世界を救おう!わいわいファンタジー

由紀

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世界を救おう!わいわいファンタジー

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「…だめっ!…っはなせ…てえ…!…~~っ!」

太腿に伝う白濁は、何度目かの吐精で扇状的な艶やかさを顕した。両腕の自由を奪うグロテスクな粘液は、強弱をつけて手の平、脇…と弱い所へ刺激を与え続ける。
唯一自由な足を動かそうと揺らすが、男根を覆う粘液が締め付け呆気なく力を失う。

なんで?!なん…でこんな事に…やだ…こんなの……っ!

薄れる思考で、頬から零れる生理的な涙、閉めようと努力する唇は開かれて、甘い息を洩らした。





新卒社畜のある秋の事。目の下の隈が大暴れしているのはご愛嬌。今日も今日とて、楽しい仕事にレッツラゴーしていたんだけど、ついに満員電車の人混みの圧に負けてしまった。

むしろ、よく今まで行けてたわ自分。
駅のホームで佇みながら、急行列車を見送る。主要駅の隣駅で降りてから、人混みからの解放感に息を吐く。だが直ぐに、脳内を駆け巡るのは遅刻の言い訳ばかりだ。
体調不良?電車の遅延?忘れ物を取りに行った?

陳腐な理由を並べてみても、厳しい上司から多かれ少なかれ説教は食らうだろう。真面目で仕事に熱心な自分、なのに上司から好かれるのは要領の良い朗らかな同僚ばかり。頑張れば頑張る程、心に虚しさばかり募っていく。

それでも、仕事に行かなければいけない。自動販売機で買った缶コーヒーを飲み終えて、次に止まった電車の入口へ足を進める。わざと各駅停車を選んだのは許して欲しい。
さ、気合い入れっか。

車両の中に入ると、ひと時の強い光に目を細める。

…っなんだ?

人工的な眩さでは無かった。白い光は視界を奪い、思わず閉じた視界に閉じたままでも明るい外界に目を開けられなかった。
もう、大丈夫かな。

「………………は?」

和らいだ眩しさにゆっくり目を開けると、電車の中所では無い景色が目の前に広がる。四方を囲む木々、小鳥の囀り、足元に茂る雑草は膝に届く程だ。

え?待て待て待て待て?

思わず自分を見下ろせば、更に信じられない状況に慄く。まず、妙に視界が狭い。顔に触れてみると、お面?仮面の様な物を着けている。一瞬外そうと思うが、何も分からない状況なので他の確認を優先する事にした。

頭をすっぽり覆うのは、現在着ているらしいファンタジーの魔法使いが身に付けるローブの様だ。脛までの長い身丈のローブは漆黒で、手は同じく黒い手袋、足元は黒いブーツ。濃い紫のマントを肩に掛けていた。

そこまで確認してから、脳裏を過る物があった。
過疎化してサービス終了した女性向けボーイズラブなエロゲームのキャラに似ていないか?

『国を大きくしながら♡世界を救おう!わいわいファンタジー♡』

それは大学生の時、3つ年下の妹に「お兄ちゃん、ファンタジー系のゲーム得意だったよね?お願い!レベル上げ手伝って~」と言われて押し付けられたのが始まりだった。

飽き性だった妹に返そうとした時には、既に別のゲームへの熱が上がっており、中途半端に放置するのはと思い続けてしまっていたし、主人公キャラクターも自分の好みにカスタマイズしたものだ。

確かゲームはオンラインだったよな。
4人のデフォルトキャラから自分の操作するキャラを選んで、ランダムで決められた国土を大きくして、発展強化させていく。
ゲーム内のガチャで武器を手に入れると、擬人化した武器が戦闘をしてくれる。武器に名前を付けると特殊強化されるので、皆名前をつけていた。自分の職業によって、相性の良い武器悪い武器がある。設定では、主人公キャラは性的接触で武器を強化回復出来る…。うん、あったわ。

いや、まさかな…もしや日々の疲れで夢でも見てんのか?うんうん、そうに違いない。

「…夢、だよな。」

足を踏み出すと、草が潰れて足跡が残る。仮面越の視界は普段よりも低く感じられて、身長が縮んでいる事を実感する。自分はゴツいマッチョな姿が良かったが、キャラクターを作成する時点で、妹が選んだデフォルトキャラクターは少年魔導師。仕方なく使い続けたが、少しずつ愛着が沸いたのを覚えている。
銀色の長い髪で一房紫色のメッシュ。緩く三つ編みにしているのは手が込んでいた。

