器用貧乏が生きるタイトル至上主義

文字の大きさ
12 / 18

同じ攻撃ばっかのお二人

しおりを挟む
 
「なんかあの二人ヒートアップしてるな」
「大丈夫か?」
「多分...」

 第二試合が始まり、闘技場の上には神崎と柳沢がいた。
 二人の様子を見ていると、互いに挑発し合い、歯止めがきかなくなってきているように見える。

「まぁ、あれでいて柳沢さんは戦略を建てることが得意ですから。何か手があるんですよ。...きっと」
「そうなのか?俺はてっきりその逆なのだと」
「確かに最初はそう反応するわな。あのタイトルを聞いたら」

 <無為無策むいむさく>。その名が意味するは、何も考えない。何の策もない。などといった戦略を建てることとは真逆のタイトルな気がする。
 俺が思っている力とはまた違うものなのだろうか。

「見てれば分かるさ。痛っつ」
「おっと悪い。もう少し我慢してくれ」

 俺は牧村が先程の試合で負った傷を手当していた。
 俺も傷を治す系のタイトルを手に入れようかな。今までは俺に仲間ができるとは考えたこともなかったし、俺自身に怪我を負わせられる存在がいないため、そういったタイトルは獲得するのを後にしていたからな。
 なんて、これで手に入るんだがな。

 ピコンッ!
 
『<人命救助じんめいきゅうじょ>のタイトルが渡されます。受け取りますか?』

 まさかの、運よく牧村の手当をするとタイトルが獲得できるとかいうウィンドウが出たんだよな。
 俺は<Yes>を押す。

『<人命救助>を保持しました。既存保持タイトルの影響で、<人命救助>は<医術師いじゅつし>に変化します』

 そんでもってのタイトル昇華。医師免許とか持ってないんだけど、最初からこんなタイトル貰っていいのか?
 ま、ラッキーと思っておこう。


 ♢


 牧村はこんな奴を相手に耐えてたの?!
 神崎の攻撃は実際に対面すると、想像以上に強力なことが分かった。
 避けても避けても、次々に攻撃は降り注がれ、少しでもかすれば確実にそれは痛手となる。
 緊張感の中での体は思うように動かすことが困難であり、それもまた私の足を引きずろうとする。
 それでも、私は闘技場の上で未だ逃げ続けることができていた。

「さっきの奴といい、お前といい。あんなに息巻いておいて結局は逃げるだけか?」
「ごちゃごちゃとうっさいわね!そんな相手に一発も当てることができないのはどこの誰かしら?」

 なんとか耐えることができているのは、やはり自身が持つ力のお陰だろう。
 <先見せんけん>。その名の通り、ほんの僅か数秒先の未来の光景を見ることができる。未来を変えるとかそんなことができるような大層な力はない。
 例え、相手の攻撃が次にどんな風に来るのかが分かったとしても、その対処は自分自身がしなければならない。要は、見えるだけ。
 だが、それだけでいい。その後の対処は他のタイトルで補えばいい。
 <暗殺者アサシン>。私の家系はタイトルという力が表れるまでは暗殺を生業としていた。
 その影響か、タイトルが表れた後、代々柳沢家の者はこのタイトルを必ず獲得してきた。もちろん、私自身も。
 このタイトルは身体能力を上げることに加え、五感が研ぎ澄まされることで、超人へと変化する。ただ、私自身がまだまだ未熟なせいで、相手を倒すまで自分で発した殺気で自分自身まで支配される。
 ゲームでいうところの、バーサーカーになるような状態に近い。これでは、全く違うタイトルを使っているようなものね。

 ドォン!!!

