封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう

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42 ボルケーノ・バースト

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槍を構えた僧兵が、俺たちを取り囲む。

精霊スノーフォールの言質を取り、神父以外は納得していたのに、これである。

「スノーフォールが言っているのに、これか」

俺は仮面越しに、殺気をこめて神父を睨みつけた。

びくりとなる神父は、おどおどしながら僧兵の後ろに隠れる。

「早くやれえ!」

一斉にかかる僧兵。

俺は腰の剣を抜き、領主を守りながら、襲いくる僧兵を次々に切り伏せていく。
槍の間を掻い潜って切り捨て、領主を狙う刃を防ぎながら切り捨て、切り捨て、切り捨て、切り捨てる。

「つっ、強すぎる! なんだこいつは!」

「あ、足が!? 足が凍って動かない!」

見ると、スノーフォールが魔法で僧兵の足元を凍らせていた。

「いい支援だ!」

「へへっ、私だって、見てるだけじゃないよ!」

――その時、

「うおおおっ!?」

「ギャアアアアッ」

けたたましい音がして、教会内が破壊された。

聖堂と神父の部屋の壁が破壊されて風通しが良くなる。

「これは!?」

間違いない。魔弾である。
魔弾でこの威力とすれば、一人しかいない。――魔王の魔法が、教会に炸裂したのだ。

それにより、西の神父が壊れた壁に直撃して吹き飛んだ。

「おお? なんだ、変な仮面をかぶっているが、アホ剣士か? 貴様もきていたとはな」

巨大な穴が空いた西側の外に魔王がいた。

「お前か。ようやく見つけたぞ」

「で? 西の教会の神父はどこか?」

「おまえがすでに吹っ飛ばした」

「なんだ、骨がない」

「好き放題しているようだな」

「うむ、好き放題している」

「やはり目を離した俺がいけなかったようだ」

「なぜ貴様に我の行動を監視されねばならん」

「早朝から霊域グラシアルに向かうという約束はどうした」

「あっ」

魔王はぎくりとして顔を逸らした。

「やはり忘れていたか」

「……忘れてなどおらん」

「嘘をつけ」

「嘘ではない」

「ではなぜ来なかった」

「ちょっと、あれだ、人助けをな」

「お前が? ありえん」

「見くびるなよ、我を」

「大事な用事を忘れるとは、これでお前が阿呆だということが証明された」

「変な仮面かぶったやつに阿呆などと言われたくないわ!」

「なんだ?」

「やるか?」

瓦礫を跨ぎながら半壊の教会に入って来た魔王と睨み合いをする。

「やめなさいって!」

スノーフォールに言われて、俺たちはそっぽを向いた。

「ふん!」

「ふん!」

そっぽを向くと、激昂した東の神父の顔が目に入った。

「貴様らあああ! よくも! この異端者どもがあああ!

「西の神父と違って運のいいやつだな」

神父は、持っていたマナ・クォーツを起動させた。

何だ?

地響きとともに、何か金属の塊が地面を破って現れる。

巨大な砲塔のついた六脚の兵器だった。マナ・クォーツが中心に光っている。

どこか、見たことのあるものだ。

「どうだあああ!? はるか昔、魔王軍が使っていた移動砲台を再現したものだ! その名も『ボルケーノ・バースト』!」

「五百年前に見たな……そういえば、似たようなのを」

「この兵器で、全て焼き払ってくれるわ! その忌々しい氷雪ごと、すべて!」

砲塔から魔法陣が展開される。

――が。

「へー、こんなのまで教会に置いてたんだ」

スノーフォールが、砲塔も脚も凍らせる。

氷の魔法で空の方に固定された砲塔から、魔法が放たれる。
斜め上に発射された炎の柱は、屋根を突き抜け、はるか上空で爆発。どこにも命中はしなかった。

「何っ!?」

東の神父の表情が凍りついた。

神父がこんなものを持っているとは――大方、住民たちに悪事がバレた時の口封じ用だったのだろう。粛清して文句を言うものを皆殺しにすれば、皆黙る。
だがあいにく、暴力というものはさらなる暴力によって滅びるものだ。今が、滅びるにはいい時だろう。

「《ブーステッド》!」

俺は精霊剣を召喚し、

「貫けい!」

ボルケーノ・バーストに向けて投擲する。

精霊剣はボルケーノ・バーストに深々と突き刺さり、そこにあった巨大なマナ・クォーツが砕けて破壊される。

「あー、作ったなあ、そういえば、こんな感じの兵器」

魔王が懐かしげに言って《魔弾》を複数発射。
凍っていた砲塔と脚を完膚なきまでに破壊した。

「導入してた兵器の中じゃあヤワな方だぞ。目の前のこれは、もっとヤワのようだがな」

これにより、ボルケーノ・バーストは完全に沈黙。

「どんな兵器も結局切り捨てればガラクタだな」

「五百年前もそうやって我が兵器を葬って来たのか」

「そうだが? もう兵器と言えんほどに楽勝すぎた。実質、資源の無駄だったな」

「あ?」

「あ?」

また睨み合いをしそうになるが、スノーフォールに睨まれたのでやめた。

「く、くそがよおおおっ」

逃げようとする神父。

「待て!」

俺は追おうとするも、神父は突然振り返った。

「なんてな!」

その手には、まだマナ・クォーツが握られていた。

そして、倒されたボルケーノ・バーストの後ろから、また新たにボルケーノ・バーストが現れる。

「もう一個あるよおおおおお!」

「なんだと!?」

しかも、すでに魔法陣の展開は済んでいるようだ。
それに砲塔がもう、俺たちに向けて固定されていた。すぐにでも魔法が放てる状態だ。

「魔法発射! この者どもを焼き払えええええ!」

魔法陣が輝く瞬間、

「――――!」

俺は霊域グラシアルに立っていた。

また、霊域に精神だけ招待されたようだ。
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