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タイトル至上主義

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 この世には、「タイトル」と呼ばれる能力が渡されることがある。
 その能力はまるで、おとぎ話のような力を人の手に握らせることができる。
 
 タイトルについては、未だ詳細に解明されていない。ただいくつか分かっていることもある。
 何かを体験し、成功へと道を歩んだ時。その際に、タイトルはその者に渡されること。
 渡されたタイトルは千差万別。体験したもの。成功した時の状況。そして、タイトルを渡された者の素質。これらによって、タイトルの姿、形は変化する。
 渡されたタイトルは受け取るかを選択することができる。しかし、一度受け取ったタイトルは捨てられない。そして、一度受け取らなかったタイトルは二度と渡されることはない。
 
 タイトルは世界を大きく揺るがすほどの影響を与えた。それでも、人間は世界に適応するため、タイトル保持者に一定のランクを定めた。
 当初、ランクはタイトルの保持している数とその質を見て定められていた。
 多くのタイトルを保持している者。質の良いタイトルを保持している者。両方が評価されていた。
 どちらにしても、能力の幅が広い。より強い能力が使えるといった利点があったからだ。
 
 しかしある時に、タイトルについて更に分かったことがあった。
 それは、一人につき保持できるタイトルの数は十。手に入れられる力は、有限であること。
 
 その結果、質は良くないが保持している数だけは多かった者たちが蔑まされる対象へと大きく変わった。
 有限であるモノなら、少しでも良い方がいいという大衆の意見がそのような結果へと導いた。
 なにせ今まで、多くのタイトルを持っていた訳でも、質の良いタイトルを持っていた訳でもない者たち。その曖昧な層の者たちが、それを黙っている訳がなかったのだ。今まで低いランクに居た者たちが優越感を感じようとしたためだ。
 
 そして、蔑まされる対象の中に朝比奈あさひな 夕人ゆうとはいた。
 彼は、代々伝説的タイトルと言われる、最良のタイトルを保持した者を多く輩出してきた家系に生まれた。
 夕人は幼少期から多くのタイトルをいくつも手に入れていった。
 そのため、多くの者が彼に賞賛を送った。保持できる数に限りがあることを知るまでは。
 
 そんな彼とは対極の存在がいた。それが、指輪さしわ るな
 彼女は、代々質の悪いタイトルを保持した者を多く輩出してきた家系だった。
 月は幼少期、どうせ弱いタイトルを手に入れるだろうという考えから、周りから見捨てられている節があった。
 しかし、彼女が歴代でも類を見ない本当の伝説級タイトル。最上良のタイトルを手に入れたことで、周囲は一変した。

 これから起こる物語は、そんな正反対の二人が出会うことで始まる。
 この、「タイトル至上主義」の世界に反逆する物語は。
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