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俺たちの結婚を認めてくれ!

第十話 螟「縺ァデートをしよう

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勇者太郎は寝室のベッドの上で目を覚ました。

(一体どうなったんだ? たしか俺は右手にナイフを受けて……あー貫通したんだったか)

勇者太郎は試しに右手を動かしてみる。すると右手は少しのしびれは残っているものの、問題なく動く。

(純朴可愛い系神官か? さすがの腕前だなぁ)

勇者太郎は体を起こし、ベッドから降りた。そしてだいぶ寝てしまったであろう体を横に捻り伸ばした。

(体も特に重くはなく、特に体に毒が残っているわけでもなさそうだ)

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廊下を歩いていると、勇者太郎はラスボス子に出くわした。

「勇者太郎。おはよう」
「ラスボス子! あれからどうなったんだ?」
「あれから? 何を言っているの?」

ラスボス子は考えるしぐさをして心あたりがないのか首をひねった。

「え……。いや、だって」

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気が付けば勇者太郎の右手をラスボス子が握っていた。

「それよりも行きましょう?」
「え?」

少ししびれるので相手の手の感触がよくわからないのが少し残念だと勇者太郎は気を落としたが、ラスボス子に誘われるまま城から外に出て、城下町に向かった。

喧噪と活気、空砲が鳴り、辺りを子供たちや大人が楽しそうに道を歩いている。
屋台が並び、大道芸人が剣を投げ芸をする、皆に何かを楽しんでいるようだった。

「な、なんだ?」

確かに自分の国だが、見たこともない光景に勇者太郎は戸惑った。

「何って、あなたの提案で始めた建国祭よ。……ね、行きましょう?」
「お、おう……」

そう言われ、ラスボス子に手を引かれながら勇者太郎は人混みに紛れていった。

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彼女に誘われるまま勇者太郎は屋台をめぐる。
二人で珍しい食べ物を食べ歩き、芸を見て驚き、たわいもないことを話して過ごす。
時折、彼女が見せる笑みがとてもかわいくて、つられて勇者太郎も頬がゆるんでしまう。

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手をつないだまま、屋台を一巡りする。気が付けばいつしか辺りは暗くなり始めていた。

(だいたい手の感覚が戻ってきた……ん?)

しびれが取れた右手は何も感じていなかった。
ラスボス子の柔らかさも、体温も、全て、何も感じなかった。
だから彼は気が付いてしまった。

「来年もできるといいわね、お祭り」
「……いや」

勇者太郎はラスボス子を抱きしめた。
彼には確証があった。これが夢だということに。

「ちょ、ちょっとなに」
(俺はまだラスボス子の手を握ったことがない……だから彼女の手を握ってもそれがどんな感触か知らなかったから、何も感じなかった)

「俺さ、また、この光景が見れるように頑張るよ」
「勇者太郎?」

抱きしめた彼女の体は細く、どこか消えてしまいそうな不安に駆られて勇者太郎は強く彼女を抱きしめる。少し柔らかく、暖かさを勇者太郎は感じた。

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気が付けばそこは城下町ではなく、何もない空間だった。

「ありがとうなラスボス子、おかげで楽しかったよ。いってくる」
「……うん、それじゃ。いってらっしゃい」

そういうと勇者太郎の腕の中から、ラスボス子の姿は消えた。
勇者太郎は一度目を強くつぶる。それが夢だと理解したなら覚醒は早かった。

そして勇者太郎は寝室のベッドの上で目を覚ました。

(一体どうなったんだ? たしか俺は右手にナイフを受けて……あー貫通したんだったか)

勇者太郎は試しに右手を動かしてみるとしびれはなく、問題なく動く。

「あなたって結構寝相悪いのね」
「……おはよう。ラスボス子」

勇者太郎が今一番聞きたい声が聞こえてベッドの脇を見る。
そこにはラスボス子が椅子に座り、面白そうに笑みを浮かべていた。
そんな彼女に指摘されて勇者太郎は自分の格好を意識した。

(あー。あの夢のラスボス子は布団だったか……どうりで柔らかいわけだ)

少し恥ずかしくなり勇者太郎はベッドから降り、体を伸ばした。

「なあ、ラスボス子。手を握ってもいいか?」
「突然、どうしたの? ……はい」

そう言うと少し赤くなりながらラスボス子は手を差し出した。
勇者太郎は右手で彼女の左手を握る。
それは小さくて柔らかく、少しひんやりとした手だった。
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