 神崎の攻撃を避けると、先程避けた場所と同じ場所に攻撃が入り、砂埃が舞う。
 一瞬自身の体が神崎の視界の中から消えた瞬間、私は腰にしまっておいたナイフを二本投げる。

 ヒュッ——

「ふっ...。っぶねぇな」
「ちっ...」

 一本目をぎりぎり避けた神崎に二本目のナイフが襲い掛かるが、黒い煙でナイフが弾かれてしまう。
 だけど、あの煙を使わせるのがこっちの最低目標だから全然大丈夫。

「...結構簡単に見せてくれるのね」
「以外とやるじゃねぇか。だが、所詮は雑魚は雑魚のままなんだよ!」

 ドォン!!!

「...減らず口が」

 とはいえ、このままでは牧村と同じ結果になりそうね。
 ただ彼の攻撃を避けていても、ナイフを投げるくらいじゃ勝てない。
 やっぱり、こっちも更にタイトルを使った方が良さそうね。

「<無為無策>」
「何をしたって意味はねぇぜ?!」
「あんたこそ、いい加減その変わり映えのしない攻撃をやめなさい!」

 神崎は牧村との時と同じように剣に力を溜め込み、強力な一撃を放つ。
 私には牧村のように剣を受け止め、跳ね返すことはできない。だけれど、その策。私も使わせてもらう。

 ドォン!!!

「はっ。お前にはさっきの奴と同じような芸当はできなかったみたいだな」

 ——

 辺りが静まり返る。
 そりゃあ、自分の視界から相手が消えれば、勝ったと確信してしまうだろう。
 だが、実際はただその言葉通りになっただけで、私を倒すことはできていない。

 ゆらっ...

「ッ!?」

 ヒュッ!

「っぶねぇ」

 避けられてしまった。しくじったな。

「まさか、あの一瞬で俺の背後に回っていたなんてな」
「...それでも、結局は不意をつく前にあなたのタイトルに気づかれてしまったようだけど」
「あぁ、もしものために俺の周囲にこの煙を張っておいて正解だったって訳だ」

 まったく、あのタイトルはなんなのよ。
 ただ、ひとつ分かったとすればあれはやっぱり防御系ってこと。
 ここませ派手に煽っているのに、使い方は必ず一定して自身の周囲のみ。
 どうやって攻略したらいいだろう。
 ん?でもそういえばさっき...。

「一か八か、牧村の策を使わせてもらうわよ」

 私は<先見>を利用して、神崎が確実に避けられない位置に数本のナイフを投げる。

「ちっ。いい加減その豆鉄砲やめやがれ!」

 神崎は、確実に避けられないことを感知すると、先程まで周囲一面に広げていた煙を自身の体へ巻きつけるように変化させる。
 そして、神崎は剣で弾く、避ける、煙で弾くの三つの動作をこなすことでナイフから逃げてみせた。
 やっぱり。あのタイトルの弱点は...。
 私はもう一度、ナイフを神崎に向けて放つ。

 カキンッ

 神崎は剣でナイフを弾く。

「ん。どこへ行った?」

 剣で弾いた時に生まれた一瞬。目を話した隙に私は神崎の背後を取る。
 煙は、神崎の周囲を舞う状態と、服のように纏う状態のどちらかでしか使用できない。
 そして、舞っている際は物体を通してしまうが、攻撃などの感知に特化できる。
 纏っている際は物体を通さず、防御性能が上がるが、感知能力が劣る。
 この二種類の形態があるタイトルなのだとすれば、私が背後に回った際に煙が纏っている状態なら気づかれることはない。
 牧村がやったのと同じように、数度同じ攻撃を繰り返すことで、必然的に次も同じ攻撃をするだろうという思考へ相手を誘導する。
 だから、神崎は私が次も同じようにナイフを投げると考えた結果、私を見失ってしまった。
 だけど、私には神崎相手では牧村と同じように負けてしまうだろう。
 牧村との試合の時も神崎の不意を突くことはできたが、倒すことはできなかった。
 だから、神崎が反撃する前に倒しにいく。
 
「はぁっ!」

 神崎が私の存在に気づき、後ろを振り返る瞬間を狙い、唯一煙が纏われていない目元を狙う。
 私が持つナイフの先と神崎の眼球が紙一重まで近づく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...