異世界には男しかいないカッコワライ

由紀

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いざバルディオス帝国IV






お断りされてしまった…?!

周囲の騒めきが耳に入る。ポカンと口を開けて此方を見つめる青年、眉を顰めて耳打ちし合う者、ネコよりもタチからの厳しい視線が刺さる。クラスが低い者から高い者へ無礼な振る舞いは言語両断。暗黙の了解ルールが崩されるに等しい。

試しにユミル王子に横目で視線を向けると、特に表情の変化は無い。感情を表に出さない王侯貴族としての礼儀が垣間見えて感心してしまうが、今はフレデリクの相手が優先された。

「…失礼、そろそろ晩餐会が始まりますので御着席お願い致します。」

後方からさり気無く掛かる執事の声に、軽く頷き腰を下ろす。フレデリクを横目に見ると、今にも飛び掛かってきそうな形相なので目を合わせない様にする。
手に触れる隣人からの指先の感触に視線を移すと「申し訳ありません…。」と囁き声が返された。

いやいや!ファビは悪く無いからね。悪いとしたら…俺。うん、気に入られなかった俺って事だよな。

開かれていた正面の扉に、煌びやかに着飾った騎士が左右に分かれて並ぶ。誰に合図されずとも自然と椅子から立ち上がる列席者達に、アルフレッドもそれに倣う。

「…これよりバルディオス帝国皇族方入場されます。」

皇族用テーブル近くで待機していた執事が声を張り上げ、会場脇の楽団が楽器を手に取り曲を奏で始めた。先ほどまでは談笑を遮らない穏やかな曲調だったが、今度は荘厳で華やかな曲調へと変わっていた。
迫力のある曲だな…確か、皇族が居る時だけにしか弾けないんだったか。

ゆったりとした老齢の動きとそれでいて威厳に満ちた人物の姿が見えると、目の前を通り過ぎるまで会場のタチは頭を下げネコは片膝を落として礼を取る。
先ほど声を上げた執事は、テーブル席へと着く人物一人ひとりの名を口にした。

「バルディオス帝国…オスカー・キケロ・バルディオス
皇帝陛下です。」
「…次に、バルディオス帝国皇帝第一正室…ソラリシア・バルディオス皇后陛下です。」

あれがバルディオスのトップ二人か…。
「次に………~~殿下です。」
ん?今度は他の正室か。なるほど、皇后の他は3人しか正室を置いて無いのかー。へえ、意外と少なくないか?いや、違うな…皇后並みの家柄を持っている3人を参加させたとか。

「…続いて、バルディオス帝国第一皇子…ルキウス・キケロ・バルディオス皇子殿下です。」
「次に、バルディオス帝国第一皇子殿下の夫君…ルーク・フェルナンド様です。」

皇帝皇后二人の入場は重々しい物だったが、今度は若く美しい二人の姿にパッと雰囲気が華やいだ。特に今回ルーク・フェルナンドは、初めて公式に姿を現した事も注目を集めているそうだ。
どの様な場所でもクラスの高いタチは貴重なのだ。勿論アルフレッド同様、若いネコから関心を持って視線を送られていた。

いやー凄いな。貴族出身って言ってたもんな。ぜんっぜん緊張見えないけど、俺が参加する必要あったのか?

そつなくこなす友人を見つめていると、気付いたのか微笑と会釈を返される。周囲の若いネコ達から甲高い悲鳴が聞こえた気がした。

「…やっぱルークって格好良いなー。」

思わず呟く言葉と、同腹の弟の顔が脳裏に過ぎる。ネコ同士は寵を競うと言うが…帝国の皇子と争うのは骨が折れるだろう。

皇族用のテーブル席に全員が揃うと、中央に立つ皇帝がグラスを手に取ると楽団の音楽が止まる。それと共に、客のさざめきも止み会場に静寂が訪れた。

「…本日、空を見上げただろうか。今宵を祝福する様な見事な三日月であった。古来より、バルディオスでは三日月の夜の出会いは、人を深く結びつけたと言う。大地の神テーラスが初めに産み出したのも月の神。太陽の輝きは繁栄を…月の輝きは親愛を…。皆々方、本日の夜会も月が更に輝く物となる事を祈ろう。…それでは、乾杯。」

皇帝の口上は威厳に満ちた雰囲気とは異なり、優しく温かい声音であった。後にエドウィンから聞いたのだが、皇帝の挨拶では必ず月の話が出るらしい。
全員がグラスを掲げ、一口口にしてから着席する。

腰を掛けると、至る所から楽しげな会話が耳に入る。皇族のテーブル席ではルークが客人と笑顔で談笑する姿を目にし、アルフレッドも視線を前方へと戻す。
朗らかに話しかけてくるユミルに笑みを返し、殺気をぶつけてくるフレデリクを極力視界に入れない努力をすることにした。



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