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びば学園生活10
「…2年前にクラスを落とされた彼は、その翌年である昨年の秋頃にコション様の足を踏んだという理由で、二度目のクラスを落とされます。Eクラスの下はありませんので、奴隷身分となったそうです。」
獣人くん…いやチコの背景は酷いものだった。父は亡くなり産みの親は妾で財産は無い。成績が優秀だったおかけで国から補助金を貰い学園に入れたものの、 コションのハレムに入れられてから勝手な理由で奴隷身分に落とされた。
確かにタチには理由があれば、ネコのクラスを動かすことが出来る。ハレムの者が故意的にタチに傷を負わせた場合などだ。数少ないタチを守る権利だが、それを悪用するなんて…。
それにクラスを下げるのも、相手に父が居る場合は難しい。大体はクラスを下げる代わりに金銭を受け取り取り消すことが多い。
今回の場合、チコには助けてくれる父も財産も持たなかった。奴隷身分になった場合、名字を失い戸籍を失う。今後国からの補償も受けられない。
コションが居たら便利だからというだけで、許されてるのは学園の生徒である地位だけ。
そんな悲しすぎる人生有り得ないだろ。
説明を終えたジレスが扉へと下がり、アンリが飲み物を運んできた。いつの間にかファビアンが頼んでいたらしい。
幾つか並べられた種類から珈琲を選び、砂糖とミルクをたっぷり入れてかき混ぜる。糖分を補給して頭を整理したい。珈琲を一口飲み、何となく元気の無くなったファビアン、眉を顰めるキャベンディッシュを横目に確認する。
「…アンリ、ジレス、二人とも座ってくれ。」
扉の側で控える二人に向けて、ソファーの他にある椅子に座るよう促す。チコの話を聞いて、護衛といえどネコを立たせておくのすら嫌になってきた。
「…ですが、そうしますとシュタルト様を直ぐお守り出来ません。」
そう返したのはアンリの方だ。ジレスの方は頷いて椅子に近付こうとしていたので、相方の反論に心底驚いているようだ。
アンリの反論に対し、俺が答える前にファビアンの叱責が飛ぶ。
「アンリ・フィッツ。アルフレッド様のお心遣いに口答えをするのか?お優しさに付け上がるとは無礼にも程がある。」
「…申し訳ございません。」
元々の主に叱られ、忠実な護衛は悲しげに膝を着き頭を下げる。
まてまてファビアン。アンリは至極普通の考えを言っただけだぞ?俺を思うあまり、護衛くん達と関係が悪くなったら不味い。
「…ファビアン、良い。気にしていない。」
「アルフレッド様!…申し訳ありません、差し出がましい真似を。」
大丈夫だよ、と頭をよしよしと撫でておく。キャベンディッシュの視線が痛いのは、呆れているからに違いない。それより、落ち込むアンリをフォローしないと。
ソファーから立ち上がり、アンリへと側へ近付く。 うつ向いた顔は泣きそうに見えて、原因であるアルフレッドの心が痛む。
「…アンリ、立ってくれ。」
「はい…。」
立たせた相手の背中に腕を回し、すっぽりと抱き締める。小柄なアンリはアルフレッドに覆い隠される形となる。驚いて何か言う背後はとりあえず気にせず、腕の中の反応を伺う。
「…俺の方が大きいだろ?」
「シュ、シュタシュタ…っシュタルト様!ど、どうかお離しを…………はうう…」
目を回し真っ赤な顔であわあわと手をばたつかせる様子は、普段の生真面目そうな姿とかけ離れたものだ。ゆっくり身体を離すと、「手を出して」と話し掛ける。息を整えながら手を差し出す相手の手に、自身の手を重ねる。
稽古や鍛練を行ってきたアンリの掌は硬くて傷痕も多い、だが重ねたアルフレッドの手より少し細くて小さい。
それを見て、ニッと口角を上げてアンリをじっと見つめる。
「…ほら、体も手も俺より小さい。君の事は信頼も信用もしている。だから、俺の事も信じて欲しい。俺だって、ネコを守るタチなのだから、君も頼ってくれ。」
「…………………………はい。」
熱に浮かされた様にアルフレッドを見上げるアンリは、時間をかけて頷く。 「いいこだ」と微笑み、アンリとジレスが座るのを見届け、自分もソファーへと戻る。
何となく拗ねている様に見えるファビアンが不思議だが、話を進めようと口を開いた。
「…小国で育った俺の素朴な疑問だ。奴隷からクラスを戻すのは可能なのか?」
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