もしこれが現実?なら、どうするか考えないと。中学生ん時なら喜んだだろうが、大人になって特に嬉しいとは思えない。まず、家族が心配するだろう。会社はクビになるのか?いや、行方不明扱いならばそれ以前なのか。あと、俺の携帯誰か捨ててくれ!…待て、あと、俺の部屋どうなるんだ?色々漁られんの勘弁してくれよ…。

悶々とする思考の中で、歩き進めた先に木々の間を抜けて開けた場所に出ていた。獣道だろうか、細い空間が先に広がり、反対側には洞窟を見つけた。

不味い…今考えないといけないのは、身の安全だな。現在よく分からない森の中、ゲームの世界ともハッキリ分からない。どんな獣や化物が現れるかもしれない。
あと心配なのは、ゲームの主人公の場合…武器が無いと戦えない。さっきから色々触ったり、動かしてみてるが何も起こらない。

ならば、理由は一つ。ゲームと仮定した場合、拠点である自分の国の武器庫から選んだ武器を装備する必要がある。今は装備していない状態という訳だ。拠点にどうやって行くか。

ゲーム上では、最初から拠点に居たからなー。リスポーンする方法として、武器に魔法を使わせてたけど…持っていないからそれも出来ない。もう一つ、出来るとしたら緊急帰還。魔導師のみ持つ特性で、体力が残り10%を切った所で拠点に戻るのだ。

ゲームの世界であれば…だが。てか、体力が10%を切る状況て怖いな。

木々の揺れる音が耳に入り、知らず肩を竦ませる。次第に自身を蝕む恐怖に、仮面の中の表情はこわばっていく。無意味に耳に触れながら、洞窟の入り口へ近付き中へ目を凝らす。
耳を澄ませてみるが、とりあえず獣の鳴き声はしない。入り口にも獣の足跡等も見えず、意を決して中へと進入する。

やはり外に居るままなのは、あまりに不安だった。何故か暑さ寒さはあまり感じないが、夜になったら森の中は危険な筈。どうにか、今の居場所を作らないと。お腹も空くと思うし。

歩みを進めると、洞窟の中で二手に分かれる空間に辿り着く。どちらにしようか思案している中、天井から落ちる滴の音に「ひえ」と悲鳴を漏らし、慌てて片方の道に駆け込む。

うわー、真っ暗だな。動物は居ないっぽいけど、あんまり奥に行き過ぎたら迷いそうだし…此処までにするか?

一度足を止めて、壁に寄り掛かる。ローブ越に伝わる洞窟内の冷たさを感じながら、今後の行動を考えようと頭のフードを下ろした時だった。
足元の違和感に素早く顔を向ける。最初は小さな水溜まりだった。生き物の様にブーツの表面を撫でたのを目にした時には、生きる粘液となってローブの裾から一気に這い上がってきた。

「…っ?!何?つめた…」

身じろぎして振り払おうとするが、透明の粘液は下腹部を気に入りまとわり付く。ローブの中に手を突っ込んで剥ぎ取ろうとするが、液体に近いそれは、指を沈めるだけに終わった。

うう、何だよこれ…気持ち悪い。

必死で剥がそうとするが、その努力に反して今度は、天井から垂れ下がる粘液が視界の端に映る。抵抗する間もなく、両腕は天井から垂れる粘液に巻き付かれ、持ち上げられ吊り下げられた。

天井からぶら下がる形となった身体に、未だ自由な下半身を思い切り動かすが、下腹部の違和感に眉を顰める。

「おい…なんで、そんな場所にい…?!」

臍から下をなぞっていた粘液は、次第に降下して柔らかな銀の繁みを探っていく。生き物の様に蠢き、心とは裏腹に熱を持ち上を向く竿に巻き付いてしまう。

「……っ!やめ、ろ…」

先程冷たかった粘液は、徐々に人肌程の温かさとなり心地よくさえ感じ始めていた。上がる体温と、熱の籠る息を吐きながらも打開策を講じようとする。
現実離れした粘液を見てしまえば、もしかしたらゲームの世界なのかと思い始めた。この液体に近い物なら、スライムだろう。透明なら、初期のモブモンスターで経験値にもならない雑魚である。

