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さて囚われ日和3
この場所に閉じ込められて一日は経っただろうか?
変わらない景色、窓すら無いので時間の感覚が掴めない。
変わった事といえば、両手の拘束が解かれて片足に鎖が付いた錠のみとなった事。
多少は自由?に動けるようになった。
ギー公爵は一度目覚めたが、状況を把握した後また眠りに着いた。曰く、やる事が無いかららしい。
ユミル王子はまだ目覚めない。
フレデリクだが、拘束が追加された。あまりに騒ぎ立てるので口枷を付けられてしまった。ご愁傷様。
足枷は外されたので、動くには不便は無いと思う。
此処で様子を見ているが、時間を置いて食事が2度与えられた。メニューは簡素な物。
排泄について最悪オムツか垂れ流しかと勘繰っていたが、部屋の隅に扉付きのトイレを見付けたので安堵した。
色々と考えたい所だが、考えが纏まらない。
…そう、何をどうにも風呂に入りたい!
夜会中だった為髪に付いたままの整髪料、身体に振りかけた香水。ダンスや緊張で汗もかいた。
贅沢は言わない。人質だからな!水で流すだけでも良い。
まあ、無理だよな。
『カノウダトオモイマス。スコシマテクダサイ。』
「え?あ、分かった。」
試しに身体を洗いたいと言ってみると、まさかの返答に一瞬呆けてしまう。
体感的に2日目。今回はフレデリクに奉仕していた顔に火傷痕があるネコが、抑制剤と共に水と食べ物を運んできてくれた。
昨日世話をしてくれたフェムと同じ姿。鉄製の首輪と傷だらけの裸体。言葉は片言だがジルックェンド語であった。
此処の者達は話せる言語が人によるのか、敢えて別々の言語なのかは分からない。
食事後に扉から戻ってきた火傷痕の人物、共に数名の黒ローブの者。
足枷を外され、唯一の扉へと誘導される。
驚愕に目を見開くフレデリクを尻目に出て行く。
背後の黒ローブの者、左右の黒ローブの者からナイフを向けられたまま歩く。妙な気を起こすなという事か。
小さなランタンを手に先導する火傷痕の者について行く。
場所の手掛かりが掴めるかとそっと周囲に目を向ける。しかし、道の幅すら掴めない薄暗さで早々に諦めた。
『コッチデス。』
立ち止まる相手の指し示す場所へ足を踏み入れる。
壁に等間隔の明かりが灯され、内部の構造が見えて来た。
床一面に貼られた滑らかな白石。その部屋の真ん中に鎮座する一般的なバスタブ。
あまりに取ってつけた様に感じた。此方が言ったから用意したのだろう。
うん。違和感しか無い。
ナイフを向けていた、3人の内2人がナイフを降ろして入口の外へ出る。火傷痕の者も出て行った。
1人が部屋に残ったのは監視の為の様だ。
何はともあれ、相手側も気が変わらない内に終えてしまおうと衣服を脱いでいく。
半分程お湯が張られたバスタブに手を伸ばす。
温度は少し温いが悪く無い、お湯は足しても良いのか?
そう聞こうと振り返れば、何故か衣服を脱いでいる監視役。晒される黒い髪と黒い瞳。腕に彫られた独特な刺青、褐色の肌の麗人。
「ナイ…っ!?」
ン…と呼び掛けようとするが、素早く口元を手で塞がれ頭を小さく左右に振られる。
知らない振りをして欲しいのか?
黙って頷くと、静かに口元から手を離される。
『カンシスルタメ、ユアミヲ手伝ウ。ダマアテ入レ。』
何度か聞いた彼独特のバルディオス語。口調は平坦な物だが、入口へ視線を滑らして此方に戻す。
この場から離れたとはいえ、入口には先ほどの監視役が控えていると伝えたいのだろう。
バスタブの前に置かれたバスチェアー代わりの木箱に座らされると、後ろから微温いお湯を頭からかけられた。
「…うっ。」
想像よりも丁寧に髪を濡らしていく手付きは優しく、足元に置かれていた小箱から石鹸の様な物を取り出す。
思ったよりちゃんと洗ってくれそうだなー。
水で流せればラッキーぐらいだったし。
ナインの手元に乗せた石鹸を泡立てる動きと同時に、アルフレッドの膝に何かが滑り落とされる。
目に入る片手に収まる程度の紙切れ。最小限の動きで後ろに目を向けると、僅かに頷いた気がした。
…これを見ろってことだな。
髪を洗われる振りで、頭を下げて紙切れに目を凝らす。
薄く小さな文字。一文字ず間隔を置いて読みづらくしてあるが、バルディオスの言語だと理解する。
【人 質 の 会 話 は 全 部 把 握 さ れ て い る 】
…マジか。
髪の泡だてが終わったのか、後ろから何度かお湯をかけられ石鹸を流して貰う。その過程で素早く紙切れを回収し、口に含んでしまう様子に驚いて思わず見つめる。
此方の反応など気にせず飲み込んだのか、喉が動く様は妙に手慣れているようだった。
何故、ナインはこんな重要な事を教えてくれたのか。
勿論どうやってか話は全て聞かれている以上、小声ですら問い掛けられない。
紙切れの内容は真実なのか?
ならば、何故教えてくれるのか?
味方なのか敵なのか?
『お風呂に入っても良い?』
『イイ。』
『本当なんだよな?』
バスタブの前で意味の無い繰り返しの質問。
ナインならば察してくれるのではと、真っ直ぐに目を合わせる。他の誰に聞こうとも信用出来ないと答えただろうが、夜会の2日目に「国に帰れ」と忠告して来た相手だ。
俺は信じてみたい。
『ソウダ。ホントノ事ダ。』
ゆっくりと首が傾いた。それと綺麗な瞳。
『分かった。ありがとう。』
微温い湯に浸かり、力の入ったままの身体で小さく息を洩らす。言動が把握されているならば、今後は様々に注意を払おうと心に決めるのだった。
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