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理由
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「んんんんんんん~」
パソコンの画面を見つめたまま、ジュニアが唸る。
なんか衝撃なんですけど……。
「とりあえず、カイリとリカコさんに連絡取るか」
イチがスマホに手を伸ばす。
「ん。あたしリカコさんにかけるね」
どう言うことなんだろう。
LINEからリカコさんのスマホに電話をかける。
公安と繋がりがあったのは、越智《おち》警務部長と東田副総監。
越智は息子絡みだけど、すでに殉職。
東田は元公安部長。
「あ。リカコさん? 今寮に居るんだけど」
電話の奥から聞き覚えのある着信音。
その音が切れる。
「カイリ、すぐに帰って来れるか?」
イチの電話が繋がった……。
「あれ? リカコさん。カイリと一緒?」
『え……。ああ、うん。偶然帰りが一緒になって』
ちょっとびっくりしたリカコさんの声。
まぁ、あたしもたまたまジュニアと帰って来たし、そういう日もあるよねー。
「ふーん」
『どうしたの?』
話の進まないあたしにリカコさんが先を促す。
「うん。ジュニアが東田副総監と越智ダヌキの事でいろいろ発見があってね。寮に顔出せる?」
『わかったわ。じゃあ、後で』
###
「うーん」
話しを聞くなり、リカコさんも唸りだす。
全員がリビングに顔を揃え、ジュニアから大体の説明を終えている。
「現場に顔をだした以上、東田が一枚噛んでいるのは事実だし、越智の息子の件も気になるところね……」
人差し指を唇に当てて、リカコさんが呟くように言葉を紡ぐ。
「ちょっと、気になってたことがあるのよね……。
アコニチンのナイフの鑑定を本庁にお願いした時、捜一の情報が警務部に渡っていたの。
その時は榎本が越智に情報を流したんだと思っていたんだけど、その後情報が〈おじいさま〉まで上がってて……。
越智ダヌキが〈おじいさま〉に告げ口するはずなんてないし、腑に落ちないって思っていたんだけど、ちょっと思い違いがあるのかもね。」
人差し指が下唇をなぞる。
考え事をする時のリカコさんの癖。
「うん。〈おじいさま〉に直接聞きましょう。ここで唸っていても解決しないわ。
向こうの捜査状況も聞き出したいし」
スポバを引き寄せ〈おじいさま〉直通の携帯を取り出す。
「ジュニア、越智雄介の死因と死亡時の状況を調べられるかしら?」
「あいあい。任せてよん」
ジュニアがパソコンデスクの椅子に逆向きに座っていた姿勢を正す。
大きく深呼吸をして、リカコさんが電話をかけた。
携帯は数回コールして、聞き慣れた低い声が電話に出たようで。
「リカコです。突然のお電話申し訳ありません。今、お時間いただいてもよろしいですか?」
リカコさんが丁寧に〈おじいさま〉のご機嫌を伺う。
「……はい」
あたし達を見回して、リカコさんがマイク機能をオンにした携帯をサイドテーブルにゆっくりと置いた。
どうやら話しを聞いてくれるみたい。
「昨日のタイチ、カエ両名の拉致に際して確保された公安の3名ですが、昨夜メールにて写真添付の報告書をあげさせて頂いた通り、東田副総監の関与は疑いようがありません」
報告書っ! リカコさん、仕事が早い。
「両名の報告では、ターゲットになっていたのは私達全員。
私達を狙った理由はもう聴取されたのでしょうか?」
関係ない。と言われればそれまでだけど。
まぁ、その時はジュニアがどこぞのデータファイルから資料を引っ張り出してくるだけたし。
『ふむ。公安の3名に関しては流石の口の固さだ。
ただ、榎本の方はいろいろと情報が入ってきている。どうやら証拠品や押収品に手を付けて横流しをしていたようでな。それをの見咎《みとが》められ、一部の公安の人間から口をつぐむ代わりに色々と協力を強制されていたようだ』
越智サイドじゃなかったんだ。
それなら、ジュニアがメールで呼び出した時に、あたし達の情報が一切榎本に入っていなかったのも納得できる。
「横流しなら、警務部の監察官に話が入るべきではないのですか?」
リカコさんの指摘に割って入る声。
『我々警務部も捜査一課の押収品の紛失に気付いていなかったわけではない』
我々警務部……?
