119 / 129
※さて囚われ日和4
ぼんやり微温い湯に浸かっていると監視役としてなのか、ナインがバスタブへと足を入れてきた。
薄暗い浴室の中、ほのかな灯りで褐色の肌が何とも艶かしい。
伸ばしてきた手を眺めていれば、触れられる頬。
驚く此方を気にせず、指先が顎から首にと移動していく。濡れた唇が近づいてくる。
「…んっ」
重なる唇に抗うことも無く、柔らかな感触を楽しむ。目を閉じたナイン。唇の隙間から覗く赤い舌が此方の口内に侵入する。自然と絡み合う舌同士が、厭らしい音を響かせる。
どちらとも無い荒い呼吸が聞こえ始めた頃、ナインの指先が此方の手に触れた。
口付けに夢中になっていたアルフレッドを引き戻すのは、手の平をなぞる感覚。指でゆっくり同じ動きを繰り返している。
これは、何かの文字か?
舌を絡ませ合いながら、思案を続ける。
離れた唇を繋ぐ透明の一筋。情欲を煽る赤みの差した頬、意味あり気な視線に首を横に振る。
まだ、文字を理解していない。
でも、相手の意図は読める。性行為を盾に、何かを伝えようとしてくれているらしい。
…えーっと。何の字だ?動きに集中しろ。
うっ…エロ過ぎる。
こんな状況でだが、身体は勝手に興奮してきていた。
内心でハレムの者達に謝りつつも、芯を持ち上向く陰茎に気付き自嘲しそうだ。
指の動き…いや、何か擽ったいな。
待て待て。頑張ってくれてるんだ、集中しろ。
バルディオスっぽい気がする。
よし、一文字目は分かった。
繰り返してきた動きに一度頷き、今度は此方から口付ける。顎を掴み深く舌を絡ませた。
二人の息遣いと水音が響く中、少し強めに胸元を押されて抵抗を示される。「ごめん」と慌てて唇を離すと、肩で息をしながらキッと此方を睨んでくる。
え…可愛いな。
ナインは眉を吊り上げ怒ったまま、また手の平に文字を指で形作り始める。
微温いお湯の温度など気にならない程、相手の火照った顔と身体を眺める。指で文字を書くのに夢中で気付いていないようだが、胸の中心で色付く桃色を視界で堪能していたりする。
うんうん、絶景ぜっk…集中しろ俺!
文字を理解したら頷き、理解出来ていない時には頭を横に振りもう一度繰り返してもらう。
入口の見張りや監視している者へ誤魔化す手段として、触り合いをしながらそれを行っていく。
ふむ。大体分かったかも。
『おまえはれむのものがいる』
お前ハレムの者が居る。
え。それって。
ナインから手を離す。昂っていた身体の熱が、温度が下がった気がした。じっと此方を見つめる相手に、聞きたい事を声に出してはならないのだと思い出す。
ファビアンは居ないと言っていた。
エドウィン?ラティーフ?
人質として利用するなら、ジレスとチコじゃないよな。
そういえばネコの人質を分かっていなかった。
昨日世話をしに来た子に、もう一度聞いてみるか?
『手伝ってくれてありがとう、そろそろ上がるよ。』
『ワカッタ。』
バスタブから上がると、手触りの良くないタオルで身体を拭かれる。
「っ待った!自分で出来るから!」
『…ナニデ嫌ガテル?ダマアテ拭カレエロ。』
共通語が通じない事を忘れていた。
タオルを奪おうとするが、憮然と此方を見上げられる。拒んだ事で、無表情気味のナインの雰囲気が変化する。だが、流石にそこまでされるのは恥ずかしさがあった。
『自分で拭くから離してくれ。』
『サワグナ。ナニモシナイカラ、動クナイテル。』
あーもう!何か勘違いしてるのか?!
確かに、自分で自分の事をするタチは少ない。世話をされるのは当たり前だ。でも、俺は基本的に人の手は借りない。それが一般のネコの認識とズレるのだろう。
諦めて抵抗を止める。
丁寧に拭われる全身。終えるとその場で座らせられ、後ろから髪を拭かれていった。優しい手付きは、自分の状況が不思議に思える程。…因みに尻は割と痛い。
『オエタ。』
『ああ、ありがとう。』
感謝の言葉に反応は無く、服を着ようと立ち上がりかける。腕を引かれ、また床に引き戻された。うん?
振り返る間も無く、後ろから回された腕。後ろの首筋に埋められる顔の感触。唇の感触の柔らかさに心臓が跳ねる。
何も言わずに相手の様子を伺う。
ぐりぐりと顔を押し付けられる。一回、二回…と唇が首から耳へと押し付けられる。
まだ、伝えたい事があるのか?
背中に回された腕の力が強まり、耳の近くで息遣いを感じた。
『シヌノ…ダメ。』
「?!」
か細く吐き出された声。
驚く暇も無く、素早く立ち上がったナインは常と変わらぬ無表情だった。アルフレッドの衣服を手に取り、無言で着替えの手伝いを始めてしまう。
目を合わせようとするが、徹底して合わない視線。
『あの、』
『オエタ。牢ニモドル。』
さっさと入口へ向かう背中に、分かった…とだけ返す。
待機していた監視役が姿を現し、行きと同様に火傷痕のネコが先導する。暗闇の道、背後に居るだろうナインの態度を思い返す。
あの声だけは、本心かもと思う。
うん。…死なないように頑張るか。
元の場所に戻り、大人しく錠を繋がれる。
目で何やら訴えてくるフレデリクに気付かぬ振りで、監視役が去ったのを確認しておく。
うん?何か視線を感じるな。
側に居る火傷痕の子と目が合うついでに、柔らかい笑顔を意識して問いかける。
『そういえば、昨日来たフェムは次いつ来るんだ?』
『…っ。』
目を見開き一瞬言葉に詰まる相手。
次の瞬間には、感情の無い淡々とした口調で返してくる。
『モウコナイデス。』
『?そっか。』
役割が変わったのかな。深く追求せずに頷く。
この子の火傷痕や身体も痛々しいが、フェムの目玉が無いのも気になった。
もしもどうにか此処から出られたら、あの子だけでも一緒に連れ出せないかな。
あなたにおすすめの小説
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
聞いてた話と何か違う!
きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。
生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!?
聞いてた話と何か違うんですけど!
※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。
他のサイトにも投稿しています。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
事なかれ主義の回廊
由紀菜
BL
大学生の藤咲啓嗣は通学中に事故に遭い、知らない世界で転生する。大貴族の次男ランバート=アルフレイドとして初等部入学前から人生をやり直し、学園で出会う無愛想で大人顔負けの魔法の実力者であるヨアゼルン=フィアラルドと親友になるが、彼に隠された力に翻弄され次々と襲ってくる災難に巻き込まれる。終いには、国家の存続を揺るがす大事件にまで発展することに・・・
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。