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最終話「大団円、ドS王子と眠そうな悪役令嬢の結婚」
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「シルヴィア、今日が俺たちの結婚式当日だ」
朝の光が差し込む王宮の礼拝堂。私は厳かな空気に包まれながら、ロイ王子と並んで祭壇の前に立っている。16回もの縁談を断り続け、“悪役令嬢”と呼ばれた私が、今こうして王子の隣に花嫁として立っているなんて、まるで夢のようだ。
「はい……なんだかまだ信じられません。眠くて夢を見てるんじゃないかって」
「馬鹿、寝言はあとで言え」
王子は笑い混じりに小声で突っ込みを入れつつ、私の手をぎゅっと握る。周囲には父やセレナ、アリスをはじめ多くの参列者たちが見守っている。陛下や王妃も姿を見せ、私たちの結婚を正式に認めるとのことで、大勢の祝福の声が湧き起こっていた。
「殿下とシルヴィア・グレイメリアの結婚を、ここに宣言いたします」
神官の厳かな声が礼拝堂に響き渡る。胸の奥がドキリと跳ね上がるが、王子の手が私を支えてくれている。かつては“ドS”と噂され、近づきがたい存在だったはずの王子。だけど、今の彼は誰よりも優しく、私のすべてを受け止めてくれる。
「シルヴィア、俺の妻になってくれてありがとう」
「こちらこそ、私を選んでくれてありがとう。……大好きです」
短い言葉を交わしたあと、祝福の拍手が一斉に鳴り始める。カラフルな花びらが空を舞い、ドレスの裾を彩る。セレナが「おめでとう!」と声をかけてくれ、父は涙を拭いながら微笑んでいる。アリスも笑顔で「よかったですね、お嬢様」と囁く。
「眠そうな悪役令嬢が、ドS王子の虜になった……か。最初の頃はおまえが逃げ回るかと思ったが、最後まで捕まえられてよかった」
王子がからかい半分に言うので、私は苦笑して答える。
「途中で自分から捕まりに行ったんですよ。あれだけ避けていたはずなのに、いつの間にか惹かれちゃって……」
「はは、俺もおまえに捕まえられたのかもしれない」
昔なら到底言えなかった甘い言葉を交わし合い、私たちは祝福の輪の中へと足を踏み入れる。参列者たちが一人ひとり手を伸ばし、祝辞を述べてくれる。どの顔も喜びに満ち溢れていて、胸がじんと熱くなる。
「さあ、新郎新婦のお二人はこれから祝宴にご移動を!」
司会役の声が響き、私と王子は腕を組んで祭壇から降りていく。外には大勢の民衆も集まっていて、私たちを見送るために音楽を奏でている。まるでおとぎ話のような光景だ。
「シルヴィア、もうひとつだけ言っておく。これからも俺は遠慮なくおまえを振り回すかもしれないから、覚悟しておけ」
「ふふ、覚悟してます。私も眠気に負けたりしますが、それでも受け止めてくださいね」
「もちろん。俺のものなんだから、当たり前だ」
最後までドSな物言いをしつつも、その瞳は確かな愛情で満ちている。私は深く息を吸い込み、その温もりを全身で感じながら歩き出す。悪役令嬢という噂を覆して、王子と結ばれたこの結末に、何の後悔もない。
「さあ、祝宴に行きましょうか。みんな待っているわ」
「……ああ、行こう」
私の手をしっかり握った王子が笑いかける。たくさんの障害や誤解を乗り越えて迎えたこの日こそが、本当の幸せの始まりなのだ。眠そうな私でも大丈夫。ドSな王子がそばにいてくれるなら、どんな瞬間も乗り越えられると信じている。
盛大な拍手と歓声を背に受けて、私たちは祝福の門をくぐる。黒髪の眠たげな悪役令嬢とドS王子の物語は、ここで大団円――だけど、私たちの新しい人生は、今まさに始まったばかりなのだ。
朝の光が差し込む王宮の礼拝堂。私は厳かな空気に包まれながら、ロイ王子と並んで祭壇の前に立っている。16回もの縁談を断り続け、“悪役令嬢”と呼ばれた私が、今こうして王子の隣に花嫁として立っているなんて、まるで夢のようだ。
「はい……なんだかまだ信じられません。眠くて夢を見てるんじゃないかって」
「馬鹿、寝言はあとで言え」
王子は笑い混じりに小声で突っ込みを入れつつ、私の手をぎゅっと握る。周囲には父やセレナ、アリスをはじめ多くの参列者たちが見守っている。陛下や王妃も姿を見せ、私たちの結婚を正式に認めるとのことで、大勢の祝福の声が湧き起こっていた。
「殿下とシルヴィア・グレイメリアの結婚を、ここに宣言いたします」
神官の厳かな声が礼拝堂に響き渡る。胸の奥がドキリと跳ね上がるが、王子の手が私を支えてくれている。かつては“ドS”と噂され、近づきがたい存在だったはずの王子。だけど、今の彼は誰よりも優しく、私のすべてを受け止めてくれる。
「シルヴィア、俺の妻になってくれてありがとう」
「こちらこそ、私を選んでくれてありがとう。……大好きです」
短い言葉を交わしたあと、祝福の拍手が一斉に鳴り始める。カラフルな花びらが空を舞い、ドレスの裾を彩る。セレナが「おめでとう!」と声をかけてくれ、父は涙を拭いながら微笑んでいる。アリスも笑顔で「よかったですね、お嬢様」と囁く。
「眠そうな悪役令嬢が、ドS王子の虜になった……か。最初の頃はおまえが逃げ回るかと思ったが、最後まで捕まえられてよかった」
王子がからかい半分に言うので、私は苦笑して答える。
「途中で自分から捕まりに行ったんですよ。あれだけ避けていたはずなのに、いつの間にか惹かれちゃって……」
「はは、俺もおまえに捕まえられたのかもしれない」
昔なら到底言えなかった甘い言葉を交わし合い、私たちは祝福の輪の中へと足を踏み入れる。参列者たちが一人ひとり手を伸ばし、祝辞を述べてくれる。どの顔も喜びに満ち溢れていて、胸がじんと熱くなる。
「さあ、新郎新婦のお二人はこれから祝宴にご移動を!」
司会役の声が響き、私と王子は腕を組んで祭壇から降りていく。外には大勢の民衆も集まっていて、私たちを見送るために音楽を奏でている。まるでおとぎ話のような光景だ。
「シルヴィア、もうひとつだけ言っておく。これからも俺は遠慮なくおまえを振り回すかもしれないから、覚悟しておけ」
「ふふ、覚悟してます。私も眠気に負けたりしますが、それでも受け止めてくださいね」
「もちろん。俺のものなんだから、当たり前だ」
最後までドSな物言いをしつつも、その瞳は確かな愛情で満ちている。私は深く息を吸い込み、その温もりを全身で感じながら歩き出す。悪役令嬢という噂を覆して、王子と結ばれたこの結末に、何の後悔もない。
「さあ、祝宴に行きましょうか。みんな待っているわ」
「……ああ、行こう」
私の手をしっかり握った王子が笑いかける。たくさんの障害や誤解を乗り越えて迎えたこの日こそが、本当の幸せの始まりなのだ。眠そうな私でも大丈夫。ドSな王子がそばにいてくれるなら、どんな瞬間も乗り越えられると信じている。
盛大な拍手と歓声を背に受けて、私たちは祝福の門をくぐる。黒髪の眠たげな悪役令嬢とドS王子の物語は、ここで大団円――だけど、私たちの新しい人生は、今まさに始まったばかりなのだ。
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