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びば学園生活5
学園都市ケラフに置いて、ネコ同士の過失は家の家格や当人同士のクラス、またハレムでの立ち位置にもよるらしい。例えば、俺の正室とルークの側室が揉めた場合、最終的にルークの側室が折れる必要がある。
また、ネコとタチでの過失の場合はネコに人権は無い。
タチ同士の場合は、家格よりも当人同士のクラスが優先される。流石に大国の王族となれば別だが。
道すがら世界の常識について色々と整理しておく。授業の合間の休み時間、自習に使う本が欲しいと思い図書室のある棟へと向かう。
ファビアンは着いてきたそうだったが、まだ指輪も渡していないし学生の間は自分の時間を大切にして欲しいと伝えたら、渋々了承してくれた。
それとたぶん、王族であるファビアンの夫になるからか、少し離れた距離をついてくる護衛が二人程。バレバレだが、気にしないことにした。学園内でタチに対して危害加える奴居ないと思うんだけど。
危害加えた場合、人生終わるだろうし。
近道である中庭を通り抜けようとした時、思ってもみない場面に出くわしてしまう。目に入ったのは、一糸纏わぬあられもない姿の少年達。
十人程の生徒達は靴以外何も身に付けておらず、中庭の芝生の上で四つん這いとなっていた。
いや、どういう状況?雰囲気的にやりたくてやってない…よな。
春先で全裸は寒いのか顔色は悪く震えているように見えるが、羞恥でか頬は赤く染まり皆俯いている。雰囲気としては普通科の生徒らしく、3人は中等部位の子も居た。
後ろを着いてくる護衛の一人、赤い髪の方を振り返る。
「…ちょっと何してるか聞いてきて。」
「畏まりました。」
使うのは俺の従者では無いが仕方ない。あの子達も俺が声を掛けるよりマシだと思うから。
戻ってきた護衛は、表情を一つも変えず説明を始めた。
「…あの者達は普通科Ⅳ組のコション様のハレムに入っている妾で、機嫌を損ねてしまい罰を受けているそうです。」
「…はあ?」
コション様のハレム、って言い方だからコションって奴が俺とルークの他に居るもう一人のタチか。D級で普通科だから、タチとしてはあまり質は良くない。…けど、ネコにとっては逆らえない。
つか、機嫌を損ねたからってハレムの子に学園内で素っ裸にするとか虐待じゃねーか。何様だよそいつ。
護衛の二人は興味無さそうだが、同じタチである自分にとってはドン引きものだ。驚いていないという事は、タチの行う折檻としては大したことないのか。もしかしたら自分の知らない場所で、父もハレムの者に手を上げていたとか?いやいや、それは無いと信じたい。
「…教師は止めないのか?」
「?学園の教師は全てネコですので、タチの御方が行う行為へ口出し致しません。」
おい、赤髪くん。何故そんなこと聞くの?って顔すんな。
思わず内心頭を抱え、溜め息を吐きそうになり我慢する。
「…学園の自治をする風紀委員とかは無いのか?」
「学園内で何か起こった場合、生徒中央会、風紀指導委員会も動きますが、タチの御方の行為への対処はありません。」
「なるほど…。」
この学園終わってんじゃねえか。無法地帯も甚だしい。世界の中央に位置して、王族や貴族が集う場所がこうなんだ…これが世界の常識か。
既に図書室へ行く気は薄れ、見てしまったあの子達をそのままに出来ない。俺がコションに一言言ってやるのは簡単だけど、その場で収まったとして性格は直る物ではない。
あーでも、見てらんないわ。
不思議そうな護衛達には何も言わず黙って踵を返し、普通科Ⅳ組へと早足で向かう。
貴族科と棟が別である普通科の雰囲気は、簡単に言うと悪く言えば騒がしく、良く言えば活気がある。
Ⅳ組の扉を躊躇無く開くと、視線をバシバシと浴びる。
何だろう…芸能人気分?こう見ると貴族科って弁えてくれてるんだな。貴族科はチラチラ、普通科はじろじろって感じ。
「…あー、コション君って居る?」
妙な熱気に包まれる教室内に放った言葉に、直ぐに飛んできたのは一人の生徒だ。ソバカスのある生徒は自分がコションの正室だと説明し、緊張気味に話を続ける。
「…その、コション様は仮眠室を御使用になられていまして。…も、申し訳ありません。」
はあー?ハレムの子にあんな事しておいて、自分はおせっせ最中てか?
此方の不機嫌が伝わったのか、相手の子はおろおろと謝罪を繰り返す。
「…じゃあ正室の君で良いや。俺、中庭使いたいんだけど、中庭に居る子達どかしてくれないか?」
「それは申し訳ございませんでした!直ぐに移動させますので。」
俺からって言えば、この子もコションに言いやすいだろう。急に倫理観の押し付けは難しいから、とりあえず方便ってことで。
大した時間も経たずに中庭から連れられる集団に、ふといくつかの嘲笑が聞こえる。衣服を身に付けていないのかと思ったが、その嘲笑の対象に気付いた。
獣人なのか紫髪から覗くピンと立っている獣耳、褐色の背中に刻まれた奴隷紋。聞くだけで気分の悪くなる言葉の数々。
何となく護衛二人を見てみれば、通常通り表情の無い赤髪くん。もう一人の青髪くんの瞳に映るのは蔑みだった。その瞳を見た瞬間、知らず体が動いていた。
去っていく集団に駆け寄り、着ていた制服のジャケットを脱いで紫髪の獣人の肩に掛けてやる。
「……!?」
「貸しとく。風邪引かないようにね。」
じゃ、とさっさと戻って行く俺の背中を見つめる2つの瞳には、気づく術は無かった。
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