異世界には男しかいないカッコワライ

由紀

文字の大きさ
58 / 129

びば学園生活27



リオネルが退出すると、従者達が先ほどの定位置へと戻っていた。自然に隣へ腰掛けるファビアンから、従者達へ細々と何やら指示が送られる。間もなく従者から手渡される膝掛けが、ファビアンの手からアルフレッドの膝に丁寧にかけられ、テーブルの上には温かなお茶が置かれた。

持ち上げたカップに口をつけ、頬に流れる艶やかな黒い髪に眼鏡越しの伏せる長い睫毛は、同じネコですら溜息物らしい。その磨き上げられた珠の肌に触れられるのは、この世界でただ一人だけ。

「アルフレッド様。」
「うん?」

お茶を一口口にしながらファビアンの横顔を何となしに眺めていれば、気付いた相手から微笑を返される。慈愛に満ちた笑みは、アルフレッドの思考力を鈍らせた。
あー、何でこんな美人なんだうちの正室つまは…。

「…私に何か仰りたい事はありますか?」

ファビアンの口調はあくまで平静だった。言葉を失うアルフレッドの顔から視線を戻し、もう一度カップに指を添える。
意味深に放たれた言葉に、混乱する脳内は正にお祭り状態。どんな意図なのか、何を聞きたいのか…。

何だ?何かしたか俺?ケールの事バレたとか…?まさかアンリかジレスから洩れた?…だよな、それしか思い当たらないし。いや、後は何だ?昨日、帰ってから体調不良じゃなくて酔ってエドウィンの所に泊まっちゃった事?エドウィン側から聞いたのかな、うわーそれだったらキツイよな。何やってんだコイツって呆れただろーな。うん、どれだ?マジわっかんねーわ。うう…何か気持ち悪くなってきた。

「…その、ごめん。」
「やはり、そうだったのですね。」

重苦しく感じた沈黙に耐え切れず、つい謝罪を口にしてしまうがファビアンの返答に確信する。想像よりも冷静な反応に、二日酔いの方が知られたのだと察した。

「あー、うん。」
「それなら、直ぐに会う日時を決めておきますね。」

会う日時?医者でも呼ぶって事かな。いやいや、もう大分身体も落ち着いたんだけどな。

「え…?わざわざ大丈夫だよ!」
「いえ、でも彼方から謝罪をしたいと言っておりますので。」

謝罪?待て、何か話がおかしくないか。

「何を口走ったのかは知りませんが、アルフレッド様が不快な思いをなさったのならば私も知らぬ振りは出来ません。」

そっちー!?ケールの事だったか!何か妙に冷静だったから、その事じゃないと思ってたけど。いや、でも手紙もまだ読み終わってないから、ちょっと待って貰わないと。それにこれはあくまでタチ同士の意地というか。う…でも、ファビアンはフィッツの主家だもんな。

「…分かった。でも、最終的にアンリの件は俺に任せて欲しい。確かに、フィッツ家についてはファビアンが責任を持つ事は分かっているけれど。」
「アルフレッド様。」
「うん。」

思い切って自分の気持ちを口にするが。ファビアンの表情が曇る。やはり、それは受け入れられない意見なのだと理解してしまう。
そう思った矢先、至極不思議そうにアルフレッドを見上げるファビアンの唇が動いた。

「何故アンリの話が出るのでしょう…もしや、何かアンリが粗相でも?」
「え…~っと?うん、アンリは何もしてないよ?うんうん。あー。それよりも、日時を決めるんだよな。」
「ええ。…早めにと言っていたので、数日以内で都合が良い時期を見計らいましょうか。」

ファビアン・デルヴォーは甘い人間では無い。何より社交界に身を置くネコの王族であり、今も脳内でアルフレッドから滑り落ちた言葉を組み立て、理解に努力していた。会話を止めて追求へ向かわないのは、ただアルフレッドへの想いに他ならない。

結局誰と会うんだ?でも、流れとして聞ける雰囲気じゃないな。無理矢理話進めちゃったけど、絶対ファビ怪しんでるって。
意味も無く愛想笑いを浮かべてみるが、愛しの正室からは曇りない瞳が向けられ眩しさに目を細める。

俺は一体誰と会うの?あ、手紙を読まないと。




感想 65

あなたにおすすめの小説

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ※第33話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

聞いてた話と何か違う!

きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。 生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!? 聞いてた話と何か違うんですけど! ※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。 他のサイトにも投稿しています。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

事なかれ主義の回廊

由紀菜
BL
大学生の藤咲啓嗣は通学中に事故に遭い、知らない世界で転生する。大貴族の次男ランバート=アルフレイドとして初等部入学前から人生をやり直し、学園で出会う無愛想で大人顔負けの魔法の実力者であるヨアゼルン=フィアラルドと親友になるが、彼に隠された力に翻弄され次々と襲ってくる災難に巻き込まれる。終いには、国家の存続を揺るがす大事件にまで発展することに・・・

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。