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別れても好きな彼2 〜え? 別れてなかった?〜

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「ねえ、あっつん」

「……あ?」

「ゲームばっかりしてないでどっかいこーよ?朝早く起きて二時間もかけて来てんだぞ?」

「いつもの事だろ」


 高校から一人暮らしのワンルームで、俺はゲームに没頭している。話し掛けてきたのは町田由那まちだゆな、俺の彼女だ。

 由那とは中学の頃に付き合って、卒業で別れた。それから高校生になって俺は彼女が出来たが別れて、夏休みにダラダラと家で過ごしていた時、突然由那が家までやって来て、色々あってまた付き合う事になった。

 もう夏休みは終わり、今は高一の二学期だが、週末になると由那はこっちまでわざわざ二時間もかけて会いに来ている。

 そもそも中学卒業で別れたのも、俺が高校から一人暮らしで遠くなるのが大きな理由だった。
 俺は面倒臭がりだからな、当時はこのまま付き合っても由那を悲しませるだけだと思ったからだ。


「あっつん携帯鳴ってるけど」

「ほっとけ」

倉西明日香くらにしあすかさんからメッセージが来ています。……ダレ?何してる?って聞かれてますけど」

「ああ、前の彼女だ。ほっとけ」

「……ほう」


 隣の由那から小宇宙コスモが高まるのを感じるが、俺は気にせずベッドに腰掛けたままゲームを続けた。その時、


「――ブッ!?」


 強烈なリバーブローが打ち込まれ、俺はコントローラーを落とした。


「な、なにしやがる……!」

藤井篤人ふじいあつと、またメッセージが届きました」

「だ、だからほっとけって……」

 まだダメージから回復しないまま由那の方を見ると、シルバー、いやゴールド聖◯士クラスの小宇宙コスモを纏った由那が俺を見下ろしていた。
 由那コイツ何座だったっけ……。


「ほっとけない内容だったの、聞きたい?」

 それはノーと言える雰囲気ではなく、俺はただその迫力に恐怖し、黙るのみの選択肢しか無かった。


「『合鍵あるから開けちゃうよ?』だって。……ねぇあっつん?彼女の私も持ってない合鍵をなんで元カノが持ってるわけ?」

「ま、待て。話を聞いてくれ」


 これ以上の追撃は致命傷だ。俺は縋るように救いを求めた。すると、


「現状の判決は『死刑』。でも、大好きなあっつんだから聞いてあげる、どうぞ?」


 ダメだ、俺の言い訳引き出しの中にはいつものヤツしか入ってない。それで納得するレベルに由那はいない。ここまでか……。ええい、ままよ!


「めんどくさくて、忘れてました!」


 最早潔く、いつもの言い訳を元気一番繰り出した俺。由那の力は更に高まり、それは宇宙の始まりビッグバンを引き起こすのではないかと思う程に膨れ上がっている。


「……あっつん。言葉を残すか、形ある物を残すか……?」

「ま、待ってくれ!その答えの先はどちらも『死』!どうか我に希望ホープを!」

「だったらとっとと呼び出して合鍵回収せんかい!!」

「御意!」


 俺は辛うじて生を拾い、元カノの明日香を喫茶店に呼び出す事となった。







 由那を連れて喫茶店に向かう途中、由那が俺の袖を掴んできたので立ち止まると、


「……あっつん、私は普段傍に居られないから、心配なんだよ?」

 俺の袖を掴んだまま、由那は不安そうに俯いている。


「分かってるよ、安心しろ。俺の彼女はお前で、当然好きなのは由那だ」


 そう言って由那の頭を撫でてやると、由那は頬を染めて俺を見上げて、


「さっきはごめんね、お腹平気?」

「ああ、大丈夫だ。朝食を食べてなくて良かったよ」

「ちゃんと手加減したんだよ?」

「……その情報は知りたくなかったな」


 結構効いたけどな……。
 由那の底の知れないポテンシャルに内心震撼していると、目的の喫茶店に着いた。


 中に入って店内を見渡すと、テーブル席に明日香が座っていた。俺が近づいていくと、また由那が俺の袖を引っ張る。


「どうした?」

「え、あのコが元カノ?」

「……そうだが」

「嘘、凄い美人なんだけど……」


 何だか分からんが、由那は明日香を見て怖気付いている様子だ。
 まぁ、由那とは大分タイプが違うとは思うが。
 明日香はロングヘアーの美人系で、由那は昔から俺の好みでセミショートで、どちらかと言うと可愛い系だからな。


