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第11話「他国からの使節と招かれた訪問」
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「シルヴィア、少し外の空気でも吸ったほうがいいんじゃない?」
セレナにそう声をかけられたのは、ロイ王子とのお茶会から数日後の朝だった。私はぼんやり窓の外を眺めていたが、彼女の言葉で思考を中断する。
「外……か。最近、家の中にこもりがちだったかも」
そう呟きながら、私はさほど気乗りしないままに立ち上がる。いつもは眠そうな目をさらにしょぼしょぼさせつつ、とりあえず廊下へと足を向けた。
「そうそう、久しぶりに庭でも歩いてみて。あと、お父様が呼んでたわよ。他国からの使節団が公爵家に来るとかで、あなたにも顔を出してほしいんですって」
「使節団……って、ロイ王子の国の人たち?」
セレナは軽く首を振る。
「さあ、詳細は聞いてないけど、どうも大事な客人みたい。お父様が珍しく気合い入れてるから、きっと外交的に重要なんでしょうね」
「ふうん……わかった。行ってみる」
私はゆるりと歩を進めて父の執務室へ向かう。ドアをノックして入ると、父・アーネストは書類の山を脇に置いて、少しほっとした顔をした。
「シルヴィア、来てくれたか。話は聞いたかもしれんが、近々うちにヴェルディーン王国の使節団が訪れる。ロイ王子も同行するそうだ」
「ロイ王子も……?」
その名前に胸が小さく高鳴るのを感じてしまう。あの日、宮殿で優しく外套をかけてくれた姿が脳裏に浮かび、頬が熱くなるのを自覚した。
「他国の要人が一緒だが、あちらはおまえの家柄に敬意を払っているらしい。おまえが同席してくれれば、グレイメリア家の印象が格段によくなる」
「私で役に立つなら……いいわ」
何せ最近は「悪役令嬢」という噂が強まる一方。このままだと公爵家にとってもマイナス。少しでも良い印象を与えられるなら協力しようと思う。
「助かる。恐らく2日後には来訪予定だ。準備を頼むぞ」
「……わかった」
承諾したものの、ロイ王子とまた会うとなると心がざわつく。公の場ではどうふるまえばいいのか。前回のように翻弄されるのは勘弁したいが……きっと彼は容赦しない。
部屋を出ると、アリスがちょうど控えていて、苦笑いを浮かべる。
「シルヴィアお嬢様、どうやらロイ王子とご一緒する機会が増えそうですね」
「……みたいね」
内心、嫌いじゃない。けれど気が楽でもない。私は曖昧な気持ちを抱えたまま自室に戻り、日程までの数日をそわそわと過ごすことになった。
そして迎えた当日。グレイメリア公爵家の広い応接間には、遠方からの使節たちとともに、ロイ王子も姿を見せた。父やセレナが笑顔で応対するなか、私は後ろに控えるように立っている。
「……お久しぶりです」
ロイ王子が隙を見て私に話しかけてきた。金色の瞳には、相変わらず遠慮のない光が宿っている。
「ええ。あれ以来……」
微妙に目を合わせづらくて、私は視線を少し逸らす。するとロイ王子は低い声で続けた。
「元気そうだな。……またあとで話したい。よいか?」
ドキリとしながら、私は無意識に頷く。この瞬間、私に選択権があるとは思えなかった。使節団の前でにこやかに笑う父とセレナの姿が、どうにも遠く感じる。きっと私の運命は、ロイ王子の存在によってまた大きく揺さぶられるに違いない。
外は柔らかな陽光が射し、桜色の花が咲き始めていた。人々が挨拶を交わすなか、私はやはりロイ王子の横顔から目が離せないでいた。
セレナにそう声をかけられたのは、ロイ王子とのお茶会から数日後の朝だった。私はぼんやり窓の外を眺めていたが、彼女の言葉で思考を中断する。
「外……か。最近、家の中にこもりがちだったかも」
そう呟きながら、私はさほど気乗りしないままに立ち上がる。いつもは眠そうな目をさらにしょぼしょぼさせつつ、とりあえず廊下へと足を向けた。
「そうそう、久しぶりに庭でも歩いてみて。あと、お父様が呼んでたわよ。他国からの使節団が公爵家に来るとかで、あなたにも顔を出してほしいんですって」
「使節団……って、ロイ王子の国の人たち?」
セレナは軽く首を振る。
「さあ、詳細は聞いてないけど、どうも大事な客人みたい。お父様が珍しく気合い入れてるから、きっと外交的に重要なんでしょうね」
「ふうん……わかった。行ってみる」
私はゆるりと歩を進めて父の執務室へ向かう。ドアをノックして入ると、父・アーネストは書類の山を脇に置いて、少しほっとした顔をした。
「シルヴィア、来てくれたか。話は聞いたかもしれんが、近々うちにヴェルディーン王国の使節団が訪れる。ロイ王子も同行するそうだ」
「ロイ王子も……?」
その名前に胸が小さく高鳴るのを感じてしまう。あの日、宮殿で優しく外套をかけてくれた姿が脳裏に浮かび、頬が熱くなるのを自覚した。
「他国の要人が一緒だが、あちらはおまえの家柄に敬意を払っているらしい。おまえが同席してくれれば、グレイメリア家の印象が格段によくなる」
「私で役に立つなら……いいわ」
何せ最近は「悪役令嬢」という噂が強まる一方。このままだと公爵家にとってもマイナス。少しでも良い印象を与えられるなら協力しようと思う。
「助かる。恐らく2日後には来訪予定だ。準備を頼むぞ」
「……わかった」
承諾したものの、ロイ王子とまた会うとなると心がざわつく。公の場ではどうふるまえばいいのか。前回のように翻弄されるのは勘弁したいが……きっと彼は容赦しない。
部屋を出ると、アリスがちょうど控えていて、苦笑いを浮かべる。
「シルヴィアお嬢様、どうやらロイ王子とご一緒する機会が増えそうですね」
「……みたいね」
内心、嫌いじゃない。けれど気が楽でもない。私は曖昧な気持ちを抱えたまま自室に戻り、日程までの数日をそわそわと過ごすことになった。
そして迎えた当日。グレイメリア公爵家の広い応接間には、遠方からの使節たちとともに、ロイ王子も姿を見せた。父やセレナが笑顔で応対するなか、私は後ろに控えるように立っている。
「……お久しぶりです」
ロイ王子が隙を見て私に話しかけてきた。金色の瞳には、相変わらず遠慮のない光が宿っている。
「ええ。あれ以来……」
微妙に目を合わせづらくて、私は視線を少し逸らす。するとロイ王子は低い声で続けた。
「元気そうだな。……またあとで話したい。よいか?」
ドキリとしながら、私は無意識に頷く。この瞬間、私に選択権があるとは思えなかった。使節団の前でにこやかに笑う父とセレナの姿が、どうにも遠く感じる。きっと私の運命は、ロイ王子の存在によってまた大きく揺さぶられるに違いない。
外は柔らかな陽光が射し、桜色の花が咲き始めていた。人々が挨拶を交わすなか、私はやはりロイ王子の横顔から目が離せないでいた。
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