異世界には男しかいないカッコワライ

由紀

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※ごばんめ








褐色で傷の無い肌。
黒くて艶やかな長い髪。
『練習台』では無い立場。
決まった時間に食事を摂れて、睡眠が摂れる。

いいなあ。
変わってくれないかな。
痛いな。
汚いな。
お腹空いたな。
やった!雨が降ったから水が飲めた。
止めて!痛い!『練習台』にしないで!

私の目は何処行ったの?
元が無ければ直せない。
何?死にたいの?
私は生きたい。死にたくない。
怖い
怖い
怖い
死にたくない。

良いなあ。何で私が『練習台』なの?
変わってよ。
同じ5番なの?ねえ、変わってよ。
そしたらね、また髪を伸ばすの。
毎日顔を洗って、体の傷も治すの。

他の仕事、私は何でも出来るよ。
痛いです!
止めて下さい。
お願い、これ以上やったら死んじゃうよ!
嫌だいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやっっっっ!死にたくない!

汚い?醜い?気持ち悪い?
何でそんな姿で生きたいって
死んだ方が楽だって?

確かにね、ただ怖いんだ。
死ぬのが怖いだけだよ。






綺麗なタチ。
優しい。
私に、笑い掛けてくれた。
なあに?嘘だって?
同じ『練習台』が睨んできた。
馬鹿な夢は見るなって?

アルさまは違う!
あの人は特別なんだ。

だって
臭いって言わなかった。
汚いって怒らなかった。
気持ち悪いって吐き捨てなかった。
私の事蹴らなかった。
殴らなかった。
切らなかった。
傷を抉らなかった。
髪を刻まなかった。

中身の無い瞳から、涙が溢れてくる。
身体中が痛くて
いつも痛くて
汚れて汚くて
同じネコなのに、
ネコから『練習台』に使われて

空腹で気持ち悪いのに
与えられる食事も吐いてしまう。
僅かな睡眠時間も
痛みと不快感で眠れない。

アルさま。
すき

ゴミみたいに蹴られた。
でも、
アルさまに会えるから平気。

『練習台』の時間、
もう道具を使ってしか触られない。
素手で触るのは汚いんだって。

もう永くは無いのだから、
死ぬ前に少しは役に立てと言われた。
廃棄物。
ゴミ屑。

笑ってくれた。
普通の人相手みたいに、
私に優しくしてくれた。

痛い。
苦しい。
気持ち悪い。
あれ?
何か変だ。体が変だ。

目がぼやけるなぁ。
視界が赤い。

アルさま。
すき。

また、明日あえる。
声が聴ける。
笑顔が見れる。

死にたくない。
アルさま。

すき…








『練習台の一人が死んだ?』
『…はい。元々弱っていましたが、陽が上った刻限に呼んでも応えぬと報告がありました。』
『そうか。いつも通りに処理しろ。』
『肯。』

普段と変わらぬ日常だった。
元々破棄する予定が早まっただけ。
それよりも、今後やらなければならない事が数多くあった。







『練習台』の1人がぼんやりと膝を抱えていた。

「だから言った。夢を見るなって。」

どうか死なせて下さい。
5番目は死んだ。
また新しい『練習台』の5番目が追加されるだろう。
9番目である自分も、きっと永く無い。

生きたいと言っていたフェム。
死にたいと願っている自分。
焼け爛れた顔の半分が引き攣って痛い。

フェムはここ半月程、食事が摂れて居なかった。
水も食べ物も吐き戻していた。
それが、昨日人質のタチと会って
少しだけ水を飲めていた筈だった。

試しに近くの器から水を飲み込む。
あっさりと喉を通っていく液体。

「何で、僕は飲めるんだよ…。」

何でも良い。
誰でも良い。
死なせてくれ。
死なせて
下さい。





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