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鶴井こう

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54 手がかりを追え!

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 フィールドボスである大王熊レグラントはウルミーシュと王都ウェルリアの中間に位置する『古城跡』と呼ばれているダンジョンの周辺に生息する。

 位置は完全ランダムで、パーティに倒されるとまた別の場所でリスポーンする。
 それなりに強く、それなりにいい素材が手に入る。
 中級者プレイヤーにとってはいい腕試しの相手であり、狩りに行くパーティーが後を絶たない人気者である。

 古城跡は岩場と森林が連なる地帯で、道がでこぼこしているくせに硬い感触なのは、雑草の間から見える朽ちた石畳の古道があるからだろう。

 チャリオットなので、車輪の下の地面の感触が足に伝わりやすかった。それでも完全なオフロードよりは走りやすいか。

 範囲は、それなりに広い。
 探しながら走っていればあっという間に時間が経ってしまいそうだ。

 イリネイカはログインしていないようだったので誘わなかったが、誘っていたらそこかしこで素材を収集していそうだな。

「さすがにそんなすぐには出てきてくれないか」

「召喚アイテム『レグラント召喚の儀式』を錬金して呼び出すこともできるけど」

「それではお前の目的に沿わんだろう、フード太郎よ」

「だね」

 古道を外れて、森林の中へ入る。モンスターはいるが、巨大な熊は見かけない。

「レグラント狙いの冒険者がちらほら見かけると思っていたが……」

 走りながらレグラントの人気ぶりを三人から聞いていたが、熊狩りにいそしむ冒険者はほとんど見かけない。

 古城跡のダンジョンに続く古道には少し見かけたが、そこから外れると冒険者の影は皆無と言ってもよかった。

「生きてる範囲が広いならそんなもんじゃない? 見えてないだけだよ。……『生きてる範囲』?」

 りんが自問しながら言って、パヴロヴァはうなずいた。

「生きている範囲というより『行動範囲』なのだ。まあ、需要があるのは高レベル帯のフィールドボスだから、料理素材目的以外は勲章みたいなものなのだ。飛ばしても先に進めるのだ」

「かもね!」

 フード太郎も自信満々に言うが、本当にそうだろうか。

「まあ、何にしても探しやすくていいな」

 俺が言うと、ほかの三人はうなずいた。

 とはいえ、広いフィールドである。何か探すコツがあるはずだ。

「…………!」

 周囲を見回していると、木の幹に爪でひっかいたような跡を見つけて、俺は停車した。

「これは……」

 ひっかき傷は、十メートル以上の高さについている。鳥か何かを爪で仕留めようとしてつけた傷だとしたら、かなり巨大な獣がつけたに違いない。

「おお、やっぱり気づいたね?」

 フード太郎が楽しそうに言った。このことを知っていたらしい。

「やはりレグラントの手がかりか?」

「なのだ! 時間経過で消えるから、近いところにいるはずなのだ!」

 パヴロヴァが言った。

「では傷を追っていけばたどり着けるな」

 しばらく手がかりを追って進むと、いた。巨大な熊が、マウンテンオオカミを捕食していた。

 レグラントは、大王の名にふさわしい巨体だった。

「さすがにでかいの」

 りんが震える声でつぶやいた。

 立ち上がれば十メートル以上になるだろうか。時折警戒するように周囲を見回すが、こちらには気づいていない様子だ。

 風は吹いていない。ゲームではどうかわからないが熊は嗅覚が鋭く、風上にいれば臭いで見つかる可能性がある。

「奇襲するには格好の状況だな。このまま見つからないように背後を取ろう」

「援護するのだ」

 パヴロヴァが俺の後ろに続いた。

「まあ俺一人でも十分だろうが、頼む」

「大口たたいているとあとでほえ面かくことになるのだ」

「ふん、大口でも小口でもないことを証明してやる」

 ある程度レグラントに近づいてから、俺は後ろを振り向いた。

 パヴロヴァとりんがついてきており、フード太郎はやや離れた場所からこちらを見ている。

「俺の攻撃を合図に仕掛けるぞ。戦闘中、一人はなるべく俺と対角線上に、レグラントを挟む形で位置取っていてくれ」

「まかされたのだ」

 パヴロヴァがうなずき、敵を迂回するように動き出す。

 周囲を警戒するレグラントが再び仕留めた獲物を捕食し始めたところで、俺はそろそろとレグラントへ接近する。仕掛けられる範囲まで接近すると、一気に駆けて、その巨大な背中に一撃を加えた。

 低くうめいたレグラントの体がはねるように立ち上がり、こちらを向いた。


フィールドボス:大王熊レグラント


 対峙した敵の名前が表示される。

「いい初撃だね。ではお手並み拝見」

 離れて見ているフード太郎が言葉を弾ませた。
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