だが、今の自分は武器の無い丸腰。装備もデフォルト状態のまま。雑魚は自分だ。ゲーム内のスライムの特性ならば、主人公キャラクターの体液を求め餌としていた。雑魚敵だった為、襲われた結果どうなるか分からない。

竿を覆う粘液はきゅっと締め付けたり、力を弱めてみたりと刺激を与え続ける。まるで弄ぶ様にスライムはその身を伸ばし、玉の裏を移動していく。

…正直社畜として仕事に励んで来た日々の中、オナニーの時間すら惜しく倒れる様に寝ていた。こんな刺激、大学卒業以来だったか。

天井から伸びる粘液が触手の様に、一本…二本と派生していく。右腕を捕らえる粘液から派生した物は、右の太腿を。左腕を捕らえる粘液から派生した物は、左の太腿に巻き付き持ち上げる。

「…うわっ…!って…離せ…クソッ…」

ローブの裾をみるみる持ち上げられ、露わになった下半身はスライムによってM字状に開かれていた。
誰も居ないとは言え、羞恥を煽る姿となり顔の温度が上がる。しつこく擦られ揉まれる自身の刺激に、溜まっていた精は呆気なく放たれた。

「………っう……いや、だあ…」

スライムに弄ばれた事に傷付く自尊心。零れる涙を拭う事すら許されず、粘液は精を吸い取り動きを活性化させた。精の出所を丹念に触れていると思うと、双丘の間を進む粘液の一部が入り口に触れる。

え…嘘だろ?そこは、だって…。

女性向けゲーム、いわゆるBLゲームだ。男同士で行うならば、使用出来る箇所は一つしかない。正直言うと、ゲーム内でエロい場面があると跳ばして見ていなかった。男同士を否定するつもりは無いが、あくまで自分は女性が好きで興味が無かった。あくまでゲームなのだから…。

スライムが排泄のみに使われる出口に触れ、時間を掛けてふやかしいく。粘液の中に高揚させる作用があるのか、身体は真っ赤に染まり竿は芯を持ち続けていた。

唇の端から垂れる涎は首元を伝い、銀色の髪が揺れる。助けを求めて開かれた右手は空を切り、何度目かの吐精で背筋を仰け反らせる。

「…やだって…!いれ、んなあ…っあ!」

細い粘液が中へと侵入していく。熱い直腸内を出入りし、ゆっくり奥へと距離を伸ばしていった。

「うえ…きもち、わる…」

腸内の異物感に呼吸が浅くなり、身体の快楽を忘れようとする。その刹那、粘液が腸内の何かに触れ身体が仰け反り脳内が白く染まった。

「…あ、なに…これ…?」

初めて感じる刺激は、思考を彷徨わせる。
分からない、身体が変だ…おかしい、こんなの嫌だ、もっと…感じたい、違う…。

そんな自分を待ってくれないスライムは、もう一度精を出させようと中も外もと刺激を与える。移動する粘液の中には、臍や耳の付近、仮面の隙間から入り唇の中にも侵入していた。皮膚に浮かぶ汗すら吸われ、涙すら吸収される。

嫌だ…どう、しよう…気持ちい、良くない…





「あれ……?」

どのぐらいの時間が経っただろうか?次に気付いたのは、冷たい床の上だった。立とうとするが、膝がガクガクと震えて立てない。お腹の中は違和感があり、後ろの孔は開いたままでスライムの残りが垂れていた。ローブの裾は無残に溶けて太腿を露わにしミニスカートの様だ。
フードは落ちているが外れていない仮面の中は、吸いつかれて涙も鼻水も無いが事後の香りが漂う有様。

もしかして、体力が減ってリスポーンした…のか?