「行かないのか?」

「い、行くよ。でも、あっつんコレのどこがいいのよ……」

「俺、お前の彼氏だよな?」


 いいトコ無いのに付き合ってんのか、と由那をジト目で見るが、まぁ俺と明日香が釣り合わないと言ってんだろな。分からなくも無いが……。


「よぉ、久しぶり」

「本当に久しぶりね。……そちらは?」

「ああ、こっちは――」
「あ、あっつんの彼女の町田由那です!」


 俺の紹介を遮り、何だか前のめりに自己紹介をする由那。それから由那と明日香の対面に二人で座った。

 来店に気付いた店員が注文を取りにやって来たので、


「アイスコーヒーで」


 と俺は注文を伝える。すると、


「わ、私も同じで」


 そう由那が店員に言った。


「お前、コーヒーなんて飲まないだろ?」

「同じで!」

「えっと……アイスコーヒー二つ」


 な、なんなの?
 えらい剣幕で俺を睨む由那。よく分からんヤツだが、とにかく俺と同じがいいらしい……。


「ふーん、彼女、ね。それで私が合鍵持ってるのが問題だと」

「まぁそう言う事。このままじゃ俺の判決は有罪、極刑を言い渡される。弁護団は既に白旗をあげてる、助けてもらおうか」

「助けてもらう態度じゃないわね」


 偉そうに助けを乞う俺に呆れ顔の明日香。そう言う事だから、お願いします!


「…………」


 由那は少し俯き気味に、明日香を上目遣いで見て黙っている。
 アイスコーヒーが運ばれて来て、俺はそのままブラックで飲むが、由那はガムシロとミルクを入れている。飲めないのに何を無理してんだろなコイツは。


「わざわざ休みの日に呼び出して悪かったが――」
「ねえ篤人君」


 俺の言葉を遮り明日香が話し出した。しかし俺はよく途中で言葉を止められるな……。

 最後まで言わせてよね!


「……なんだよ」

「私達、いつ別れたの?」



「「――はぁ!?」」



 思わず俺と由那のハモった声が店内に響き渡る。
 な、なに言ってますのこの子……。
 今回の話の根底を揺るがす明日香の発言に、流石の俺も理解不能だ。


「あっつん!」

 当然怒り心頭の由那は顔を顰め、その瞳には涙まで浮かべている。


「待て待て!由那、一旦落ち着こう。一口飲め」

「う、うん……にがっ!」
「言わんこっちゃない!バカなの?!」
「バカにもなるわ!あっつんのバカ!」
「ですよねっ!!」


 飲めないコーヒーなんか頼むから……。いや、そんな場合じゃねーぞ?


「明日香、冗談はやめてくれ」

「漫才してるのはそっちじゃない?」

 くっ……なんて冷静なツッコミだ。由那を見習らんか!バカなぐらいが可愛い!


「何を考えてるのか知らんが、俺達はとっくに別れてるだろ。何ヶ月も連絡取ってないし、学校でも話さないじゃねーか」

「それで別れたの? 私とちゃんと別れ話した?」

「あっつんちゃんと別れてないの?!」

「違う違う! そうじゃない!」

「鈴木雅之?」
「シブいとこ持ってくるね明日香キミも!」


 何だ、明日香もやれば出来るじゃねーか。……そうじゃないでしょ?ここはちゃんと話しをまとめなくては。このままじゃ辛い。(しつこい?)


「明日香、俺は前に言ったよな」

「なに?」

「俺は今誰かと付き合う気になれない。だからお前も自由にしろって」

「そうね」


 そうだ、俺はちゃんと言ったぞ。それから俺達は連絡を取らなかったし、会うこともなかったんだから。


「だから私は自由にしてる。篤人君がまた付き合う気になるまで、私は言われた通り自由に篤人君の彼女で待ってたの」


「……それ、何語?」

 ねぇ、おかしいって……。今俺、ホントにいつもの世界にいる?アウタ◯ゾーンとかじゃなくて?ミザ◯ィさんとかいない?


