【完結】【R18】断り続けた見合い『まさか17回目で捕まるなんて……』

えるろって

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第39話「友人たちの取り持ち、仲直りへの一歩」

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「シルヴィア、ちょっといい?」

翌朝、ぐっすり眠れたわけでもなくベッドから起き上がったところに、セレナが部屋に入ってきた。彼女は私のくすんだ表情を見るなり、心配そうな視線を投げかける。

「……どうしたの?」

「実は、ミハイルさんから手紙が来てるの。『ロイ王子とシルヴィアの間を取り持ちたいから、二人で話す場を設けたい』って」

「ミハイルが……」

驚きながらも、胸が少しだけ軽くなるのを感じた。王子の側近であるミハイルが動いてくれているということは、彼も王子の状態を気にしているのだろう。

「どうも、王子は今朝からずっと不機嫌で、誰とも口をまともに利いていないらしいの。宮廷内もピリピリしてるみたいでさ」

「……そっか」

やっぱり私とあんなふうに衝突したからかもしれない。セレナは私の手を取って、少し力を込めて握りしめる。

「このまま放っておくと、王子もあなたも傷ついたままになっちゃう。だからミハイルさんが『ちゃんと仲直りできる場を作りましょう』って言ってくれてるの」

「でも、王子は私に『婚約をやめてしまえ』とまで言ったよ……」

弱気な声が漏れる。セレナはすぐに首を横に振る。

「本心じゃないでしょう。ロイ王子があなたをどれだけ大事に思ってるか、今まで見てたらわかるじゃない。……ね、一度きちんと話してみなよ。怖くても、逃げるほうが後悔すると思う」

姉の言葉には説得力があった。ここで逃げてしまえば、本当に婚約は破談になるかもしれない。それを望んでいないのは私も同じだ。ミハイルが橋渡しをしてくれるなら、チャンスは大きい。

「……わかった。私も話したい。王子に伝えたいことがまだあるから」

「うん、それでいいの。とりあえずお昼過ぎに王宮の中庭で落ち合ってほしいって書いてあるわ」

そう言ってセレナは手紙を私に渡す。ミハイルの丁寧な筆跡で「お二人の落ち着いた会話の場を設けます」とあり、最後には「深くお付き合いしていくために、ぶつかり合いは避けられません。どうぞ踏み出してください」と綴られていた。

「……ミハイル、優しいね」

「ほんとそうね。早速準備しなくちゃ」

セレナは勢いよく部屋を出て行き、着替えなどの段取りをアリスに伝えているようだ。私はそれを背中で聞きながら、ギュッと手紙を握りしめる。

「王子……ちゃんと会ってくれるんだよね」

今度こそ、言葉にする覚悟を決めなくてはならない。恥ずかしさや遠慮ではなく、正直な私の想いを伝える。そう誓いながら、私は眠い頭を振り払い、そっと息を吐く。

まもなく始まる“仲直り”のための会話。そこにはきっと逃げ場などない。けれど、友人たち――セレナとミハイルの心遣いが私の背中を押してくれるなら、私はもう後ろを振り返るわけにはいかない。

「今度こそ、ちゃんと伝える……」

自分の声に言い聞かせるようにそうつぶやき、私は立ち上がった。鐘が鳴るころ、王宮の中庭でロイ王子と再会する。そのときこそ、勇気を振り絞って言葉を紡ぐのだ。
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