異世界には男しかいないカッコワライ

由紀

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続くな舞踏会







セカンドダンスが終わり、少し時間を置いてからハレムに所属しないネコのみが参加するダンスがあるらしい。

頑張ったチコの為に、それまでは休憩をしようと東側のコーナーへ向かう。道すがら、何度も呼び止められては挨拶を交わすが、長々拘束される事は無かった。
話の内容で多いのは、タチは自己紹介と側室の紹介。ネコ同士は、セカンドダンスの演奏についてやお互いの衣装の事。

軽食を楽しむコーナーに着き、丸テーブルを囲み椅子に腰掛ける前に近くの執事が声を掛けてくる。食べられない物があるか、アルコールの有無などを確認された。
明日も参加する為、アルコールは無しに。ラティーフのみ肉を控える事を伝えると、直ぐに執事は下がって行く。

とりとめない会話を楽しんでいると、少しだがチコの緊張も解れてきたらしく笑顔も増えてきた。右隣にはラティーフ、左隣にはジレス、目の前にはチコが腰掛けている。

立たせたままのアンリに申し訳無く思うが「騎士科の訓練に比べればむしろ楽な位です」と良い笑顔が返ってきた。大きく頷くジレスを目にし、自分は騎士科に入れないなーと思う。相変らず、ザッハーは徹底して輪に加わって来ない。

何が運ばれてくるかなー。

自分達の出番を終えた事で、大分気を抜いていた。軽食の前に執事が目の前に置いた飲み物は、バルディオス産の香草が使われた紅茶。のんびりと香りを楽しむのに集中する。

「…失礼、ご挨拶をしてもよろしいですか?」
「……ええ。」

気を抜いていた為に反応が遅れてしまった。今までと同様に挨拶のみかと思い、立ち上がるのを止めて会釈する。

…うっわ。振り過ぎじゃないか。

鼻をつく強い香水の匂いに顔を顰めそうになる。タチが苦手なチコは目を伏せたままで、ラティーフとジレスは見事にポーカーフェイスを貫いていた。

「…先ほどは、アーベンライン伯爵が失礼をしたと聞きましてな。彼らは私の懇意の者達で、代わりに謝罪に参りました。申し訳無い。」

丁寧に頭を下げて来るタチに「いえ」と返事を返す。
アーベンライン伯爵…?ああ、あの新興貴族の代表者だよな。
このタチが、何で謝ってくるんだ?

謝罪の後に始まる自己紹介で、直ぐに疑問が解消される事になる。

「…私はバイロン・ギー。公爵位を賜っております。バルディオス帝国の出身ですので、どうぞよしなに。」
「此方こそ。」

公爵…あの一団より高い爵位だな。もしや、新興貴族達のトップとかか?
相手の雰囲気は品が良いとは決して言えない風貌だが、自信に満ちているように見える。理由は分からないが、此方の名乗りは無く終えてしまいたい。
そう思うほど、受け付けない何かを感じた。

年齢は50~60歳程度だろうか。熊の様に濃い髭、恰幅の良い体型に燕尾服が合っておらず、腹がはち切れそうだ。汗を掻きやすいのか、額はシャンデリアの光を受けて照りが目立つ。
アルフレッドにとって、相手の見目よりも後ろに控える側室達の暗い表情が気になっていた。

「…美しい方々ですね。閣下の側室ですか?」
「ああ、そうです。半分は使い古していますが、一番新しいのは具合は悪く無いでしょうが。」

おもむろに指を指して、まるで持ってきた玩具の内容を伝えているかの様だ。上流階級はもう少し物言いは上品だが、公爵の態度はタチとして珍しく無い。
だが、それとこれとは別だ。一言物申しても構わないだろ?

少々冷静さを欠いた発言をしようとした。…が、公爵との間に割り込んできた人物に遮られてしまった。

「っ何故会話を楽しんでいる?このタチは無礼にもファビアンに求婚したんだぞ!」
「…は?フレデリク…殿下?」

思っても居ない人物に、公爵に湧き上がっていた怒りが鎮まる。息を荒げ眦を吊り上げた、今日は関わらずに過ごせると思って居たジルックェンドの王子。
目を点にするが、現れた王子の発言を思い返す。

「ファビ…アンに求婚をしていた?ギー公爵が?」
「そうだ!それも知らずのうのうと会話に興じるとは、無知にも程がある。」

マジかよ。
突然クラスの高い者の会話を遮り暴言を吐かれたのだが、気にせず爆弾発言へ興味を向ける。フレデリクの登場に固まって居た公爵も、会話の内容に思案していたようだ。

「…ファビアン?……ああ、デルヴォー家の子息の。確か、正室への入室をデルヴォー家に願ったものの、ハレムに入ったからと断りを入れられましたな。仕方無いので、その弟君を貰い受ける予定ですが。」
「貴様の様に分不相応な者がデルヴォー家に、ましてファビアンを望むなど恥を知れ!」
「ふむ。もしや、貴殿はファビアン殿の夫君ですか?」
「…っ。いずれファビアンの伴侶となる者だ!」

いや、ちょっと待て。

色々と初耳だったが、とりあえず声を荒げる一国の王子は衆目を集め始めていた。
視界に映るジレスとアンリの驚きに混じる呆れた視線、チコがポカンと口を開ける姿、ラティーフはティーカップの柄を見つめる事に徹していた。

はーい。俺がファビアンの夫です。
フレデリク王子ー、国の代表だよな?何やってんだよ。
いや、お前の伴侶にさせねーわ。
つか、ジルックェンドの王子が夜会で他国の者に怒鳴るな、喧嘩売んな。

現実離れした状況に、頭を抱えるのだった。







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