異世界には男しかいないカッコワライ

由紀

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アンリ・フィッツ視点



アンリは可愛いな。
ジレス?ジレスは綺麗と言えるな。

父から掛けられた言葉を思い出す。幼い頃から自分は周囲に可愛がられたのを感じていた。愛嬌があって、明るくて小柄で可愛らしい…それが私の印象だったらしい。
側室であった産みの親も、おっとりとしてフィッツ家の者にしては柔らかい雰囲気の人で。

努力しなくてもある程度は出来たし、人に嫌われ難い性格だと言われた。それを咎めたのが、9つ上の兄である一族の三男のタチ。既にジルックェンド連合国で、竜騎士団に入隊している方だ。

「うかうかしていると、お前はそこらのネコと変わらなくなるぞ。」
「!そんな。でもケール兄上、私は鍛練を怠っておりません。将来はフィッツ騎士団に名を連ねたいと思っております。」

兄の呆れた溜め息が耳に痛い。何となくは気付いていた。ただ、好ましく扱われ、可愛いとしか言われない自分。
先日王弟殿下に呼び出され、御子息のファビアン殿下付きをするよう命じられた。名誉であり光栄な事に違いないのに、嬉しく無いのは「護衛兼遊び相手」としてだからだ。

「お前が悪い子では無いのは分かっている。でも、国に仕える騎士の才能は無い。どちらかといえば、個人の側仕えには向いてるんじゃないか?」
「……………」

私は思ったことを口に出したり顔に出やすい性質で、それに小柄で騎士としての威厳が足りない。父や産みの親からは、どなたか良いタチに見初められて側室となってしまえば良いと言われている。
側室は家内を任されるので、外に出て働く時間を長く割く必要が無い。ハレムに入って側室になれば、騎士になる事にこだわらなくても良い…周囲はそう言う。

…ジレスは良いなあ。一族の中で、妾の子であり同じ年のネコを思う。美しい青い髪に、すらりと伸びた手足、常に冷静に判断し素直で思慮深い。
王弟殿下からも、ジレスの名前が直ぐに上がっていた。本人の性格上遠慮するだろうから、私から誘って欲しいとも。

「…ケール兄上も、ジレスの方が良いと仰るのですか?」
「同じ一族同士で優劣はつけないが、単に向き不向きの問題だろ。そうだな、ジレスは妾の子というのが勿体ない程努力家だが。」

むう、と頬を膨らませる。「そういう所だぞ」と兄に苦笑されるが、機嫌は戻らない。私だって、ファビアン殿下に実力を示して将来につなげるんだから。







気が進まないが、ジレスの元に行きファビアン殿下に仕えることを話し始める。感情をあまり表に出さないジレスは鍛練する手を止めて、静かに聞いてくれていた。

「…アンリはオレと一緒で嫌じゃないのか?」
「え?どういうこと?」

何となく不安そうな相手の言葉の意味が分からない。嫌な筈が無い。剣の腕も優秀で、誠実で騎士としての才能もある。…私こそ、君と仕事が出来るのは嬉しいよ。そう答えると、ジレスの口元に安堵した笑みが浮かんだ。

「ありがとう。やはり、アンリは良いネコだな。」

ジレスの言葉に自分自身を恥じた。勝手に妬んで嫉妬していたアンリの心情など知る筈も無いだろうが、産まれが妾腹なだけで卑下して努力を怠らず才能にも頼らず、相手の良い所をしっかりと認める。
自分とジレスの決定的な違いを知ってしまった。私も今の自分を諦めない、きっと努力を続けて高みを目指そうと胸に刻んだのだ。

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