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びば学園生活11
「…クラスを戻す、ですか。」
「ああ。…前例はあるのか?」
俺の質問にファビアンは考え込む素振りを見せる。小国で育った俺よりもジルックェンドで生活していたファビアンの方が、色々と詳しいと思っていたが。 考え込むファビアンから視線をずらし、キャベンディッシュへと目を向ける。
「キャベンディッシュはどうかな?」
「…前例は私の周囲だと聞きませんが、もしかすると中央機関に働きかけるのはどうでしょうか。」
中央機関…産まれた時のクラス決めを管理する場所。4大国が運営をサポートしているが、独立した機関だ。
キャベンディッシュの話しを詳しく聞くと、彼が奴隷落ちしたのはコションへの無礼が理由だが、ハレムから出た今ならコションとの関係は白紙に戻った。ならば、もう一度クラスを戻しても良いのではないかと。
勿論、中央機関への申し立てをするならば、父か代理として第1正室が行うのが望ましい。奴隷身分となったチコの産みの親は妾で、ハレムは既に無い。更に土地も財産も持たないEクラス。そっぽを向かれるのが落ちだ。
思案していたファビアンが口を開く。
「…または、乱暴ですが金銭で身分を買うという手段ですね。」
「ああ、なるほど。」
「…うん?」
ファビアンの提案に同意し頷くキャベンディッシュ。あまりピンとこないアルフレッドが首を傾げると、「説明不足ですみません」とファビアンが詳しく話しをする。
「御存じかと思いますが、国に属さない者は監査官が訪れない為、クラス外となります。」
「あー、砂漠の民や森の一族か。」
はい、とファビアンは頷く。その者達が何処かの国で仕事をする場合、クラス外…つまり奴隷として扱われてしまう。その前に自ら中央機関へ行き、大金を叩いてEクラスを買うのだ。
それが適応されるなら、チコがEクラスへ上がれるのは可能。どこの世界も金って訳ね。
せちがらーいと思いながら、珈琲をこくこくと飲む。どうせなら、元のDクラスに戻してあげたいが。
「…元は私が庇護しようとした者です。私の財産を使い、中央機関に話しをしてせめてEクラスにしてやろうと思います。」
「んー?あー、良い良い。」
真剣な口調でチコを助けるのだと語るキャベンディッシュに、ヒラヒラと手を振って遮る。
「乗り掛かった船だし、俺がどうにかするよ。」
「…え?」
「ああ、勿論あの子が意識を取り戻してからだ。起きたらどうしたいかを聞いて、望むなら中央機関に行ってみる。」
至極当然だと言ってみせる。チコの生い立ちを聞いて、キャベンディッシュだけに対応を任せる訳は無い。自分の特権を良い意味で活用出来るなら、使わないなんて勿体ないのだから。
あれ?何でこんなに静かなんだ?
何だか誇らしげに微笑むファビアンは良く分からないが、キャベンディッシュは目を丸くして口を開けたまま固まってしまった。変なことを言ったつもりは無いんだけどな。
「…でしたら、その時は私もお連れ下さい。彼を見守る義務がございます。」
持ち直した相手の言葉に納得し了承を返そうとすると、我が正室からやんわりと訂正が入る。
「アルフレッド様。ハレムに入れていない方をお連れするのは、あらぬ誤解を起こすかと…。」
「ああ、そうか。じゃあ、俺が1人で動いた方が良いのか。…キャベンディッシュ、その時は責任持って動くから、安心してくれ。勿論経緯は誰かに伝えさせる。」
「…はい、承知致しました。」
胸に手をあて礼をする相手の表情は見えないが、納得してくれると助かる。責任感のある人だからなあ。話しもまとまった所で、そろそろ解散しようかと声を掛けソファーから立ち上がる。
素早く扉を開くジレス、アンリは既に廊下で待機していた。窓から見える夕日に、時間が経っていたことを実感させられる。
俺、ファビアン、キャベンディッシュ…最後にジレスが扉を閉めて廊下へと出る。またチコのことで進展があれば、護衛の二人を通して情報を交換しあおうと言う。ジレスとアンリは騎士科なので、間に居ると便利だろう。
挨拶替わりに差し出した手は、思っていたよりも強く握られて…そのまま離れなかった。
「………………これで、もう会えないのですか?」
「キャベンディッシュ…?」
ポツリと零れた囁き。離れない手を快く思わないファビアンが一歩踏み出すが、アルフレッドの制止により止める。自分より高い背で、年上の腕も立つだろう騎士科の人。それなのに、今の雰囲気は置いていかれて泣きそうな小動物に見えてしまった。
「ネコだというのに、はしたない事を申し上げます。それでも、最後にどうか伝える機会を頂きたいのです!」
「!……………うん、分かった。」
きゅっと唇を噛み締めるファビアンに先に帰って欲しいと告げる。アンリとジレスはなるべく離れているように、と。素直に頷いてくれたファビアンだが、傷付いたように見えたのは勘違いでは無いと思う。戻ったら直ぐ会わないと。
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