異世界には男しかいないカッコワライ

由紀

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続くよ舞踏会








定期的に鳴らされる城内の鐘の音が響く。
ハレムに入っていないネコのみのダンスが始まるらしい。あまり興味が持たれない時間かと思いきや、タチへのアピールの為に自身を磨き上げてきたネコも多いらしい。
ネコにとっては万が一にも機会を逃せない。

「じゃあ、見に行ってみようかな。」

ラティーフから、次のダンスの説明を受けて興味を持った。ラティーフもジレスも「見なくても大丈夫」といった雰囲気だったが…。
そういえば、柱の影でフレデリク王子と話し合いを続けるアンリを呼ぶべきか?ジレスに聞くと「放って置きましょう」と良い笑顔で返されたので、とりあえずダンスの見学に向かいかけ…うーん。

やはり心配なので頼りになるか不安だが、ザッハーに様子を見ている様に言っておく。何か変わった事が有れば、直ぐに呼ぶようにと命じた。
まあ、一先ずこれで良いか。

最初は、バルディオス帝国皇族から未成年の者が中央に集まる。楽団の曲が、皇族専用の物へと切り替わる。
産みの親の立場が重い者から、数人ずつ前に進み出て観衆に優雅なお辞儀をする。終わるごとに、盛大な拍手が会場に響き渡った。

順調に5番目となった際、観衆から感嘆の声が聞こえる。
年齢は学園ケラフで言えば、初等部五年~中等部一年程度だろう。並んだ三人の真ん中に居る人物は、美しさが際立っていた。
艶やかな青緑色の髪、アルフレッドには見えないが瞳は紅に輝く虹彩の奥は桃色の美しい瞳である。

…きれいな子だなー。家の3番目の弟位の年かな?

実家に居る腹違いの弟達を思い浮かべる。異性として見るにはまだ幼いが、美しさには妙に惹き寄せられた。

彼を含めた三人が礼をしてから、観衆の拍手の後に手を繋ぎ離れようと足を踏み出す。
特段気にしていなかったが、深く観察していたら中央の王子は、両側からしっかりと手を握られているのに気付けただろう。

彼らが離れた後、次に控える皇族が前に出る筈だった。
…が、中央の王子が両側に握られた手を離して立ち止まってしまう。

ん…?

騒めく観衆、特に上流貴族達から戸惑いを感じる。アルフレッドも行動の意味が分からず、此方に少し距離を取ったままのラティーフに聞いてみる。

「何故、あの殿下は動かないんだ?」
「…さあ?確か、第五皇子殿下だったかと。此処で止まる流れは、無い予定だったと思いますが。」

首を傾げるラティーフの髪先にさり気無く触れてみると、人前で観念したのか赤い顔で逃げずに耐えている様だ。嫌でも離れないで居てくれる側室に、少々悪戯心が沸き上がるのは秘密である。

~~♪……

楽団の奏でる曲が変化する。理由は簡単で、中央の第五皇子が手を上げて何か合図をしていたからだ。両側の皇子や、周囲の皇族が何か声を掛けているが、本人は全く居に介さず動き始めた。

第五皇子が動かす手の動きに合わせて、テンポの速い曲調となる。その場で軽やかにターンをしたと思えば、1人楽しげに踊りながら歌い始めた。
場面だけ見ると、シャンデリアの下で光り輝く妖精の様だった。バルディオスの紋章が描かれた装束のコートが翻り、歌声は声変わり前で子ども特有の可愛らしい物だが、よく通る心地よい声。

良い声だな…。
踊り子とはまた違い、生まれ持った品位を感じる踊りは自然と目が吸い寄せられる。あくまで、アルフレッドにとってはだ。

周囲の反応は別であった。一貫して視線を背けて、近くに居る者と会話を続ける者。あからさまに眉を顰め、他者と囁き合う者。上流階級はまだ良い、新興貴族などは馬鹿にした笑い声を隠せないでいた。
気になって皇帝の居る場所へ目を向けると、変わらず椅子に座り泰然とした皇帝。一人の皇后は顳顬を押さえ、侍従と何やら話し合っているようだ。

一言で言うなら騒然としていた。元々予定していなかったのは、誰の目にも明らかだった。つまり、あの第五皇子の独断。近くの皇族達は行動を止めたいらしいが、衆目も有り止められない。

一国の皇子として気が触れているとしか思えない状況だが、アルフレッドにはそこまで不快に思わなかった。
洗練された踊りと、この世界では新鮮に思えるアップテンポの歌とステップ。何より楽しそうで生き生きとした表情は、前世で『アイドル』と呼ばれた人々を思い起こさせる。

…気を抜いたら手拍子してしまいそうだ。

隣に居るラティーフもジレスも無表情を貫いているが、良い印象で無いのは確かだ。
別に第五皇子に関して興味がある訳では無い。彼を制御出来ない周りの責任もあるし、出席させてしまったのも皇帝含む上の判断なのだから。

呆れられて、嗤われて、陰口を叩かれて、溜息を吐かれて…。弟ミカエルよりも幼いネコが、公然で嘲られているのが気に食わない。誰か守ってやれよな。

あの皇子が気が済んだ時、周囲の反応は彼の見る世界とは別物だろう。そう思った時、自然と身体が動いていた。

「…旦那様?!」

1人踊る皇子の元に、進み出るこの場で最もクラスの高いタチ。変わらず歌い舞い続ける相手の目の前まで着くと、やっと目が合った。
パチリと瞬く紅い虹彩。

「わあ!貴方は不思議な色…。ガーネットとアメシストみたい。~♪…♫~」

思ったままを口にする第五皇子は、気にせずまた歌い出してしまう。
…何というか、面白い子だな。
うーん?どうすればこの皇子の世界に入れる?








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