封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう

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71 頂の炎と黒い大剣

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「ゼビカの圧勝だったか」

フューエルが拍子抜けというように言った。

「……ああ、まあ、仕方がなかろうよ。魔剣が相手ではな」

しかしライジングの真意は聞けぬまま、エアリアルを手に入れようとする彼の目論見はついえてしまった。

「あの《フィクシングアンカー》って魔法はすごかったけどなあ、さすがに魔剣には及ばなかったらしい」

「異形の腕の召喚――一人で複数人を相手しているようなものだったからな」

「あんたの準決勝の相手だぜ? 勝てんのか?」

「問題ない」

観客の興奮冷めやらぬままに、次の試合が始まろうとしている。

観客はさらに盛り上がっていく。
おそらく今までの試合で最高の掛け金が積み上がっているであろう、次の試合。

《剣帝》ガゼット・ディスオーバー対《大魔法使い》《峯炎》のグレン。

両者ともに前回大会で決勝へ進んでいる。人気も実力もお墨付きである。

ガゼットは王者の貫禄を見せつけられるか、それともグレンの炎が帝王の剣を焼くか。観客にとっては注目の一戦といったところだろう。

「あんたはどっちが勝つと思う?」

フューエルが訊いてくる。

「わからん。フューエルはどう思う?」

「俺様もなんとも言えねえ。殺し合いっつうのはイレギュラーがつきもんだ。素人の振り回すがむしゃらな拳が、勝ち誇る名将の膝を折らせることもあらあ」

「なるほど」

俺は売り子から唐揚げ串を二本買い、カレー粉をふんだんに振りかけていただく。

「食うか?」

「俺に一本くれるつもりならなぜ二本ともカレー粉かけたよ? もらうけどよ」

両者、定刻通りに入場し、対峙する。

「…………」

「…………」

お互い無言のままに、立会人が、

「では、始めいッッ!」

号令をかける。

「ここで我が雪辱、晴らさせてもらう」

前回の大会で決勝トーナメントを敗退したグレンは、一言告げて魔法陣を展開する。

「前回は俺と戦えずじまいだったが、今回は運がないな。決勝進出という名誉を抱えて、死ね」

ガゼットは、背中の黒い大剣を抜いた。

「あれは――!?」

黒い大剣から放たれる異様な魔力。それを感じ取ったとき、俺の二つ目の紋章が光った。



「!」

気が付けば、霊域グラシアルの雪山に立っていた。

精霊スノーフォールに召喚されたのだ。

「トントン!」

精霊スノーフォールは、横たわる雪だるまの上から俺に話しかける。

「スノーフォールか。精霊剣の紋章を通じて、トーナメントを見たか?」

「見たよ。トントンさ、あれはやばいねー」

「やはりそう思うか」

スノーフォールは俺に忠告してくれるらしい。ガゼットの持つ黒い大剣の魔力に関してである。

「あの剣、どんな構造か知らないけど、精霊がそのまま閉じ込められてる」

「精霊が? 契約をしているわけではなくてか」

「そうそう。精霊が自分の意志に反して閉じ込められてて、無理やり魔力を剣に与えられてる」

「ほう?」

精霊を直接利用した剣ということか。

スノーフォールがやばいと忠告するくらいである。かなり危険な代物らしい。

「基本的に精霊同士は不干渉。捕まっちゃったほうが悪いし同情はしないけどさ」

「その言い方はやめてやれ。エアリアルに効く」

「でも、トントンは注意した方がいいかもね。順調にいけば決勝であれとあたるわけでしょ?」

「まあ、そうだな」

「気を付けてね! まあ死んだらそこまでだけど!」

その時、吹雪の勢いが増して視界を遮ったと思ったら――

「…………!」

俺はトーナメント会場に戻っていた。




「《デクレッシェンド》」

隣にいたフューエルがつぶやいた。

「あの大剣の名前か」

「ああ、そうだ。《デクレッシェンド》っつうらしいぜ」

豪炎がすさまじい速さで奔る。グレンの魔法である。

炎の魔法を極めたグレンは、自らの魔法を《峯炎ほうえん》と名付けた。その魔法だけで彼を《大魔法使い》たらしめた究極の炎。
その炎は予測できない不規則な軌道を描きながらガゼットに迫る。

ガゼットは紙一重で炎を回避。そして――

「!!」

黒い大剣をまっすぐ下に、会場に突き刺した。
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