「兎に角、別れるなら今度はちゃんと二人きりでお話ししましょう。いつでも連絡して、待ってるから」


 そう言って明日香は席を立ち、帰って行った。
 恐る恐る由那の方を見ると、下を向いて僅かに震えている。


「あの、由那さん?」

「……ブラッディメアリー、飲む?」

「お、お酒はハタチになってからだよ?」

「大丈夫……アルコールなんて入ってないから……原料はあっつんの身体から取るから」

「それは……ブラッド、では?」

 由那、怖いよ……?
 お願い、可愛い由那ちゃんを返して!


「酔ったりしないから平気だよ?……酔うとしたら、あっつんの苦悶の表情を見る私の方だから……」

「由那、現状ここを出よう。色んな意味で!」


 何とか由那を連れて店から出たが、未だに危険ゾーンから由那は出ていない様に見える……。
 こんな時は、言葉よりも身体をほぐすのが一番だ!


「由那、気分転換にお家に帰ってイチャイチャしようか!」

「無機質に、何の声もあげない私を抱いて、自信喪失したいならいいけど……」


 やめましょう!それは怖い!トラウマになっちゃうね!

 ……つまりは、問題の解決が優先される訳、ですな。


「ちゃんと話しして、別れて鍵も返して貰うから。それでいいだろ?」

「ホントにちゃんとしてよね……それまで私はあっつんと会わないから……。私は立ち会えないけど、いつ、どこで話すのか、ちゃんと教えてね」

「わ、わかったよ」

「……今日は、帰る」


 由那は寂しそうな顔して振り返り、そして帰って行った。その時の由那の背中を、俺は引き止められなかった。

 めんどくせーけど、何とかしなくちゃな。
 このままって訳にはいかなくなった。由那の為にも。しかし、明日香はどう言うつもりなんだ?あんな屁理屈みたいな事言う奴じゃなかった筈なんだがな……。


「あー……腹減った」


 ◆


 次の週末までに、俺はまず明日香に会って話す約束をした。そして由那にメッセージを送る。


『次の土曜日に明日香と会う約束したから。十四時に近くの小さな神社があるからそこで会う事になった』

 そう送って暫くすると、

『わかった。今度はちゃんとしてね……。日曜日にはあっつんに会えるって信じてるから。間違ってもなにかあった場合は……ゲームデータ全部消すから。無慈悲に』


 ―――これはしくじれねぇ……。
 俺の育てた可愛いデータ達がかかってるんだ。俺は部屋にあるゲーム機を見つめて誓った。
 データお前たちは、俺が守る!



 そして迎えた決戦の金曜日、いや土曜日。
 俺は珍しく約束の時間より少し早くその神社に着いて明日香を待っていた。そして暫くすると、


「珍しいわね、篤人君が私より先に待ち合わせにいるなんて。そんなに私と早く別れたかったの?」

「……大事な日だからな」


 柄にもなく俺は真剣な顔で現れた明日香に向き直った。


「そう……」


 囁く様に呟いた明日香は、どこか寂し気に見えた。
 九月とは言えまだ少し気温は高いが、風がある日だった。明日香の長い髪がそれに揺られている。


「俺の言い方が悪かったみたいだ、すまん。お前を待たせる形になってしまったみたいで」

「……謝るなんて、また珍しい」

「茶化すなよ」

 表情を余り変えない明日香は、俺の良く知るままだ。
 そして、少し間を置いて明日香は話し出した。


「なんで私が篤人君と付き合ったか分かる?」

「いや、わからんな」

「私は美人で近寄り難いらしいから、余り男子は話し掛けて来なかったのに、篤人君はバカだからずけずけと話してきたよね」

「自分で美人だとか俺をバカだとか、気持ちいい奴だよお前は」


 歯に衣着せない明日香の話し方は、付き合っていた頃と変わらないな。だから話し掛けられない所もあると思うが……。


「それから私は、篤人君を観察してた」

「俺はアサガオか?」

「篤人君は不思議な人だった。面倒臭がりの癖に、結局面倒をみてしまう。そんな篤人君の人柄に惹かれて、私から告白したの」


 信じられないだろうが、俺と明日香が付き合ったのは明日香から付き合ってくれと言ってきたからだ。
 ……ホントだよ?


