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青春って、無茶と、脱走と、なりふり構わずと、トラックとかかと。

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 その日の深夜、俺は病院を抜け出した。

 一時間ほどで看護師には脱走がばれるだろうが、それまでには目的の場所にはたどり着けるはずだ。


 目指す場所は俺とレンコがトラックに轢かれた横断歩道。

 着替えも特になかったので俺は病院着のまま目的地を目指しゆっくりと歩く。


 俺はレンコが好きだ。


 今更になって気が付いた。

 それは今まで近すぎて理解しなかった気持ち。

 彼女に突き放されて、ようやく気が付いた気持ち。


 思えば男子が好きな女の子に悪戯するなんて話があるが、あの部屋での俺の行動がまさにそれだった。


(俺、めっちゃ子供じゃん……恥ずい……)


 気が付いた気持ちに突き動かされるようにふらつきながらもゆっくりと歩いていく。

 目的の場所は、病院の位置から普通15分ぐらいで到着できる場所なのだが、うまく歩けない俺は30分ほどかけ、そこにたどり着いた。


 少し広めな二車線の横断歩道。

 深夜というだけあって人通りも車の交通量は少ない。


 フラッシュバックするように黒いトラックが俺とレンコにぶつかってきたシーンが脳裏によぎる。

 普段ならすくみ上るところだが、今はその恐怖心のおかげで断言できた。

 ここで合っていると。


 周囲を見渡すとどのあたりで轢かれたのかはあっさりと見つかった。

 ひしゃげたガードレール、そのそばにはなぜかアンパンだの花だのが添えられている。


(俺もレンコも生きてんだけどなぁ……こういうのって誰が置いていくんだ?)


 縁起でもないなと気分が悪くなったが、俺はあたりをうろうろと確かめてみた。

 来てみたはいいが、あの部屋に行く手がかりが見つからない。


(あの時は黒いトラックに轢かれた。となると―――)


 もう一度トラックに轢かれないとあの部屋にはいけないではないだろうか。

 いや、そんな都合よくトラックが来るとは――。


 バーァァァァ!!

 突然のクラクション音に俺はビクリと音の先を見る。

 いつの間にか歩道を乗り上げたトラックが眼前に迫っていた。


 とっさのことで俺は反応が遅れた。

 棒立ちで動けないでいると、近づいてくる運転席のフロントガラスから、恐怖で顔をゆがませている運転手のお兄さんと目があった。

 ああ、そうか。深夜、事故があった横断歩道。そこにふらふらと立つ病院着の俺。しかもちょうど事後現場でお供え物まである。

 冷静に別の視点からそれを想像と、それは心霊現象の類に見えなくもない。

 それは、うん、驚くよな。ごめん。


 上手く動かない体でも、このタイミングなら逃げることができたかもしれない。

 でも今の俺にその選択肢はなかった。


 衝撃音からの激痛、そして俺の意識は暗転した。
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