「おっ。越智、警務部長? いつからそこに?」
流石のリカコさんも驚きから声が上ずる。
あたしも叫びそうになる口をググっと抑えた。
『最初からだ』
その声に、パソコンデスクから振り返るジュニアも合わせてあたし達5人の視線が交差する。
(クソジジィィィっ。性格悪すぎっ!)
「は、話しを戻させて頂きます。
榎本課長を脅していたのは、あの3人だったのでしょうか? 私たちは、現場に顔をだした事からも東田副総監が気になっています。あの方は、元公安部長を務められていますよね?」
『本庁に顔も出さずによくそこまで情報を引き出したな。サイバーセキュリティ対策本部には強化対策を敷かせよう』
〈おじいさま〉は飼い犬が芸を披露した事を喜ぶ様な口調で続ける。
『東田に関しては、配下と連絡が付かなくなった事を訝しがるかもしれんが、お前達が廃工場で使用した〈フラッシュバン〉が、近隣でガス爆発ではないかとの通報を受けている。今日は通常通り登庁していたし、配下共々お前達を葬ったと思っているかもな』
なるほど。
『明朝10時より、出勤してくる東田副総監の確保を行う予定だ。今回の件のご褒美に、見学を許してもいいぞ』
〈おじいさま〉の自己中心的なイタズラ発言に、越智ダヌキが食ってかかる。
『櫻井っ! 子供を危険な大人の仕事に巻き込むなと! 何度言ったらわかるんだっ。
失った命は帰らないんだぞ』
『分かった分かった。お前達も、もう話は終わりだな』
それだけ言うと電話が切れた。
なんか……。
「越智があたし達を毛嫌いして追い出そうとしていたのって、息子が殉職してた事を繰り返したくなかっただけなのかもしれないね」
パソコンの画面を見つめたまま、ジュニアが唸る。
なんか衝撃なんですけど……。
「とりあえず、カイリとリカコさんに連絡取るか」
イチがスマホに手を伸ばす。
「ん。あたしリカコさんにかけるね」
どう言うことなんだろう。
LINEからリカコさんのスマホに電話をかける。
公安と繋がりがあったのは、越智《おち》警務部長と東田副総監。
越智は息子絡みだけど、すでに殉職。
東田は元公安部長。
「あ。リカコさん? 今寮に居るんだけど」
電話の奥から聞き覚えのある着信音。
その音が切れる。
「カイリ、すぐに帰って来れるか?」
イチの電話が繋がった……。
「あれ? リカコさん。カイリと一緒?」
『え……。ああ、うん。偶然帰りが一緒になって』
ちょっとびっくりしたリカコさんの声。
まぁ、あたしもたまたまジュニアと帰って来たし、そういう日もあるよねー。
「ふーん」
『どうしたの?』
話の進まないあたしにリカコさんが先を促す。
「うん。ジュニアが東田副総監と越智ダヌキの事でいろいろ発見があってね。寮に顔出せる?」
『わかったわ。じゃあ、後で』
###
「うーん」
話しを聞くなり、リカコさんも唸りだす。
全員がリビングに顔を揃え、ジュニアから大体の説明を終えている。
「現場に顔をだした以上、東田が一枚噛んでいるのは事実だし、越智の息子の件も気になるところね……」
人差し指を唇に当てて、リカコさんが呟くように言葉を紡ぐ。
「ちょっと、気になってたことがあるのよね……。
アコニチンのナイフの鑑定を本庁にお願いした時、捜一の情報が警務部に渡っていたの。
その時は榎本が越智に情報を流したんだと思っていたんだけど、その後情報が〈おじいさま〉まで上がってて……。
越智ダヌキが〈おじいさま〉に告げ口するはずなんてないし、腑に落ちないって思っていたんだけど、ちょっと思い違いがあるのかもね。」
人差し指が下唇をなぞる。
考え事をする時のリカコさんの癖。