「この前喫茶店で彼女と会った時、あんなに楽しそうな篤人君を初めて見た」

「そ、そうか?」

「すぐにわかったよ。私と付き合っている時も、偶に凄く楽しそうにしてる日があった。きっと彼女と話した日なんだろうって……」


 高校になって離れてからも、偶に由那とは電話で話してはいたけど、俺自身はそんなにその日の自分には気付かなかった。
 いや、そんな訳ないか。明日香と別れたきっかけだって……。


「それが解って、悔しかったからつい意地悪しちゃった。……それぐらいさせてよね。はい、これ」


 そう言って明日香は俺に合鍵を渡した。
 そして、


「――!?」


 一瞬だったが明日香の唇が俺の唇を塞ぎ、離れる明日香の長い髪の匂いに包まれた。


「別れてあげる。……ちゃんと後悔してね、もうこんな美人と付き合えないから」



 ―――明日香が神社の階段を降りていく姿を見送り、その姿が見えなくなってからも、暫く俺はその場に立ち尽くしていた。


 気持ちを落ち着かせて、ゆっくりと階段を降りている途中、見慣れた女の子が俯いて立っていた。


「心配で、来ちゃった」

「………由那」

「ちゃんと別れたみたいだね……それはわかった」

「ああ」

「でも、来なきゃよかったかな。……あっつんに前にフラれたのを思い出したよ」

「……そうか」


 階段の上から、俯き話し続ける由那を俺は見つめていた。その表情はここからはよく見えなかったが、その声色が由那の気持ちを伝えていた。



「見たく……なかった。 あっつんが他の女の子とキスするとこなんて……」



 由那は振り返り、階段を降りていった。
 ……こんな短時間に、二人の悲しむ女の子を見送る事になるとは……。


 夕方に差し掛かる寺には涼しい風が俺の頬を撫でる。
 一人佇む俺は、また暫く頭が空っぽだった……。



 ◆


 次の日の日曜日。
 俺は久し振りに見る街並みを眺めている。長く暮らした地元だ。
 早起きは苦手なもんで、時間は既に十五時過ぎ。由那と通った中学校の校門前に俺は立っていた。


「こねー、かなぁ」

 由那は電話に出ないし、ここに居るのはメッセージで送ったものの、昨日の今日だからな。
 来なくても、仕方ないか……。

 懐かしの学び舎を眺めていると、後ろから聞き慣れた声がした。


「こんなトコ呼び出して……またフるつもり?」


 不貞腐れた様な顔で由那は立っていた。少し目が腫れてる様にも見えるが、触れないでおこう。


「付き合って、別れた場所だからな……。」

「めんどくさがりのあっつんがわざわざここまで来たから、特別に来てあげたんだから……」

「恐縮です」


 相変わらず不機嫌そうな由那。そらそーだわな。
 さて、


「昨日、明日香に言われて気付いたよ。いや、きっと俺は分かってた事なんだろな」

「よく、わかんないけど……」


「当時の俺は由那を引きずったまま、明日香と付き合ってた。あいつは頭がいいから、由那と会ってすぐ気付いたみたいだけどな」

「どーせ私はバカですよ。あっつんのバカ」

 ……そういう事じゃないんですけど。
 今の由那には上手く伝わらないみたいだな、とは言え、解ってもらうしかない。


「こんな事は一生言わねーつもりだったけど、別れてから由那に電話で彼氏が出来たって言われた時は、すげー嫌だったよ。まぁ、それもお前の嘘だったけどな」

「だって、しょうがないじゃん……。あっつんを取り戻す作戦だったんだもん」


 架空の彼氏の浮気の仕返しに付き合わされて、まんまと由那に騙されたっけな。由那のシナリオでデートをして、結ばれるまでのミッションだった。それからまた俺達は付き合い出した訳だが。


「俺は明日香と付き合ってる癖に、由那に彼氏が出来たと聞いてやられちまって、明日香に別れ話をした。思えば明日香には悪い事したよ、俺がしっかりしてれば、あいつもこんなに辛い思いしなくて済んだかも知れない」


「……そうだよ、全部あっつんが悪い」

「そうだな」

「そうだよ!」

「………言い過ぎじゃね?」

「開き直った! バカ!」


 …………容赦ねーなしかし。

「じゃあ、どうすりゃいーんだよ?」

「……教えて欲しい?」

「ああ、教えてく――ッ!?」



 ……なんだよ、どういう事だ?



