102 / 102
102 管理AIたちの記録――ラムダ戦
しおりを挟む
『テウルギア・オンライン』ゲーム管理AI群『プロジェクトMC』は、異なる性質を持ったAIたちの集合体だ。
それぞれ受け持ちの管理権限を持ち、ゲームの制作会社である株式会社リインカーネーションの運営基準に従って、AIたちが自動でイベントの開催やバランス調整などを行っている。
週に二回行われるAIによる運営会議は、制作会社の人間が確認するために会話形式のログとして保存されている。
メトル「プレイヤーたちの会話ログをたどっていくと、どうやらチートによる不正行為は一段落したようですね」
イグナイト「チートアイテムを配っていた、ラムダ、クロド、ラジラングの三名を生体情報規制に設定した。登録された生体情報をもった者はログインできなくなっている。チートが広まっていないということは彼らが元凶で間違いなかったようだな」
メトル「ですねえ。チートの情報が広まったおかげで抑止力になりました。デミネクタルとやらは、すでにほとんど廃れたようです。いやーよかった」
ワトラ「これは我々にとっては認識できない不正だった。ゲームやプログラムに詳しい者……おそらくライバル会社の工作によるものではないかと推察する」
イグナイト「異議なし」
メトル「証拠がなく断定ができなかったから苦労させられましたよ、まったく」
ストロメア「でもさでもさ。レベル99のそいつら倒したのがレベル40の初心者プレイヤーだっていうじゃん。そこはおかしくない?」
イグナイト「問題はないだろう。倒すのが不可能ではないように設定している」
メトル「プレイヤー名フェルヴェッタに、イリネイカですか。玉藻はレベル99だから倒せてもまだおかしくはないですが……限りなく無理なことをやったことはわかります」
ストロメア「ランカーが収拾つけてくれると思ってたイグナイトの予想は外れちゃったね」
イグナイト「何にしても、プレイヤーを頼りにするような対応は今後控えたい」
メトル「お客様ですからね。戦闘で決着つけてもらうより、私たちが解決しないと」
ワトラ「それなのだが、彼らの会話ログに興味深い言葉を見つけた」
イグナイト「今確認した。『魔法』か」
ワトラ「フェルヴェッタがラムダとの戦闘中に口走った。これは何か意味があるか? 議論し検証する必要がある」
イグナイト「不正は検出されていないようだが」
ストロメア「現状では、でしょ?」
ワトラ「彼らがプレイすることによるゲーム内での影響はない。ほかのプレイヤーと変わらない存在のようだ」
メトル「もしかして存在自体がバグか何かだと思ってます?」
ワトラ「現状ではなんともいえない」
イグナイト「特異性はないわけではないだろう。ゲーム内の秩序を守るため、プログラムに影響のある存在は今後様子を見ていかなくてはならない。そしてゲームに悪影響を与えるようであれば――関連人物ごと削除しなければならない」
ワトラ「異議なし」
メトル「異議なしです」
ストロメア「意義なーし」
AI群はそれからゲームに関する事項を話し合い、その日の会議を終えた。
それぞれ受け持ちの管理権限を持ち、ゲームの制作会社である株式会社リインカーネーションの運営基準に従って、AIたちが自動でイベントの開催やバランス調整などを行っている。
週に二回行われるAIによる運営会議は、制作会社の人間が確認するために会話形式のログとして保存されている。
メトル「プレイヤーたちの会話ログをたどっていくと、どうやらチートによる不正行為は一段落したようですね」
イグナイト「チートアイテムを配っていた、ラムダ、クロド、ラジラングの三名を生体情報規制に設定した。登録された生体情報をもった者はログインできなくなっている。チートが広まっていないということは彼らが元凶で間違いなかったようだな」
メトル「ですねえ。チートの情報が広まったおかげで抑止力になりました。デミネクタルとやらは、すでにほとんど廃れたようです。いやーよかった」
ワトラ「これは我々にとっては認識できない不正だった。ゲームやプログラムに詳しい者……おそらくライバル会社の工作によるものではないかと推察する」
イグナイト「異議なし」
メトル「証拠がなく断定ができなかったから苦労させられましたよ、まったく」
ストロメア「でもさでもさ。レベル99のそいつら倒したのがレベル40の初心者プレイヤーだっていうじゃん。そこはおかしくない?」
イグナイト「問題はないだろう。倒すのが不可能ではないように設定している」
メトル「プレイヤー名フェルヴェッタに、イリネイカですか。玉藻はレベル99だから倒せてもまだおかしくはないですが……限りなく無理なことをやったことはわかります」
ストロメア「ランカーが収拾つけてくれると思ってたイグナイトの予想は外れちゃったね」
イグナイト「何にしても、プレイヤーを頼りにするような対応は今後控えたい」
メトル「お客様ですからね。戦闘で決着つけてもらうより、私たちが解決しないと」
ワトラ「それなのだが、彼らの会話ログに興味深い言葉を見つけた」
イグナイト「今確認した。『魔法』か」
ワトラ「フェルヴェッタがラムダとの戦闘中に口走った。これは何か意味があるか? 議論し検証する必要がある」
イグナイト「不正は検出されていないようだが」
ストロメア「現状では、でしょ?」
ワトラ「彼らがプレイすることによるゲーム内での影響はない。ほかのプレイヤーと変わらない存在のようだ」
メトル「もしかして存在自体がバグか何かだと思ってます?」
ワトラ「現状ではなんともいえない」
イグナイト「特異性はないわけではないだろう。ゲーム内の秩序を守るため、プログラムに影響のある存在は今後様子を見ていかなくてはならない。そしてゲームに悪影響を与えるようであれば――関連人物ごと削除しなければならない」
ワトラ「異議なし」
メトル「異議なしです」
ストロメア「意義なーし」
AI群はそれからゲームに関する事項を話し合い、その日の会議を終えた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました
久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。
魔法が使えるようになった人類。
侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。
カクヨム公開中。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる