異世界には男しかいないカッコワライ

由紀

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たのしい休日2

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シュメル課長と呼ばれた男は、アルフレッドに丸テーブルの前にある椅子へと席を勧めてから、案内役へと不快げに目を向ける。

「…君、私はタチの彼だけを通す様にと言わなかったかね?」
「も、申し訳ございません!その、護衛の方だけなら良いかと…受付の方が…。」

案内役が申し訳無さそうに頭を下げ、シュメルは「まったくあいつは…」と一人ごち深い溜め息を吐く。あの受付の一人が、シュメルのハレムの者なのかと察する。
もういい、と案内役を部屋から追い払った男は、アルフレッドへと目を向けて自らも椅子に腰を下ろした。

「…私はイサーク・シュメル。このN.C課で纏め役を担っている者だ。好きに呼んでくれて構わないよ。…で、君が…」
「ああ、アルフレッド・シュタルトといいます。後ろに居るのが、護衛のジレス・フィッツです。」
「…そうかい。そうそう、私はB級で君のクラスはS級だと聞いた。年上だからと気にせず、砕けて話してくれたら嬉しいよ。」

では、そうさせて貰います。と頷く。タチ同士の場合はあまり敬語を使い合わないのは分かるが、父と同じ年頃の相手には中々難しい。頷いては置くが、急にフランクにはいけないのが普通だ。
ふとシュメルの目線がジレスに移り「その子の口は固いかね?」と疑問を口にする。

…どういう意味だ?相手の意図は掴めないが、素直にジレスの性格を伝えておこう。

「…ジレスは真面目で礼儀正しく、よく弁えている性質だと思うので大丈夫かと。」

なら良い、とシュメルは納得したようだ。元々アルフレッドを個別に呼んだというのも、S級であるタチと話してみたかったのだと言う。

「…それはそうだろう?私が生きている間に、S級が産まれるとは思っていなかったからね。中央機関に勤める者として、興味が沸かない筈が無い。」
「そうでしたか。…いえ、それよりも此方も大切な用件がありまして。」

至極楽しげに生き生きと語る相手へ、何故だか頭が痛くなる。まるで新しい玩具を見たいという子どもや、観劇に集まる一般客の様に見えたからだ。
そんな興味本位に付き合ってやるつもりは無いので、さっさとチコのことを切り出した。
他のタチから譲り受けたネコだが、以前の些細な過ちでクラスを落とされていた。自分のハレムに入れるにあたり、以前のクラスを戻して欲しい…。

そこまで説明を終えたのだが、相手はつまらなそうに本棚の背表紙を眺めたり、丸眼鏡を拭き直している。アルフレッドが黙って反応を待っていると、シュメルは深々と息を吐いて丸テーブルに肘を置く。

「…ああ、直ぐにクラスを戻そうとも。」
「本当ですか?それは、有り難うございます。」

あまりにアッサリとした返事に驚くが、チコのクラスが戻るなら何でも良い。何か物か金銭を要求されるかと思っていたが、それも無さそうな様子に正直拍子抜けしていた。
これで用も無いと椅子から立ち上がろうとするのを、シュメルから呼び止められる。

「…シュタルト君、君は甘いねえ。君の様に甘いタチが、ネコを付け上がらせるとは思わないのかね?」
「………………はい?」

頭を振って、さも嘆かわしいと言わんばかりだ。相手の言い方には、言外にネコへの侮蔑も含み端から見下しているのだと分かる。
シュメルが言うには、ネコはタチに寄生するだけの生き物だと。此方が種付けしてやり、やっと存在意義を見つける下らない生物。

「…思わないかい?ただ一人のタチが抱えるには、ネコの数は多すぎる。我々は一生ネコ共の相手をせねばならない。私など、愛すべき研究の時間を割いてまでもだ。」
「何が言いたいのですか…?」

気分が悪い。この男の言い方には、変えられないネコへの偏見。それでも、この世界のタチならば、きっと多くの者が思っている常識なのだ。後ろに居るジレスがどう聞いているかと思うと、寒気すらする。

「…タチは増やせない。だが、ネコを減らしてタチの数に合わせるのはどうだろうと。」

間引きだよ…とシュメルは笑う。

「私の子はタチが二人、ネコは三人だ。」

一つのハレムに産まれるとしたら、あまりにも少なすぎる人数。タチかネコは産まれるまで分からない。間引き、という不穏な言葉に全身が総毛立つ。

「…あんた、何をしたんだ。」
「?…言っただろう。間引きだよ。中央機関では、タチが産まれやすくなる薬を開発しているが、まだまだ時間はかかる。私もネコを増やさない努力をするべきだとね。産まれてネコだと決まった子で、クラスが低い子、身体の弱い子、欠陥のある子は間引いたまでだ。」

にこやかに笑みを浮かべるシュメルは、今では私の考えに賛同してくれている者にも協力して貰っていると続けた。

「…アンタは、間違ってる。捨てて良い命なんてある訳ないだろ!」

込み上げる吐き気を堪える。想像したく無いが、目の前の男は自分の子を選んで命を奪っていたわけだ。こんな奴に何を言っても無駄だと分かっていながら、自分の思いは口から出ていった。
シュメルの表情の変化は無く、凝り固まった固定観念は変わらない。

「じゃあ、君は全部のネコを救えるのかい?D級以下で、ハレムに入れず、大した能力の無いネコの人生なんてぞっとしない。ならば、初めから無い方が良い。」

この男とは分かり合えない。「失礼する」とだけ言い捨て、開けられた扉から出ていく。後ろから聞こえる「いつでも来て良いよ」との声には答えるつもりは無い。







部屋を出て、振り返ったジレスが此方を心配そうに見ているのに気づく。見下ろした自分の手が少し震えていた。

「…ジレス。俺の顔、どうなってる?」
「顔色が…少し血の気が引いていらっしゃるかと。」

言い淀んだ様子を見るに、相当酷い有り様だろう。エドウィン達の待つ場所に戻る気も起きず、壁に寄りかかり気分を落ち着かせようと目を閉じる。

「…………………ます。」

僅かに聞こえる声に目を開けると、ジレスの両手が震えていた俺の手を包んでくれていた。強く握られた手から感じる暖かさは、俺を元気付けようとしてくれているのか。

「…シュタルト様と出会った者は、皆救われております。ファビアン様は毎日幸せそうです…キャベンディッシュ様が笑っているなんて、今でも信じられません。チコ…君もクラスを取り戻せました。…ですから…」

一生懸命に言い募る姿に胸の辺りが暖かくなる。生真面目なジレスが、俺を慰めようと頑張ってくれている。あんな話を聞いたジレスこそ嫌だっただろうに、俺って駄目だな。

「…ありがとう。」


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