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シュタルト兄弟参るⅣ
「…みみみ…ミカエル・シュタルト、です。兄とは同じ産みの親を持ち、実家近くの中等学校に通ってます。あの、よろしくお願い致します!」
緊張しつつもなんとか自己紹介を終えたミカエルは、きっと蔑みや嘲りを受けると思っていた。超絶美少年なラティーフ・シャヒーンの案内で無事に兄と会えたのは二時間前。
兄の寮の自室のベッドに眠る弟の姿に安堵し、みっともなく涙を流したのが今は恥ずかしい。
ミカエルが落ち着いた頃、アルフレッドの計らいでハレムの者が集められた。「絶対場違いだから嫌ー」と叫んだミカエルに対し、兄のアルフレッドは「絶対大丈夫だから」と軽い物だった。
未だに眠る末弟は寝かせたままで、集まったハレムの者達へ挨拶を始めたのだ。
「よろしくお願いしますね。」と微笑んだのは、絹の様な黒髪の傾城級。第1正室のファビアン・デルヴォーの美しさは際立っていた。
うわあああ。可愛い!綺麗!ええ!?兄さんの正室だから、私にとっては義兄だよね。同じネコとは思えないよ…。
「…緊張しているのかな?大丈夫ですよ、アルフレッド様の可愛いらしい弟君に会えて、とても嬉しいのですから。」
「っは、は、ひゃい…。」
ファビアンの言葉は本心からで、タチの同腹の兄弟は重く見られる。外見もアルフレッドに似通った色と雰囲気、素直そうな気質に好感を持つには充分だった。
「ありがとうございます!えっと、第1側室のラティーフさん、第2側室のジレスさん、第3側室のチコさん。そして、第1正室のファビアンさんに、第2正室のエドウィンさん…アルフレッド兄さ…ま、これで全員?」
「ああ。自慢のハレムだよ。」
アルフレッドの軽く放たれた言葉に、その場のネコは赤面したり俯いたり、はにかんだりと様々な反応を見せる。
実弟のミカエルは思う。故郷の田舎町に居た時は若いネコが居なかったから知らなかった。この優しい兄は、どうやらネコ泣かせかもしれない、と。
紹介も終えた所でお茶にしようかと立ち上がりかけた時、奥から元気な足音が聞こえてきた。
「アルくーん!ミカちゃーん!」
「グレイ、おはよう…じゃない、一人にさせてごめんねえ!」
「よく寝られたみたいだな。おはよう、グレイ。」
すっきりと昼寝から目覚め、勢い良くアルフレッドに飛び付く末っ子にミカエルは眉を下げる。言われたグレイソンはあどけなく「いいよー」と笑って、大好きな兄に頭を撫でられてご満悦だ。
「あ!そうだ、エドちゃんは?」
「ん?エドウィンならそこに…」
「…エドちゃん!」
兄の指し示す方を見るグレイソンの瞳には、穏やかに自分を見つめるネコが映った。素早く兄の膝から滑り降りた子どもが向かうのは、すっかり懐いた年上の騎士だ。
「エドちゃん、エドちゃん。ぼくね、エドちゃん好きなの!」
「っそうか。その、ありがとう。」
真っ直ぐな気持ちに少し気恥ずかしくなりながらも、エドウィンはしっかりとグレイソンを抱き上げ膝に乗せる。
そんな二人を見つめるアルフレッドは数度目を瞬かせた。
…グレイってわりと人見知りしないけど、こんなに懐くのも珍しいな。母性…じゃない、親性が強いのか、相性が良いのか何にせよ。
「エドウィンは良い“正室”になりそうだね。」
「!あ、ありがとう、ございます。」
「「「……………」」」
深く考えずに口にした内容だが、表情の変わらないネコ達に衝撃を与えていた。この場では一つ上というだけだが、年長者であるエドウィンすら喜びに口元を弛ませる程だ。
自分の夫からの誉め言葉としては、最上級の部類に入る。だよね、と振られたミカエルの方がその場の空気に気付いており、生きた心地がしなかった。
(兄さん!気付こうよこの空気に…!)
*
無事に弟と再会出来たミカエルは、兄アルフレッドの見送りでグレイソンを連れてワープゾーンまで向かう。のんびりと兄弟水入らずでの校内散策に自然と笑顔が浮かぶ。
というのも、一般的にネコからタチの兄弟へは特に親愛が強くなり、親子間でもそうだ。
「ねえ、そういえば兄さんは…「アルフレッド。」
穏やかな会話の最中に、後方から声が掛かる。振り向いた先にはアルフレッドにとっては唯一の対等な友人である。
「ルーク。…もう用事は終わったのか?」
「ああ。それで、もう一人の弟君とは会えたのかい?」
その疑問に直ぐ頷くと、何故かルークを見つめたまま動きを止める弟を手で指し示す。「二つ下で、同腹のミカエルだよ。」との紹介にも、当のミカエルは口を閉ざし俯いてしまう。
その反応に特に気分を害すことも無く、ルークは貴族的な微笑みを贈る。
「大人しい子なのかな?俺はルーク・フェルナンド。兄君の友人で親しくさせて貰っている、よろしく…ミカエル。」
「……はい。」
じゃあ、また…とにこやかにその場を去っていくルークの背中から目が離せない。グレイソンの手を繋ぐアルフレッドは、そんな弟の様子に大方を察した。
まあ、ルークなら悪くないか。ネコに手を上げないし、爽やか好青年なイケメンだし、同じタチから見ても優良物件だよな。
「…フェルナンド様………。」
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