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奪還成功……?
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「今から東田の車を探すのは難しいからね。出てきたところを仕留めよう」
バンのスライドドアを開けて、バックから出したロケラン……。
ジュニア特製捕縛機を組み立て始める。
「リカコ。解体してもらうから手順覚えてねー」
手早く組み立てる手元にリカコさんが集中する。
「駐車場に出て来れるのはそこの自動ドアだけだ。上に出ているひさしに僕とイチが待機。
カエは車内から東田が見えたら合図して。人質が右側に居たら右手。正面向いてたら手の平をこっちに向けて、後ろ向きなら手の甲。左も同様ね。
リカコとカイリは捕縛担当。僕たちで人質を東田から引き剥がすから、タイミング見てトリガー引いて。
100メートルまで捕縛範囲。強化ワイヤーの網が飛ぶから近すぎると、その……。対象者が危ないかも」
珍しく言葉を濁したって事は、本当に危ないんだろうな。
リカコさんが複雑な顔をしている。
「はい、完成。終わったら解体よろしく」
リカコさんが空のバックを肩に掛け、捕縛機をカイリが背負う。
「カエちゃん。タバコの吸い殻回収お願いね。総員怪我の無いように! 散開」
リカコさんのいつものセリフに、それぞれが持ち場に散った。
あたしもカバンの中からポーチを出すと、中のジップロックをつまみ出し、息を止めて吸い殻をジップロックの中にひっくり返す。
だって臭いんだもんっ!
スモークの貼られていない運転席の窓から、庁内への入り口に集中する。
動く人影っ!
おそらくは東田。年配の男が後ろ向きに後ずさってくる。
人質らしき、ショートカットに長身で細身の……女性。
首筋に銃を突きつけられている。
えと。人質は左側で後ろ向きだから。
イチとジュニアに左の手の甲を掲げる。
なんか、見たことある後ろ姿。
女の人。だよね?
自動ドアのひさしの上で、2人が2、3事を交わし、ドアの開く音にジュニアが東田の目の前に落ちるように着地する。
「はっっ! ち、近づくなっ」
慌てた様子で銃をジュニアに向ける、その瞬間。
伸び上がるようなジュニアの蹴りが東田の手首を捉える。
速いっ! 蹴り足が見えなかった。
弾かれた銃が宙を舞い、ジュニアが自身も床に身を投げる。
ひさしから、人質の背後に飛び込む形でジャンプしたイチが身をひねり着地すると、言い方は悪いけど、人質を押し倒すように身を抱えて、閉まる直前の自動ドアのなかに消えていく。
ドシュュゥゥゥッ!
ガスを吐く、なんとも形容しがたい爆音を立てて放たれた弾頭が網を吐き出し、驚愕の顔を晒す東田を飲み込んだ。
完了っ!
荷物をまとめて車外に出る。
発砲の威力に吹き飛ばされたらしいリカコさんが、お尻をさすりながらカイリに助け起こされて、手早く捕縛機の解体に入った。
網にかかった東田はそのまま壁にぶち当たり、気を失っている。
立ち上がったジュニアが、リカコさんのホストインカムを耳に当てた。
「地下の爆音は囮。総員持ち場を離れ無いようにっ!」
「あれ。イチは?」
指紋が付かないようにハンカチで東田の銃を拾い、ジュニアに合流する。
「ドアの中に飛んだみたいだよ」
ジュニアと2人で自動ドアの中を覗き込むと。
「離せぇぇぇっっ!」
ガッチリと、助けたはずの人質に羽交い締めにされたイチが抜け出そうともがいていた。
「イチくぅんっ。ホントにホントに怖かったのっ!」
『葵ちゃん』
思わずジュニアと顔を見合わせる。
やっぱり、なんか見たことある後ろ姿だと思ったんだよね。
「あーあ。誰? 人質は女の子。なんて言ったの」
ジュニアが嬉しそうに、でもちょっぴり気の毒そうに、呟いた。
むぅ。葵ちゃんは男の子だってわかってるけど……。
なんか複雑。
「何してるの? 撤収するわ……よ」
中身の詰まったドラムバックを背負ったカイリとリカコさんが合流してきた。
「ありゃあ、チューされちゃうかもね」
「助けてやんなくていいの?」
「野暮なこと言わないの。行こー」
ジュニアとカイリの会話にイチが反応する。
「こら待てぇぇっ!」
流石に放置するのは忍びない。
……気がする。
リカコさんと顔を見合わせて、あたしたちは自動ドアをくぐりぬけた。
「葵ちゃん、ちょっと私達今見つかるのはマズイから、イチを離してもらえるかしら? 今度ちゃんとお膳立てするから」
リカコさんの言葉に葵ちゃんが視線を上げる。
「そんなこと言って、この前もデートすっぽかされたんだけど。ま、他ならぬ理加子ちゃんの頼みだし。
またぎゅーしてねー。イチくん」
解放されたイチがジュニアの元に走って逃げ……戻って行く。
「後これ。東田の所持していた〈SAKURA〉。預けちゃうね」
ハンカチごと拳銃を差し出す。
「こっちも鑑識室に戻るわ。後は上手く言っとく。じゃあねぇ」
拳銃を受け取ると、あっさりと身を翻し葵ちゃんは去っていった。
「駐車場から出よう。正面玄関の大人達をこっちに呼び戻すからね」
インカムに、駐車場に集合するように呼び掛けるジュニアの声を聞きながら、あたし達はゆっくり駐車場のスロープを登り始めた。
バンのスライドドアを開けて、バックから出したロケラン……。
ジュニア特製捕縛機を組み立て始める。
「リカコ。解体してもらうから手順覚えてねー」
手早く組み立てる手元にリカコさんが集中する。
「駐車場に出て来れるのはそこの自動ドアだけだ。上に出ているひさしに僕とイチが待機。
カエは車内から東田が見えたら合図して。人質が右側に居たら右手。正面向いてたら手の平をこっちに向けて、後ろ向きなら手の甲。左も同様ね。
リカコとカイリは捕縛担当。僕たちで人質を東田から引き剥がすから、タイミング見てトリガー引いて。
100メートルまで捕縛範囲。強化ワイヤーの網が飛ぶから近すぎると、その……。対象者が危ないかも」
珍しく言葉を濁したって事は、本当に危ないんだろうな。
リカコさんが複雑な顔をしている。
「はい、完成。終わったら解体よろしく」
リカコさんが空のバックを肩に掛け、捕縛機をカイリが背負う。
「カエちゃん。タバコの吸い殻回収お願いね。総員怪我の無いように! 散開」
リカコさんのいつものセリフに、それぞれが持ち場に散った。
あたしもカバンの中からポーチを出すと、中のジップロックをつまみ出し、息を止めて吸い殻をジップロックの中にひっくり返す。
だって臭いんだもんっ!