ぼんやりする思考の中、周囲を見渡せば金で縁取られた豪奢な扉が目に付く。拠点である国は西洋風で、ゲームの中で確かに自分の見慣れた城の入り口だと理解する。

「…良かった、のか?」

体力のほぼ無い身体を鞭打って、ふらふら歩き出す。風呂に入りたいし、着替えたいが、まずは武器が欲しい。記憶の中の城内を思い返し、武器庫を目指していく。

静まり返る城内の廊下には、配置していたNPCすら目にしない。きっと、また配置するのか手に入れないといけないのか。
武器はあるのか不安に苛まれる中、奥の武器庫が近付いて来た。

よし、もう少しだ…。

「…!うわっ?!」

残り数歩だろうか、足元が何かに掴まれ身体ごと倒される。
視線を落とすと、巻き付くのは黒いまるで蛸の様に幾つもの足を持つ生き物だった。

うええ、気持ち悪。何で拠点にモンスターが居るんだよ!
確かスライムより少し強い位のモンスターだったと思いながら、満身創痍の身体は言う事を聞かない。あと数歩で武器庫だと自身を奮い立たせる。

巻き付く力が弱かったからか、力を振り絞って立ち上がり何とか振り解く。辿り着いた扉を震える手で開けて、追いかけてくるモンスターに怯えながら、中へと飛び込む。

「…ああ~あった!」

白い壁に清廉な雰囲気の室内には、種類ごとに立てかけられた武器が綺麗に並ぶ。
南側には、身に付ける装飾品や装備。北側には、魔導師の扱えるスタッフ・ロッド・メイス・ワンド・スティック、魔導書など。

最も奥の中央、相棒と言える杖スタッフを見つけ手に取る。実際に触れるのは初めてなのに、妙に手に馴染むのは不思議だった。全て金で出来た杖に、一つだけ嵌め込まれた紅の宝石は目に眩しい。

…えっと、どうやって人に変えるんだ?ゲームの時は覚醒ボタンを押してたけど。何か言うのかな。名前を呼ぶとか?何て付けたっけな…。

「…あー、火焔かえん。起きてくれ?」

思い出した杖の名前と、適当に言葉を付け足してみる。一瞬の静寂で失敗かと不安になるが、直ぐにその考えは霧散する。

紅い宝石が輝きを放ち、思わず離した杖が形を変えていく。
現れたのは、褐色肌の短い金の髪に紅瞳の2mは優にあるメチャクチャなイケメン。人外じみた男前はフードのついた黒いローブで、目元を隠す。ゲーム内ではドット絵だった為、破壊力に見惚れてしまう。

「…フレイムスタッフ火焔。主人の求めにより参上した…我が主、何用だ?」
「あっ…えっと」
「…待て、その玉体に触れた者が居るのか?」
「ひえっ…えと、あの、あいつかな…」

相手に姿に見入ってしまい、言葉が上手く出なかった。火焔の視線が此方の足元を凝視し、剣呑な光を宿す。
迫力に背筋が震え、おずおずと扉の外で蠢くモンスターを指差してみた。犯人は違うけれど。

「…ぶち殺す。」
「…あわわ」





突き進んで行く火焔を見送り、1人になった事で不安が押し寄せ、武器庫を覗く。他の武器も人型になるのか?
えっと当時の武器の編成は、
メイン武器
・フレイムスタッフ火焔 level105限界突破 
・アクアロッド水流   level105限界突破 
・ウインドメイス旋風  level102
・アースワンド沃野   level100

サブもあったけど、メインだけ先に起こしとくか?何があるか分からないし。
先程の様に、武器に手を触れて一つひとつ声を掛ける。

「…水流すいりゅう、手を貸して欲しい。」
「…私はアクアロッド水流。ご主人様の命に従いましょう。」

「よし、えっと旋風せんぷう。頼む、戦ってくれ。」
「…ウインドメイス旋風。…主。俺ちゃんを呼ぶなんて、物好きだねえ?」

「…沃野よくや、出て来てくれるか。」
「…はーい!アースワンド沃野だよー。あるじ様、いっぱいお手伝いしちゃうからね。」

三者三様の個性に目を向ける。
水流は、サラサラのワンレンヘアー。黒を基調とした軍用服に軍用帽子に同色のコートを合わせて、青いラインが水属性を知らせる。
旋風は、ひょろりと長い背丈で燕脂色の上下スーツにハット、顔を覆うガスマスクはスチームパンク的と言えるだろうか。
沃野は10歳前後の少年で、自分の二回りは大きいサイズだろうパーカーを着て、女児の様に髪を2つに束ねていた。

