封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう

文字の大きさ
71 / 106

71 頂の炎と黒い大剣

「ゼビカの圧勝だったか」

フューエルが拍子抜けというように言った。

「……ああ、まあ、仕方がなかろうよ。魔剣が相手ではな」

しかしライジングの真意は聞けぬまま、エアリアルを手に入れようとする彼の目論見はついえてしまった。

「あの《フィクシングアンカー》って魔法はすごかったけどなあ、さすがに魔剣には及ばなかったらしい」

「異形の腕の召喚――一人で複数人を相手しているようなものだったからな」

「あんたの準決勝の相手だぜ? 勝てんのか?」

「問題ない」

観客の興奮冷めやらぬままに、次の試合が始まろうとしている。

観客はさらに盛り上がっていく。
おそらく今までの試合で最高の掛け金が積み上がっているであろう、次の試合。

《剣帝》ガゼット・ディスオーバー対《大魔法使い》《峯炎》のグレン。

両者ともに前回大会で決勝へ進んでいる。人気も実力もお墨付きである。

ガゼットは王者の貫禄を見せつけられるか、それともグレンの炎が帝王の剣を焼くか。観客にとっては注目の一戦といったところだろう。

「あんたはどっちが勝つと思う?」

フューエルが訊いてくる。

「わからん。フューエルはどう思う?」

「俺様もなんとも言えねえ。殺し合いっつうのはイレギュラーがつきもんだ。素人の振り回すがむしゃらな拳が、勝ち誇る名将の膝を折らせることもあらあ」

「なるほど」

俺は売り子から唐揚げ串を二本買い、カレー粉をふんだんに振りかけていただく。

「食うか?」

「俺に一本くれるつもりならなぜ二本ともカレー粉かけたよ? もらうけどよ」

両者、定刻通りに入場し、対峙する。

「…………」

「…………」

お互い無言のままに、立会人が、

「では、始めいッッ!」

号令をかける。

「ここで我が雪辱、晴らさせてもらう」

前回の大会で決勝トーナメントを敗退したグレンは、一言告げて魔法陣を展開する。

「前回は俺と戦えずじまいだったが、今回は運がないな。決勝進出という名誉を抱えて、死ね」

ガゼットは、背中の黒い大剣を抜いた。

「あれは――!?」

黒い大剣から放たれる異様な魔力。それを感じ取ったとき、俺の二つ目の紋章が光った。



「!」

気が付けば、霊域グラシアルの雪山に立っていた。

精霊スノーフォールに召喚されたのだ。

「トントン!」

精霊スノーフォールは、横たわる雪だるまの上から俺に話しかける。

「スノーフォールか。精霊剣の紋章を通じて、トーナメントを見たか?」

「見たよ。トントンさ、あれはやばいねー」

「やはりそう思うか」

スノーフォールは俺に忠告してくれるらしい。ガゼットの持つ黒い大剣の魔力に関してである。

「あの剣、どんな構造か知らないけど、精霊がそのまま閉じ込められてる」

「精霊が? 契約をしているわけではなくてか」

「そうそう。精霊が自分の意志に反して閉じ込められてて、無理やり魔力を剣に与えられてる」

「ほう?」

精霊を直接利用した剣ということか。

スノーフォールがやばいと忠告するくらいである。かなり危険な代物らしい。

「基本的に精霊同士は不干渉。捕まっちゃったほうが悪いし同情はしないけどさ」

「その言い方はやめてやれ。エアリアルに効く」

「でも、トントンは注意した方がいいかもね。順調にいけば決勝であれとあたるわけでしょ?」

「まあ、そうだな」

「気を付けてね! まあ死んだらそこまでだけど!」

その時、吹雪の勢いが増して視界を遮ったと思ったら――

「…………!」

俺はトーナメント会場に戻っていた。




「《デクレッシェンド》」

隣にいたフューエルがつぶやいた。

「あの大剣の名前か」

「ああ、そうだ。《デクレッシェンド》っつうらしいぜ」

豪炎がすさまじい速さで奔る。グレンの魔法である。

炎の魔法を極めたグレンは、自らの魔法を《峯炎ほうえん》と名付けた。その魔法だけで彼を《大魔法使い》たらしめた究極の炎。
その炎は予測できない不規則な軌道を描きながらガゼットに迫る。

ガゼットは紙一重で炎を回避。そして――

「!!」

黒い大剣をまっすぐ下に、会場に突き刺した。
感想 1

あなたにおすすめの小説

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます! ※AI学習禁止・無断転載禁止・無断翻訳禁止・無断朗読禁止

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

幼子家精霊ノアの献身〜転生者と過ごした記憶を頼りに、家スキルで快適生活を送りたい〜

犬社護
ファンタジー
むか〜しむかし、とある山頂付近に、冤罪により断罪で断種された元王子様と、同じく断罪で国外追放された元公爵令嬢が住んでいました。2人は異世界[日本]の記憶を持っていながらも、味方からの裏切りに遭ったことで人間不信となってしまい、およそ50年間自給自足生活を続けてきましたが、ある日元王子様は寿命を迎えることとなりました。彼を深く愛していた元公爵令嬢は《自分も彼と共に天へ》と真摯に祈ったことで、神様はその願いを叶えるため、2人の住んでいた家に命を吹き込み、家精霊ノアとして誕生させました。ノアは、2人の願いを叶え丁重に葬りましたが、同時に孤独となってしまいます。家精霊の性質上、1人で生き抜くことは厳しい。そこで、ノアは下山することを決意します。 これは転生者たちと過ごした記憶と知識を糧に、家スキルを巧みに操りながら人々に善行を施し、仲間たちと共に世界に大きな変革をもたす精霊の物語。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~

リーフレット
ファンタジー
​「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」 ​帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。 アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。 ​帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。 死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。 ​「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」