スモークの貼られていない運転席の窓から、庁内への入り口に集中する。
動く人影っ!
おそらくは東田。年配の男が後ろ向きに後ずさってくる。
人質らしき、ショートカットに長身で細身の……女性。
首筋に銃を突きつけられている。
えと。人質は左側で後ろ向きだから。
イチとジュニアに左の手の甲を掲げる。
なんか、見たことある後ろ姿。
女の人。だよね?
自動ドアのひさしの上で、2人が2、3事を交わし、ドアの開く音にジュニアが東田の目の前に落ちるように着地する。
「はっっ! ち、近づくなっ」
慌てた様子で銃をジュニアに向ける、その瞬間。
伸び上がるようなジュニアの蹴りが東田の手首を捉える。
速いっ! 蹴り足が見えなかった。
弾かれた銃が宙を舞い、ジュニアが自身も床に身を投げる。
ひさしから、人質の背後に飛び込む形でジャンプしたイチが身をひねり着地すると、言い方は悪いけど、人質を押し倒すように身を抱えて、閉まる直前の自動ドアのなかに消えていく。
ドシュュゥゥゥッ!
ガスを吐く、なんとも形容しがたい爆音を立てて放たれた弾頭が網を吐き出し、驚愕の顔を晒す東田を飲み込んだ。
完了っ!
荷物をまとめて車外に出る。
発砲の威力に吹き飛ばされたらしいリカコさんが、お尻をさすりながらカイリに助け起こされて、手早く捕縛機の解体に入った。
網にかかった東田はそのまま壁にぶち当たり、気を失っている。
立ち上がったジュニアが、リカコさんのホストインカムを耳に当てた。
「地下の爆音は囮。総員持ち場を離れ無いようにっ!」
「あれ。イチは?」
指紋が付かないようにハンカチで東田の銃を拾い、ジュニアに合流する。
「ドアの中に飛んだみたいだよ」
ジュニアと2人で自動ドアの中を覗き込むと。
「離せぇぇぇっっ!」
ガッチリと、助けたはずの人質に羽交い締めにされたイチが抜け出そうともがいていた。
「イチくぅんっ。ホントにホントに怖かったのっ!」
『葵ちゃん』
思わずジュニアと顔を見合わせる。
やっぱり、なんか見たことある後ろ姿だと思ったんだよね。
「あーあ。誰? 人質は女の子。なんて言ったの」
ジュニアが嬉しそうに、でもちょっぴり気の毒そうに、呟いた。
むぅ。葵ちゃんは男の子だってわかってるけど……。
なんか複雑。
「何してるの? 撤収するわ……よ」
中身の詰まったドラムバックを背負ったカイリとリカコさんが合流してきた。
「ありゃあ、チューされちゃうかもね」
「助けてやんなくていいの?」
「野暮なこと言わないの。行こー」
ジュニアとカイリの会話にイチが反応する。
「こら待てぇぇっ!」
流石に放置するのは忍びない。
……気がする。
リカコさんと顔を見合わせて、あたしたちは自動ドアをくぐりぬけた。
「葵ちゃん、ちょっと私達今見つかるのはマズイから、イチを離してもらえるかしら? 今度ちゃんとお膳立てするから」
リカコさんの言葉に葵ちゃんが視線を上げる。
「そんなこと言って、この前もデートすっぽかされたんだけど。ま、他ならぬ理加子ちゃんの頼みだし。
またぎゅーしてねー。イチくん」
解放されたイチがジュニアの元に走って逃げ……戻って行く。
「後これ。東田の所持していた〈SAKURA〉。預けちゃうね」
ハンカチごと拳銃を差し出す。
「こっちも鑑識室に戻るわ。後は上手く言っとく。じゃあねぇ」
拳銃を受け取ると、あっさりと身を翻し葵ちゃんは去っていった。
「駐車場から出よう。正面玄関の大人達をこっちに呼び戻すからね」
インカムに、駐車場に集合するように呼び掛けるジュニアの声を聞きながら、あたし達はゆっくり駐車場のスロープを登り始めた。
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