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25, 出発
しおりを挟む夏休みイベント第一弾。
『みんなで海に行こう』その当日。 天気は快晴、太陽はこの後更に強く照りつけるだろう。
今回は海という事で集合時間も早い。 俺と櫻は俺達が通う高校の前で待ち合わせになっていて、雄也と南々子さんはりんを連れて俺達を拾うという段取りになっている。
休みに入ってから朝はゆっくりだったからか起きるのが少し辛かったが、何とか約束の時間には間に合いそうだ。
校門が見えてくると、先に来ていた櫻の姿が遠目に見える。 その姿に近付いていく途中、部活の為学校に来たと思われる一人の生徒が櫻の前で立ち止まり、何か話をしているのが見えた。 かなりの高長身だな。
「まさか休み中に会えると思わなかった、私服も……可愛いね」
「あ、ありがとう」
「どうして学校に? ま、まさか今日の練習試合観に来てくれたのかな!?」
「え? う、ううん、えっと……あ、孝輝」
「ーーーッ!? と、徳永?」
……バスケ部の田嶋か。 俺に向きを変えた田嶋は、まるで仇を見る様に俺を睨んでくる。
「よう田嶋、部活か?」
「徳永、こんな所に何しに来た!」
俺、一応この学校通っているんだが……。 完全に戦闘態勢の田嶋、櫻は困った顔をしているし、参ったな。
その時、一台のワンボックスが止まり、雄也が降りてきた。
「二人共いるな、さあ行こう。 お、田嶋。 どうしたんだ、怖い顔して。 部活か?」
「……今日は練習試合だ」
「そうか、スポーツに汗を流す、 青春だな。 俺達は海で太陽と汗を流す、お互い青春を謳歌するとしよう」
「う、海!? 」
田嶋は勢い良く櫻に目線を向け、目を見開いている。 お前の気持ちは良く分かる。 が、そんなに見てやるな……。 櫻は少し頬を染めて黙り込む。
「孝輝、喜多川、行くぞ」
「ああ」
「ま、待ってくれ!」
雄也に促されて動き出すと、田嶋が縋るように手を伸ばしてくる。 すると雄也は、
「田嶋、今の気持ちは試合にぶつけてやれ。 諦めたら試合終了だぞ」
雄也、最後のは言いたいだけだろ……。
表情を歪めて伸ばした手が震えている田嶋。 そんな田嶋に、
「た、田嶋君。 試合、頑張ってね」
櫻に声を掛けられて田嶋の表情は徐々に変わり、だらしなく綻んでいく。
「ご褒美は十分だな、行くぞ」
まだ悦に浸っている田嶋を置いて、俺と櫻は車に乗り込んだ。
ドアが閉まると運転席の南々子さんが振り返り、
「おはよう孝輝君、そっちは喜多川さんね、ゆう君から聞いてるわ、ゆう君の母の南々子です。 宜しくね!」
「おはようございます、南々子さん」
「はい、クラスメイトの喜多川櫻です。 今日は宜しくお願いします」
俺に続いて挨拶をする櫻、話は聞いていたとは言え、実際にこの若さと見た目で雄也の母親と言う現実に戸惑っている様だ、無理もない。
「おはよう、こーくん」
南々子さんと挨拶を済ませると、奥に座っていたりんが声を掛けてきた。
「ああ、おはようりん」
因みに席配置は運転席に南々子さん、助手席に雄也、後ろの席の奥にりん、間に俺そして櫻だ。
……予想していた通りの展開だが、目的地まで何事もなく辿り着けるのか。 ふと隣の櫻を見ると、早速のこーくんで既に少し不機嫌な様子……そんな時、
「ゆう君のお友達はみんな可愛くてびっくりしちゃった、流石ね!」
南々子さんが櫻とりんを褒めている。 社交辞令とも取れるが、実際二人共可愛いしな。
「南々子も可愛いぞ」
助手席で雄也がそんな事を言ったのでつい、
「そ、そうですよ! 南々子さんは素敵です、料理も凄く美味しかったし!」
お昼をご馳走になったお礼も言っていなかったし、明るくて綺麗な南々子さんを自然に素敵だと言っていた。
「ふ、二人共何言ってるの……わ、私は人妻なんだからね!」
真っ赤な顔をして動揺する南々子さん。 年上なんだけど、なんか可愛いぃっーー!?
「いっ!? ……たた」
突然左の脇腹に激痛が走る、慌てて左を見ると笑いながら威圧感を出す櫻が、
「孝輝、ちょっと浮かれ過ぎじゃない? 私の作ってたお弁当は美味しくなかったみたいね 」
「そ、そんな事言ってない……です」
……全く櫻は、雄也の母親にまでヤキモチ妬くなよな。 やはりこういう所はりんの方が大人だな。 そう思って今度は右のりんを見ると、
「…………」
「え……?」
りんは俺をひと睨みしてから窓の外に視線を逸らした。
あれ? 何だこの展開は……。
想像していた展開と違うぞ? 櫻は兎も角、りんまで不貞腐れてしまった。
道中櫻とりんの小競り合いを懸念していた俺は、まさかの両方から攻撃対象とされたのか?
夏のイベント第一弾。 海への出発は、左右に不機嫌な女の子に挟まれた俺を乗せて、車は目的地へと発進した……。
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