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おじいちゃん先生なんか用?

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悪役令嬢に転生いたしました。

とある乙女ゲームのノベライズ版限定キャラの悪役令嬢、本家の乙女ゲームには出て参りません。

ゲーム版メイン攻略対象の婚約者で、婚約者に近づく平民の女に生意気だと苛烈ないじめを行い、断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボにございます。

ちなみに高位貴族出身です。婚約者は王族でした。

あ、申し遅れましたが名をエリカと申します。家名はすでに勘当された身なので名乗れません。


ちなみに前世の記憶を思い出したのは、ありきたりではありますが、婚約者との初対面の時にあれ?っとなって、頭ズッキんバタンキュー。5日ほど寝込みました。

目覚めたら、体は子供、頭脳は〇〇才の幼女爆誕にございました。


一応、破滅回避は目指させていただきました。
原作では、傲慢・我儘・選民主義なお嬢様でしたから、清く・正しく・美しく、とまではいきませんがまあ普通の感じで印象アップ狙いです。

・・・失敗しました。やることなすこと、なぜか悪い方にとらえられ評判はガタ落ちでした。これが強制力というものでしょうか。


家族仲の改善も目指しました。本編では冷たい家族関係で愛情に飢えていたらしいので、子供の無邪気さを利用してがんばりました。

・・・失敗しました。両親は根っからの貴族。選民主義が身に染み付いておりました、さすがノベライズ版のエリカを育てただけはありました。子供の戯言など聞いてはくれません。そんな暇あったら、婚約者のご機嫌をとるか、勉強しろです。


婚約者との関係の改善もしようとしました。本家では、嫌がる婚約者を顧みずべったり、プレゼントねだったり、我儘放題。きちんと対話して、良好な関係を築けるように努力しました。

・・・失敗しました。最初っから政略の婚約で印象が悪いのに加え、やることなすこと悪く取られる現象がここでもおき、評判や噂も耳に入ってしまったらしく挽回のしようもありませんでした。


もう、本編開始前に諦めモード突入でした。



本編は魔法学校に入学した主人公が、ヒーローたちに出会い、愛を育み悪役令嬢エリカを断罪するまでが第一章。
主人公が特別な力に目覚め、ヒーローたちとラスボスを倒すために奮闘するのが第二章でございます。

エリカの出番は第一章のみ、学年末のパーティーで断罪された後は、あっさり勘当され、平民になったとちょろっと巻末に載せられるだけの存在です。
本家本元の乙女ゲームには出ないキャラなのであまり引っ張れないのでしょうね。


ちなみに、学生生活は最悪でしたよ。
登場キャラはみんな同じ歳で、同時入学なのですが入学時点で主人公以外から嫌われております。評判も悪いですからね、ぼっちですぼっち。

その後、主人公が虐められますが、諦めモードの私は何もしてません。断じて、断じて何もしていません。
どんな神にでも誓えます。
が、やっていません。

ですが、全て私のせいになりました。
これが強制力。

恐るべし。


1年目の学年末のお疲れパーティー。

「エリカとの婚約を破棄する!!」

なんてお決まり文句から始まる断罪劇がありました。

具体的な内容はお察しの通りですので割愛。


なぜか証拠や証人がいたので、政治的なものもあったんでしょうかね。
嵌められたのでしょう。主犯が誰かはわかりませんが。

もう反論も何もせず、さっさと退場いたしましたとも。

お家に帰れば、ザ・貴族な両親は発狂せんばかりに怒り狂い、恥さらしめと怒鳴り散らして、勘当を言い渡されました。

さすがに深夜だったのでそのまま追い出されはしなかったものの、朝イチで出て行けと言われて、申し訳程度の小金と着替えだけ持たされて追い出されました。



前世の記憶もありますし、この展開も予想していたので、それなりに準備はしていました。
ですが、実際体験すると心にくるものがあります。

とりあえず入った食堂で、ご飯をいただいた後、席から立ち上がれなくなってしまいました。

飲み物を追加で頼み、立ち上がれるようになるまでちょっと休ませていただこうとしているのが、まさに今でございます。



なーんて、現実逃避を兼ねた私の人生ダイジェスト。

そんな事しちゃうくらい正直いって詰んでいるのである。どうしよう・・・。
準備したと言っても、貴族の娘に隠れてできることは少なく、当面の資金になる換金しやすそうな宝飾品を準備したり、今着ている平民服を準備したりが関の山。
一応、平民の暮らし調査もしたけど、その現実が逆に私を追い詰めております。

あ、ちなみに家から持たされた着替えなんて、腐っても高位貴族の用意するものですからね、質が良すぎて着てたら人攫いなどにあっという間にさらわれてしまいます。

現実問題として、働かなくてはならないのです。
元日本庶民の記憶がある私ですので、働くの上等ですがそうは問屋が卸さない。

ラノベとかでよくあるような平民のお店では、手入れされた肌荒れひとつない綺麗な手に、立ち振る舞いでどっかの訳ありお嬢様と察せられ、面倒ごとはごめんだと雇ってもらうのは難しい。
ちょっと良さげな裕福な平民から、下級貴族向けのお店では紹介状もない人は雇いません。
高位貴族向けのお店は、噂やらなんやらで私のことがバレますし、雇ってるのがお客さんの高位貴族にバレたら面倒ごと必須なわけで雇ってもらえません。紹介状もないですしね。
まあつまり、まともなところでは雇ってもらえません。

はい、論破!

