封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう

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76 エアリアルのもとへ急ぐ

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フューエルは苦戦していた。レインシードの長剣は細く、しなやかに曲がる。
彼はその剣のしなりさえ利用して、斬撃を繰り出している。

「やはり黒くなってねえところは精霊剣の能力が発動しねえみたいだな」

レインシードは我流であり、魔法なども一切使用していない。純粋な剣技だけで精霊剣使いのフューエルと渡り合っている。

フューエルの精霊剣は、黒色化した部分の攻撃を相手にそのまま返すというものだった。自分へ放った攻撃は、そのまま相手へ見えない攻撃として返っていく。

精霊剣本体で受けた攻撃さえ瞬時に反撃として返るが、レインシードはそれさえも見切ってかわしている。

おまけにレインシードの剣筋はしなやかな剣のおかげで読むのが難儀で、ときおり自分の剣をすり抜けて攻撃してくるようにも見える。それほど鮮やかで無駄のない剣だった。

「これが達人ってやつかよ……!」

精霊剣を持っている自分がまるで子ども扱い。

「ならば!」

フューエルは懐に忍ばせていたナイフを抜き、それを自分の黒色化した箇所へと刺した。

「ぬおっ!?」

自分のナイフの傷が相手に返り、レインシードの左肩を切りつける。

「……自分で自分を刺し、反撃を俺へ向けたか」

レインシードは膝をついた。

「この精霊剣の弱点は、自分の剣筋を把握している達人であれば、反撃を見切れるところにある。であれば――」

「てめえ以外の剣筋であれば不意を衝けるか」

レインシードは立ち上がった。傷は浅かったようだ。

「ま、それはそれで見切るしかねえわな」

レインシードは再びフューエルとの距離を詰める。むき出しになっている肌へ、剣を滑らせる。フューエルは自分で自分を傷つけ、反撃をレインシードへ。

お互いの体に、斬撃がかすめる。

二人とも細かい傷は気にしていない。致命傷にさえならなければよく、その間に相手に致命傷を見舞えればいいという具合。さらに攻撃。またお互いの斬撃が体へと刻み込まれる。さらに攻撃。

「オオオオオッ!」

鬼神のごとき気迫とともにおびただしい斬撃が舞い、床に落ちた二人の血しぶきが花のように広がっていく。





盗賊を切り払い観客を助けながら主催者席に向かった俺は、途中で《竜殺し》ゼビカに出くわす。

「トントンか。無事か?」

「うむ。ゼビカも平気そうだな」

ゼビカは、魔剣を手に盗賊たちと応戦していた。手の傷は、自分でつけたものだろう。余裕そうだった。

「主催者は?」

「お前が来る前に《剣帝》が向かった。俺はここで観客の避難誘導と盗賊どもの排除を続ける。トントンはエアリアルの確保を頼めるか?」

「もとよりそのつもりだ」

エアリアルは主催者とともにいる。《剣帝》ガゼットが向かっているのなら安心だとは思うが、念のためだ。俺も向かうとしよう――

「……少々計画とは違うが、まあよしとするか」

考えていると、ゼビカがつぶやいたのが聞こえる。

「計画?」

「いや、まあ、こちらのことだ。あとで話す。行ってくれ」

何かこいつも腹に一物があって参加していたらしい。魔剣のことも含めて、あとで聞いてみるとするか。


まっすぐ主催者席へと赴くと、いた。

ライジングとその仲間たちが、大剣を構えるガゼットと対峙していた。ガゼットの後ろには、檻に入れられたエアリアルがいる。

しかもライジングたちは、主催者を人質に取っている。ガゼットはどうにも動きにくそうにしていた。

「それがお前の大会に参加した理由か? ライジングよ」

俺が後ろから言うと、ライジングたちは振り向いた。
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