「わかった?」

「……いや」

「ディフェンスがザルなの!だから簡単にちゅーなんかされるんだよ。今だって、簡単だったもん……バカタレ」


 ……そう言う事か、また見事にやられたな。


「今度私以外に不意打ちでもキスされたら、ホントに他の男の子と前のミッションしちゃうから……」

「無理だな」

「お、脅しじゃないからね!」

「あのミッションは、俺じゃなきゃクリアできねーんだよ」



「わッ!?……ん……ぅ……」



 懐かしの学び舎の前で、由那を抱きしめた。由那からはいつものいい匂いがして、温もりが伝わってくる。


「私の方が、明日香あのコよりいいトコ言え」

「ちょっとバカな方が可愛い」

「……離せ」

「言ったろ。俺の彼女はお前で、好きなのは、由那だけだ」

「……うん」


 由那は抱きしめられながら、下ろしていた両手で俺の背中を抱きしめる。

 今回も色々あったが、由那にはこれからもいい相方でいて欲しいからな。



 …………あーあ、帰るの、めんどくせー。




 ◆


 次の週末、俺はベッドの上で正座をして裁きが下るのを待っていた。


「それでは!判決を言い渡す!」

「どうか、ご慈悲を……」


 今この部屋で、由那裁判官による判決が言い渡される。


「被告人、藤井篤人は私と言う可愛い彼女がいながら、他の女の子に唇を奪われた罪により……ゲームデータの全消去を命じる!」

「異議あり!被告人は反省し、めんどくせーのに二時間かけて謝罪に行きました!」

「あ?……めんどくさいと思って来てた?」
「言葉のあやでございます!」

「異議は却下!神妙にしろい!」
「お願い!データこの子にはなんの罪もないの!」


 その時、救いの?インターホンが鳴った。

「由那!誰か来た、裁きは後ほど!」

「むぅ、往生際の悪い」


 誰だか知らねーけど助かったぜ……。
 ありがとう救世主様!

 俺は救いのインターホンの主に感謝をしながら玄関のドアを開けた。そこに居たのは、


「おはよう篤人君。ゲームばっかりしてないで外に出ない?」


「明日香……おま、なんで?」

「なっ!? 何しにきたの危険人物!」

 俺の様子がおかしいのを不審に思った由那がやって来て、明日香を見て警戒を強めている。


「あら、町田さんいたの?」
「いたら悪いか倉西さん!」


 ……ナニコレ?


「な、何しに来たのよ!?」

「篤人君に会いに来たのだけど?」

「おいおい明日香。話はついた筈だろ?」


 頼むよ。これ以上由那を怒らせたらゲームデータどころか本体ごと破壊されかねん!


「そうね。 別れてあげるとは言ったけど、諦めてあげるとは言ってないわよ?」



「「はぁ!?」」



 またハモったね、由那さん。


「こ、この屁理屈女!諦めて成仏しなさい!」

「幽霊じゃないけど?」

「あ、合鍵だってもう私が持ってるもん!」

「あんな鍵、いくらでも複製出来るわ」

「な、なんですって……!」


 お願い、二人共帰って……。


「身体検査を行う!脱げ!」

「……いいけど、篤人君、見たい?」

「え……うん、ちょっと――ガハッ……!!」


 な、何だこのリバーブローは……。前回とは段違いだ……幕内クラスじゃねーか、ヤバイ……意識が飛びそうだ……。


「こ、これがホントの由那お前の力か……」

「言ったでしょ、ディフェンスがザルだって」


 ……頼もしい彼女で、嬉しいよ。

 めんどくせー奴だけど。でもまぁ、由那コイツといると退屈しねーからな。

 う……意識が――――


 え……終わり?


 今回、エッチなしですか……。

 俺が不甲斐ないばっかりに、申し訳ない!


 きっと意識が戻った時には、由那の機嫌が良くなってます様に……データ、消さないでね……。

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