なんちて・・・。


ちなみに魔法が使えるのでうまく雇ってもらえれば高給取りです。
ですが、察してください。高給を出せる人は、国オア高位貴族。

はい、この意味わかりますね。
詰っんっだっ!はーと。

あと、この国では魔法学校卒業しないと正規の魔法使いとしては働けません。
魔法学校は単位制ですが、必修科目があり最低2年授業を受けないと卒業資格がもらえません。
私は1年目の学年末のパーティーで追い出されました。

モグリになるか、他所の国に行くしかないのです。
残念ながら、手持ちのお金では隣国に移動するだけで手持ちが尽きます。
21世紀の日本とは違います。なんちゃって中世ヨーロッパ風ファンタジーの世界観です。
野盗や魔物などがいます。乗合馬車もなかなか値が張ります。

一応現世は箱入りお嬢様でした、前世も科学が発達した日本暮らしです。
サバイバルなんぞできません。
無一文になるリスクを取ってまで国から出るなぞという冒険ができるほどの勇気もなく。

かと言って、ここにいてもジリ貧です。

ああ、考え出したら余計に立ち上がる気力が出ない・・・。



「エリカさん、ここにいたんですね。」

追加注文の飲み物を2回ほどおかわりして、やってきた三杯目をちびちび飲みながら、飲み物の水面を見るともなしに見ていると、突如そんな声が聞こえてきた。
声の主の方を見てみれば、すぐそばにおじいちゃんが立っていた。

見覚えがあるなと思い、ぼんやりとした頭を回転させて心当たりを探ってみた。

そして、思い出した。
そうです、魔法学校の歴史の先生です。

真面目なおじいちゃん先生で、抑揚のない淡々とした声で紡がれる授業は眠い授業ナンバーワン!

なんてことを考えているうちに、おじいちゃん先生は私の向かいに座って飲み物注文してた。
頭の中が疑問符でいっぱいになる。特におじいちゃん先生と仲良くしていたわけではなし、昨日の事も知っているのであれば私は関わりあいたい人間でもないはず。
おじいちゃん先生は私の困惑を感じ取ってか、柔らかな笑みを浮かべてこう言った。

「お話ししなくてはならないことがありましてね、飲み物がきたら話しますからちょっと待っていてください。」

うーん、おじいちゃん先生の感じ悪い話ではなさそうだが・・・。
なんだろう?なんか学校に忘れ物したか?

話とは何か一応頭をひねるものの、わざわざ私を探してするような内容は思いつかなかった。

飲み物はあっさりと到着し、おじいちゃん先生が一口口にしてから話を始めた。

「まず、昨日は災難でしたね、お疲れ様でした。」

「は、はい?」

おじいちゃん先生は昨日のことを私に災難と表現した・・・。
なんと返事をしたらいいかわからず、疑問形で返してしまったら、苦笑していた。

「で、話というのはですね、学校のことです。」

「はい。」

まあ、それ以外にはないだろうけど、具体的には?

「エリカさんなら魔法学校がどうして存在するか知っていますよね?」

「はい、魔力を持つ人間に魔法に関する正しい知識、危険性のを教えるため。そして正しい使い方を身につけ魔力の暴走などによる事故を防止するためです。」

「よくできました。」

・・・で結局本題は?

「それゆえに魔法学校では必修の授業があるのも知っていると思います。そして、この国では魔法学校への入学と必修授業を修めることは魔力保持者の義務になっています。」

「ええ、それは知っています。」

「ですが、エリカさんは授業を修めきっていないでしょう?」

「・・・そうですけど、学費が払えません。家も勘当されましたし、あの両親が今更私の学費を払うとは思えないのですが。」

魔法学校の学費は高い、生活費すらこれから怪しくなる私に払える訳が無い。
そう思っておじいちゃん先生の方を見る。

「ええ、ですが学費を払う必要があるのは貴族だけです。」

「?え、それは知っていますが、それが?」

「あなたが家から勘当され、貴族籍を抜ければ平民として学校に通うことができます。その場合、学費と寮費は国が負担するので生活費はかかりません。」

「・・・え、そんなこと・・・」

「まあ、その代わり授業は平民クラスで受けてもらいますし、貴族クラスのようないい環境とは言えません。備品ひとつとっても、学ぶのに問題ない程度の使い古しのものです。それに貴族クラスとの合同授業もありますから、あなたにとって居心地のいい環境とは言い難いでしょう。」

「・・・。」

「それでいいのであれば、魔法学校はあなたを迎える用意があります。どうしますか?」


それは甘美なお誘いだった。
今までの私の状況から言って決して楽ではないだろう。
それでも、私にとって最善はそれだとしか言いようがなかった。


そして、私の学校生活第2ラウンドが始まることとなったのだった。

カーンっ!

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みんなの感想(6件)

penpen
2022.02.02 penpen

続き〜(ノシ 'ω')ノシ バンバンバン

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藤乙
2021.02.11 藤乙

おろ? 此処で終わりですか?

なんとか独り立ち出来るところまで話が続いてくれると嬉しいと思います

解除
づら子
2020.07.20 づら子

別のお話からきました。
続きが気になります。
是非第2ラウンドも執筆お願いします( ノ;_ _)ノ

解除

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