ふと、3人の視線が此方へ向く。足元から太腿のラインに視線が集まっている事に気付くと共に、沃野が勢い良く抱き着いて来た。

「あるじ様~!呼んでくれて嬉しいな。あのね、あのね、今のお洋服も素敵なんだけど、ちょっとだけお砂が着いてるからお着替えしよ?」
「…あ、うん。そうだな。」

腰にしがみついて必死で見上げてくる可愛いらしい姿に癒されながら、遠回しに着替えを勧めてくる言葉に頷く。
現在の安全面が向上したのだから、着替えても大丈夫かな。気を遣ってくれた相手の頭を撫でてみると、へにゃりと笑み崩れる。

「あるじ様~、だ~いすきー!」
「そうか、ありがとな。」

室内の装備品置き場に向かい、手に取った防御力の高いローブに袖を通す。汚れた身体は後で綺麗にするとして、溶けてぐちゃぐちゃのローブは丸めて隅っこに置いておく。
ゲームみたいにアイテム入れに仕舞ったり破棄したいが、こういった所は現実的だ。

顔も洗いたいが、とりあえず仮面を替えようと取り外す。

「「「…!!」」」

途端に何故か一斉に顔を逸らす三人を不思議に思いながら、新しい仮面を取り付ける。身支度を終えた辺りで側で纏わりつく沃野、暇そうに壁に寄り掛かる旋風…。自由だな。
そんな中、腕を背中で組み美しい姿勢で佇んでいた水流が口を開いた。

「…ご主人様、発言よろしいでしょうか?」
「ん?どうした、許可なんて取らなくていいぞ。」

では、と続ける水流はあくまで礼儀正しい。そういえば火焔帰って来ないな…と思うが、今は水流の言葉を待ってみる。

「武器庫に置かれた警備兵が見当たりません…。それと気になるのが、全ての武器が眠っている状態である事。最後に、城内に魔物モンスターの気配が漂っております。」
「うえ~。マジかよshit!何で魔物なんか居やがるんだあ?」

旋風が大袈裟に肩を竦め、水流はそれには反応せず主だけを見つめる。「あれ?俺ちゃん、シカトされてね?」と首を傾げながら、ガスマスクの中でケラケラ笑っているので気にしていないだろう。

水流の疑問は最もだ。彼らにとって、国外へモンスター討伐に行き、国土を広げていくのが日課だったのだから、魔物が漂う城内はおかしい。
考えられるのは、サービス終了したゲーム内で活動を停止した門番や、NPC・武器が居ない事で、国外から魔物が侵入してしまった事だ。

そんな事を言う訳にもいかず、思い付いた内容を口にする。

「国内の点検を行う為に少しの間、国内の活動を停止させていたんだ。その間に入り込んだ…かもしれない。」
「そうなんだ!じゃあ、沃野がお掃除してくるよー。」

元気よく手を上げ跳ねながらアピールする様は可愛らしい。2つに束ねた髪が揺れ、あざとく映らないのは美少年ゆえなのか。

「有難いけど、火焔が戻るまで待ってよ…「我が主よ、今戻った。」…う?」

開かれていた部屋の入り口から、存在感増し増しで入ってくる美丈夫。

「…何だ、俺以外も目覚めさせたのか。まあ良い…それより報告だ。城内の塵は片付けたが、次は如何にする?」
「え?あ、ありがとう。てか、全部倒したの?!」

事もなげに頷くフレイムスタッフに驚きながら、何故か近付く距離に疑問に思う。声を掛けようと仮面越に相手を見上げれば、フードを軽く引かれて首筋に舌を這わされる。

…?!

あまりの衝撃に動けずに居ると、そのまま耳の下から鎖骨へと舌が移動し、厚く長い舌に舐め取られる。

「…ん、主人の汗は甘露の様だな。魔力の回復が完了した。」
「……そ、そっか?」

舐められた感触が肌に残り、顔色の変わらない火焔の様子に自分がおかしいのかと自問する。結構凄い事をされたのに、武器達はむしろ平常だ。「いいなー」と羨ましがる沃野の姿に遠い目となるのは許して欲しい。

そうだ、性的接触で回復するんだったな。うん、エロゲーだったよな。全然おかしく無いおかしく………って、もしかしてこれから、こんなんばっかじゃねえか?
スライムにやべえ事されたけど、人間の姿にされんのとは全然違うよな?!

此処に来て、やっと自身の貞操の危機を感じたのだった。





その後慌しくサブ武器を呼び出したり、国内の配置を考え直したり、武器達の強化に勤しむ為に色々と葛藤したり流されたするのは、また別のお話だ。


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