだ。

「なっ!?」

ランドは、声を上げた。

「巨大グランドイーターを仕留めたトントンの剣を止めた!? ただの子どもが!?」

言ってから我に返ったようで、

「いや、そもそも何やってんだあんたら!」

いきなり命のやり取りを始めた俺たちに戸惑っているようだ。

「忌々しいな、やはり」

俺は吐き捨てた。

そもそも、ブーステッドは障壁の魔法を破るほどの力も出せたはずだ。
それができないということは、俺自身の力も、やはり完全回復したわけではないということになる。

「気が合うな。我もそう考えていたところぞ」

距離をあけ、魔弾を連発する魔王。

俺はそれを避けながら接近しての二連撃。
しかしそれも障壁に阻まれる。

動きは俺のほうが速いはずだが、魔王の予測は俺の速さに追いついている。高すぎる戦闘センスで、足りない部分を補っている。

「嘘だろ。俺は何を見ているんだ? 親子喧嘩どころか、冒険者同士の決闘なんてレベルでもねえ。戦いの次元が違う……!」

魔弾を避け、剣を防がれ。一撃見舞えればそれで勝敗は決するような強烈な攻撃の応酬。それを紙一重で避け、すんでのところで防ぎを繰り返す。息を呑むような攻防。

何度かそれを繰り返したのち、俺たちは示し合わせたわけでもないのにお互い同時に脱力した。

「やめだ! 埒があかん! 貴様、なぜそこまで力が戻っている!? 精霊剣は使えないのではなかったのか!」

言いながら、魔王があからさまに嫌そうな顔をした。

「お前こそ、ただの木の実でそこまで魔力が回復するか普通!?」

やはりこの魔王を削り切るには、精霊王の剣が必要不可欠か。

そして、魔力の回復には相当時間がかかると踏んだ。
五百年という歳月、弱体化し続けてきたのだ。そうそう戻ってたまるか。
今の状態でもそのへんの魔法使いよりはずっと強いのだろうが、封印前の強さはそれのさらに数百倍数千倍は上を行く。

直感する。俺の方が早く力を取り戻せる、と。

俺は精霊剣をしまった。

「……まあ、こういう喧嘩はちょくちょくすると思うが、仲良くやっていこうウルカよ」

「そうだなトントン。我らは一蓮托生だ」

そして何事もなかったかのように俺たちはぎこちない笑顔で握手を交わす。

「いや喧嘩とかそういうレベルじゃなかったって! ガチの殺し合いだったって! なに普通に仲直りしてんだ!?」

ランドがもっともな指摘をする中、ギリギリギリ……お互い握手をする手を全力で握り潰そうとする俺たち。お互いダメージはなかったが。

「……まあいい。荷物をまとめろウルカ。明日の朝にはこの町を出るぞ」

「え?」

俺が言うと、魔王ではなくランドの方がキョトンとした顔で俺を見た。

「なんだ、急だな。構わんが」

と魔王。

「旅の資金がある程度溜まった。数日分の食料と水を買ってから、ここを出る。移動費だけは出してやるぞ」

俺は魔王に答える。

「お、おい、町を出るのかよ!」

「ああ、旅の途中でな」

「は、はあ!? いきなりすぎだろ!」

ランドは何やら、慌てた様子だ。

「ランドにも世話になったな」

「ふざけんなよ、てめえ……」

「次に会うときまでに鍛えておけよ」

俺は微笑しながら言うと、ランドは舌打ちで返す。

「……グランドイーターを倒せるくらいにまでなってやるよ、くそが」

「おう」

……とりあえず保存食を探しに市場へと足を運ぶか。

俺が一歩歩いたところで、

「――!」

また突然、べつの風景にすげ変わった。

森羅ではない。

あたり一面の白。地平線まで凍りついた、永久凍土の世界。

ひどい吹雪だ。すぐ先の視界すらはっきりしないうえ、暗雲で太陽が隠れている。白い大地と灰色の空の世界。寒さは不思議と感じない。

霊域グラシアル。

ということは、ここにいるのは……。

「お久しぶりね剣士さん。今はトントン、でいいの?」

地吹雪がある程度晴れてくる。

生物が何一ついないと思われる真っ白な世界で、その少女は短いスカートで平然と近くの岩場のような場所に座ってこちらを見ていた。

「ああ。冒険者トントンと名乗っている。……森羅と一緒で、五百年経っても姿形は変わらないようだな」

十五歳ほどの銀髪の美少女の姿である。ぶらぶら足を遊ばせながら俺を見下ろしている。

精霊スノーフォール――霊域グラシアルの主であり、二振り目の精霊剣の契約を交わした大精霊であった。
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