「うん。〈おじいさま〉に直接聞きましょう。ここで唸っていても解決しないわ。
向こうの捜査状況も聞き出したいし」
スポバを引き寄せ〈おじいさま〉直通の携帯を取り出す。
「ジュニア、越智雄介の死因と死亡時の状況を調べられるかしら?」
「あいあい。任せてよん」
ジュニアがパソコンデスクの椅子に逆向きに座っていた姿勢を正す。
大きく深呼吸をして、リカコさんが電話をかけた。
携帯は数回コールして、聞き慣れた低い声が電話に出たようで。
「リカコです。突然のお電話申し訳ありません。今、お時間いただいてもよろしいですか?」
リカコさんが丁寧に〈おじいさま〉のご機嫌を伺う。
「……はい」
あたし達を見回して、リカコさんがマイク機能をオンにした携帯をサイドテーブルにゆっくりと置いた。
どうやら話しを聞いてくれるみたい。
「昨日のタイチ、カエ両名の拉致に際して確保された公安の3名ですが、昨夜メールにて写真添付の報告書をあげさせて頂いた通り、東田副総監の関与は疑いようがありません」
報告書っ! リカコさん、仕事が早い。
「両名の報告では、ターゲットになっていたのは私達全員。
私達を狙った理由はもう聴取されたのでしょうか?」
関係ない。と言われればそれまでだけど。
まぁ、その時はジュニアがどこぞのデータファイルから資料を引っ張り出してくるだけたし。
『ふむ。公安の3名に関しては流石の口の固さだ。
ただ、榎本の方はいろいろと情報が入ってきている。どうやら証拠品や押収品に手を付けて横流しをしていたようでな。それをの見咎《みとが》められ、一部の公安の人間から口をつぐむ代わりに色々と協力を強制されていたようだ』
越智サイドじゃなかったんだ。
それなら、ジュニアがメールで呼び出した時に、あたし達の情報が一切榎本に入っていなかったのも納得できる。
「横流しなら、警務部の監察官に話が入るべきではないのですか?」
リカコさんの指摘に割って入る声。
『我々警務部も捜査一課の押収品の紛失に気付いていなかったわけではない』
我々警務部……?
「おっ。越智、警務部長? いつからそこに?」
流石のリカコさんも驚きから声が上ずる。
あたしも叫びそうになる口をググっと抑えた。
『最初からだ』
その声に、パソコンデスクから振り返るジュニアも合わせてあたし達5人の視線が交差する。
(クソジジィィィっ。性格悪すぎっ!)
「は、話しを戻させて頂きます。
榎本課長を脅していたのは、あの3人だったのでしょうか? 私たちは、現場に顔をだした事からも東田副総監が気になっています。あの方は、元公安部長を務められていますよね?」
『本庁に顔も出さずによくそこまで情報を引き出したな。サイバーセキュリティ対策本部には強化対策を敷かせよう』
〈おじいさま〉は飼い犬が芸を披露した事を喜ぶ様な口調で続ける。
『東田に関しては、配下と連絡が付かなくなった事を訝しがるかもしれんが、お前達が廃工場で使用した〈フラッシュバン〉が、近隣でガス爆発ではないかとの通報を受けている。今日は通常通り登庁していたし、配下共々お前達を葬ったと思っているかもな』
なるほど。
『明朝10時より、出勤してくる東田副総監の確保を行う予定だ。今回の件のご褒美に、見学を許してもいいぞ』
〈おじいさま〉の自己中心的なイタズラ発言に、越智ダヌキが食ってかかる。
『櫻井っ! 子供を危険な大人の仕事に巻き込むなと! 何度言ったらわかるんだっ。
失った命は帰らないんだぞ』
『分かった分かった。お前達も、もう話は終わりだな』
それだけ言うと電話が切れた。
なんか……。
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