【完結】【R18】断り続けた見合い『まさか17回目で捕まるなんて……』

えるろって

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第41話「改めて向き合う、私と王子のスタートライン」

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「シルヴィア、こっちに来られるか」

ロイ王子の落ち着いた声が、中庭を吹き抜ける風の音とともに耳に届く。私と王子は先日の衝突を乗り越え、ようやく“本当の気持ち”を確かめ合った。それなのに、まだやるべきことは山積みのままだ。

「はい」

私がそっとうなずき、彼の手に導かれるように一歩を踏み出すと、王子は隣で目線を合わせてくれる。

「まずは、リリアンやノースバレー伯爵家に対する処遇。それからクレイン王国との縁組を推進したがっている勢力の説得も必要だ。……こないだ話したように、俺は本格的に動くつもりだが、おまえはどうしたい?」

「私は……私のできる範囲で協力したいです。ずっと王子に頼りっきりだったから、今度は私も前に出て戦います」

そう答えると、王子は満足そうに口角を上げる。

「よし。おまえがそう言ってくれるなら心強い。……ただし、危険な場面に飛び込むのは許さない。わかったな?」

「はい、わかってます」

その“危険な場面”というのが具体的に何かはわからないが、リリアンは引き続き陰謀を巡らせる可能性が高い。事態が大きくなれば、クレイン王国の使節団や国内の反対派から狙われることもあるかもしれない。

「公爵家のほうにも根回ししておく。おまえの父上が、『シルヴィアはもう自分の殻に閉じこもるつもりはない』と話してくれたそうだ」

「え……父が?」

驚く私に、王子は「そうだ」と頷く。

「おまえが“悪役令嬢”として噂されていた頃から、父君は何かと守ってくれていたみたいだな。噂を払拭するのは難しくても、せめて不利益を最小限に抑えようとしていたのだろう」

言われてみれば、父は私の勝手な縁談拒否を大目に見てくれていたし、表立って私を叱責するようなこともしてこなかった。自分の意思を尊重してくれていたのだ。今更ながらにその事実を思い出すと、胸が熱くなる。

「私、全然父に恩返しできてないかも」

「ならば、今のうちに結果を示してやれ。自分の力で“悪役”の汚名を晴らし、堂々と王太子妃へと歩む姿を見せるんだ」

王子の言うとおりだ。私が本気で変わる姿を見せれば、父に対しても姉に対しても、きっと“娘が成長した”と喜んでもらえるだろう。

「……はい、やってみます」

そこでふと、王子が私の方へ身を寄せてきた。その距離の近さに思わず胸が高鳴る。

「シルヴィア、おまえはまだ眠そうにも見えるが、しっかり目は覚めているか?」

「今は眠くなんてありません。大丈夫です」

「ならいい。……眠り姫みたいなおまえが、本気で戦う姿を見てみたいものだ」

「からかわないでください」

口ではそう言いながらも、私は王子の言葉にくすぐったい嬉しさを感じていた。いつも眠そうだと言われる私だけれど、自分の意志で行動しようと決めた今、少しは目が冴えているのかもしれない。

「時間が惜しい。早速アーネスト公爵と話し合おう。俺も一緒に行く」

そう宣言する王子の表情は、決意に満ちていた。私もその横顔を見つめ、心を一つにして歩き出す。ここからが新しいスタートライン――悪役令嬢という噂は過去のものにして、真っ当に生きる道を切り拓くために、私はもう一度自分の足で立つと誓った。
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