【完結】【R18】断り続けた見合い『まさか17回目で捕まるなんて……』

えるろって

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第13話「思わぬ再会、意外と優しい眼差し」

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「また王宮か……」

ロイ王子が去った翌日、私は自室のソファで膝を抱え、ぽつりと呟いた。少し前までなら“わざわざ行くのは面倒”という気持ちが勝っていたはずなのに、今は複雑な期待と不安が入り混じっている。

「シルヴィア様、ご招待状が届きましたよ」

アリスが入室してきて、綺麗な封筒を差し出す。王宮の公印が押された正式なものだ。さすがに仕事が早いとしか言いようがない。

「ほんとにすぐ送ってきたんだ……」

そう呟きつつ、封を開いて中身を確認する。そこには“ロイ王子主催の晩餐会にぜひ来てほしい”という文面が記されていた。日取りは近く、しかも少人数制の特別な席らしい。

「晩餐会……今度は何人くらい来るんだろう」

「さあ、詳細は書いておりませんが、そう多くはないようですよ。プライベートに近い会とのことです」

プライベート……あのガーデンでのお茶会と同じような少人数なら、前回ほどは気を張らなくて済むかもしれない。私は微妙に安堵しながらも、深い溜め息をつく。

「それにしても、あの王子は積極的ね。お嬢様をどんどん引っ張り出すつもりみたい」

アリスの言葉に私は苦笑する。以前なら鬱陶しいと感じただろうが、今ではそうでもない自分がいる。ロイ王子の存在が私の中でじわじわ大きくなっているのだ。

「どうしようかな」

弱音交じりに言うと、アリスは穏やかな笑みを浮かべて首を傾げる。

「どうなさりたいですか?」

「それは……わからない。ただ、会ってみたい気持ちはある。何か言いたいことがあるとかじゃないけど、彼と話してると……」

言葉を探すがうまく出てこない。居心地が良いわけではないのに、気になる。不思議な魅力を持った人だと感じてしまう。

そして数日後、私は父の計らいで馬車に乗り、再び王宮の門をくぐった。晩餐会とはいえ、大規模ではないらしく、先日のように大勢の人影は見当たらない。

「ようこそ、シルヴィア嬢」

出迎えの人々が整列する中、ロイ王子はその中心に立っていた。金色の瞳が真っ直ぐこちらを捉えて離さない。

「お招きありがとうございます」

最小限の挨拶をする私に、王子は近づいてきて、わずかに笑みを湛える。

「礼儀正しいな。……だが、今日はもう少しだけ砕けた言葉で話してくれないか?」

「砕けた言葉……ですか?」

戸惑う私を見て、王子はゆっくりと頷く。

「そうだ。ここは俺のプライベートな空間に近い。周囲には信用できる者しかいない。気を遣わず、素のままで構わない。おまえがどんな言葉を使うのか知りたい」

「……恥ずかしいです」

正直に言うと、ロイ王子はさらに口元を緩める。

「そうか。なら、俺が誘導してやる。……まずは食事の場に移ろう。腹が減っては会話も続かない」

その遠慮のない言い回しに、私は思わず吹き出しそうになる。やはり王子と言っても、どこか庶民的なところがあるのかもしれない。意外と優しい眼差しの奥には、親しみのようなものも感じられる。

こうして、今宵の晩餐会が始まる。次第に距離が縮まっていくかのような彼との時間が、私の心をまた大きく揺さぶることになるとは予想もつかなかった。
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