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夢の中にいた。
そこはコンクリートの建物で2畳ほどの広さに天井が見えないほど上は高く、やけに蒸し暑かった。果てのない空間から一本の紐に吊るされた白熱電球の薄暗いあかりが空間を照らしていた。奥に小さな鉄格子があった。覗いてはみたが、何も見えない暗闇であった。コンクリートの反射熱でうんざりしていたが、妙な懐かしさを感じた。この建物には見覚えがある。しかも僅かの間ではない。長い間ずっとここにいた気がした。そして私は夢に気が付いてから今まで正座をしていたことを知った。全身が緊張して強ばり、強迫観念に襲われている。また、暑くはあるが、汗をかいているのは顔だけで、自分の顔は赤くなっているであろうと思った。何時間が経過したであろうか、見渡しても出口らしきものは見当たらない。鉄格子はどうだろうか、外れる様子は微塵も感じないが、出られそうなところはここしか見当たらない。電球の紐から登ろうとも考えたが、どうにも強度が頼りない。熱で意識が朦朧とする中、鉄格子の奥から声が聞こえた。それは年寄りの男の声だ、そして力強い語りだ。だが何を言っているかはうまく聞き取れない。なんだ、何を言っている。だがその声を聞いていると妙に安心感が芽生えるのだ。しばらく声を聞いていたが、この語り口を知っていることを思い出した。その瞬間に無性にここを出るべきだと確信した。鉄格子の奥に尋ねた。「ここからはどうすれば出られるのですか。」今度は声がくっきりと聞こえた。その老人は、ここからはまだ出られない。出るには待つ必要があると言った。「そうですか、どれくらい待てば出られるのですか。」そうだな、あと三年はかかる。だがその間は私が何か話でもしよう。この狭い空間で話を聞いて3年間を過ごすなど耐えられない。だが他に3年間を乗り切る術がない。大人しく老人の話を聞くことにした。それからの老人の語り口は饒舌で、元気に溢れていた。そして何より言葉の一つひとつに希望を感じた。気づけば老人の話を聞き入っていた。特別面白いわけではない。だが、ひたすらに聴き続けることができた。どれくらい時間が過ぎただろうか。声が響き渡る空間に心地よさも覚えた頃。老人は突如、三年が経った。もうここから出られる。だから私の話はここで終わりだ。あまりの唐突さに動揺を隠せなかったが返答する間も無く既にコンクリートの空間は無くなっていた。日常に戻っていく刹那思い出した。先生だったのですね。
そこはコンクリートの建物で2畳ほどの広さに天井が見えないほど上は高く、やけに蒸し暑かった。果てのない空間から一本の紐に吊るされた白熱電球の薄暗いあかりが空間を照らしていた。奥に小さな鉄格子があった。覗いてはみたが、何も見えない暗闇であった。コンクリートの反射熱でうんざりしていたが、妙な懐かしさを感じた。この建物には見覚えがある。しかも僅かの間ではない。長い間ずっとここにいた気がした。そして私は夢に気が付いてから今まで正座をしていたことを知った。全身が緊張して強ばり、強迫観念に襲われている。また、暑くはあるが、汗をかいているのは顔だけで、自分の顔は赤くなっているであろうと思った。何時間が経過したであろうか、見渡しても出口らしきものは見当たらない。鉄格子はどうだろうか、外れる様子は微塵も感じないが、出られそうなところはここしか見当たらない。電球の紐から登ろうとも考えたが、どうにも強度が頼りない。熱で意識が朦朧とする中、鉄格子の奥から声が聞こえた。それは年寄りの男の声だ、そして力強い語りだ。だが何を言っているかはうまく聞き取れない。なんだ、何を言っている。だがその声を聞いていると妙に安心感が芽生えるのだ。しばらく声を聞いていたが、この語り口を知っていることを思い出した。その瞬間に無性にここを出るべきだと確信した。鉄格子の奥に尋ねた。「ここからはどうすれば出られるのですか。」今度は声がくっきりと聞こえた。その老人は、ここからはまだ出られない。出るには待つ必要があると言った。「そうですか、どれくらい待てば出られるのですか。」そうだな、あと三年はかかる。だがその間は私が何か話でもしよう。この狭い空間で話を聞いて3年間を過ごすなど耐えられない。だが他に3年間を乗り切る術がない。大人しく老人の話を聞くことにした。それからの老人の語り口は饒舌で、元気に溢れていた。そして何より言葉の一つひとつに希望を感じた。気づけば老人の話を聞き入っていた。特別面白いわけではない。だが、ひたすらに聴き続けることができた。どれくらい時間が過ぎただろうか。声が響き渡る空間に心地よさも覚えた頃。老人は突如、三年が経った。もうここから出られる。だから私の話はここで終わりだ。あまりの唐突さに動揺を隠せなかったが返答する間も無く既にコンクリートの空間は無くなっていた。日常に戻っていく刹那思い出した。先生だったのですね。
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