13 / 122
第13話
「ここに、僕を入れてもいいですか?」
「え、そ、こ…っあ!」
にゅるり、と透の人差指が胎内に入ってきた。異物感もなく、すんなりと入って、ナカを撫でる。知らない感覚に、胎内で鳥肌が立つようにざわめきたつ。
「や、やっ、と、るっ、だ、めえっ」
再びベッドに倒れ込み、シーツを握りしめる。にゅく、にゅく、と彼の指が出入りする。腹側を撫でるそれに、声が止まらず、内腿がずっと痙攣しているように震える。
「や、ああっ!」
急に爪先から頭の先まで、びりびりと痺れる。何かと視線を彼に向けると、妖艶に舌なめずりをする透がいた。見たことのない透の表情に、身体のナカが切なく絞られてしまった。
目が合うと、長い前髪をかき上げた透が、ぎらついた瞳を細めて笑んだ。
「ここ、先輩にきもちいとこ、ですね」
「や、そこ、だ、めっ、ああっ!」
気づけば胎内に挿入されている指が三本に増えていて、それらが器用にばらばらと蠢き、順番にナカのおかしくなるしこりを弾いた。その度に、背中を仰け反って、震える屹立から少量ずつ透明な液体を散らす。
「依織先輩、かわい…可愛いです」
「や、やだぁっ、とお、る、やめ、てっ」
シーツに爪を立てて快感を逃がそうとする。しかし、その刺激はセリフと共に、ぴたりと止む。
どうして、と透に視線を移すと、前髪の隙間から欲に濡れた瞳が見える。それだけで、ナカがきゅきゅ、と反応してしまう。
「な、んでぇ…、やぁ、んん…」
勝手に腰がくねってしまい、止まったままの指先がナカをかすめる。後ろに入っている指先の手首に両手で触れる。
「な、で、止める、のお…」
「だって、依織先輩がやめてって言ったじゃないですか」
いつもの笑顔と違って、意地悪に口角をあげる透に、唇を噛んで上目で見つめる。
「やめますか?」
僕が望むように、優しく笑って応えてくれていた透が、違う男に見える。
赤い唇の隙間から、きらり、と白く発達した八重歯が見えた。
(アルファだ…)
意識してしまうと、透のおひさまの匂いが、より果実のような深く重い甘美な香りへと替わり、僕を浸食する。その間もずっとナカは刺激が欲しくて締め続けている。
視線を彷徨わせてから、意を決して、彼を見上げる。小さく首をひねって、子供にうながすような笑みを浮かべている彼に、少し悔しさを感じながら、少しだけ首を横に振った。
「依織先輩、どうしたいの? やめる?」
「…やっ」
指を引き抜こうと動かした手首を力強く握りしめる。それから、唇を噛んで、舐めて、彼を見つめる。
「して…」
「ん?」
意地悪をされて、悔しさと恥ずかしさと、それを上回る陶酔的な悦への願望に涙が浮かんでくる。
震える吐息が自分でも驚くほど、熱かった。
「透、いっぱい、して…きもちく、して…」
絞り出した言葉が音となると同時に、ベッドに突き飛ばされる。後ろから、ずるり、と指が抜けてしまい、急いで彼の瞳を探す。
いつの間にか、制服のシャツを脱ぎ、スラックスも下着も脱ぎ捨てた彼は、ずっしりと重く、ぬらぬらと光る、僕とは全く違う大きさの屹立を僕の股間に押し当てた。
(こ、これが…僕の、ナカに…)
目を見開いて見つめたそれが、僕のものに頬ずりをするように擦り付けられて、会陰を少し押す。それだけで内臓をえぐられるような悦楽が全身を駆け巡る。
「依織先輩…、大好き」
眉を下げて、うっとりと囁いた彼は、唇を舐めながら、僕の後孔にそれを押し当てた。
シャツで隠されていた身体はしっかりと筋肉に包まれていて、重しのように僕に覆いかぶさる。その重みが心地よくて、急いで首に腕を巻き付けて、キスをした。睫毛が触れ合う距離で見つめ合いながら、たまらず言葉が漏れる。
「僕も、透のこと…」
は、と意識が明瞭になる。
布団をかき抱き、短く浅い呼吸を繰り返す。耳の奥で、ど、ど、と低く早い心音が唸る。
(え…何…、夢…?)
身体が熱い。肌に身に着けたパジャマは汗で濡れている。
違和感を得て、かけ布団を持ち上げると、瞠目する。
(薬、飲んだのに…)
「あ、んぅ…」
シャツがこすれて、胸元の二つの飾りがすっかり主張しており、甘い痺れを身体に送る。パンツの中央では、自分の分身が張り出しているのが見て取れた。
昔から、家族がオメガであることを心配して、低用量ピルを服用させてくれていた。だから、発情期らしい発情期を経験したことがない。
(ちゃんと、飲んだのに…)
幼き頃からの癖で、投薬を忘れたことがない。
だから、発情期の兆しを感じたら、それ用の薬を服用すれば、何ら問題はなかった。
(痛い…)
股間がはち切れそうにひりひりと痛む。身体の中も何か、ぐるぐると渦巻いて、重怠い。どうすれば良いのかわからずに、涙が溢れてくる。でも、誰も助けてくれない。
(透…)
唯一の救いである彼の名前を心の中でつぶやくと、さらに熱が上がった気がする。呼吸をするだけで、身体の悦が溜まってしまう。
本能のままに、震える指先で、ズボンを降ろす。
にちゃ、と粘っこい液体が、いつも排泄をする場所から糸を引いて、下着に付着していた。
「んうっ!」
屹立に恐る恐る触れてみると、爪先がびくん、と跳ねる。脳天に落雷を受けたかのような痺れがあって、背筋が痙攣する。気づけば、勝手に手が動いて、性器から溢れる粘度のある液体を利用して、ぬちゃぬちゃと音をさせながら、上下に扱いていた。にゅる、と手のひらの中に先端が包まれて、それを重力に従って、根本に降ろす。
「ふ、あ、あ…なに、これ、あ、ん、ぁ…ああっ、んう!」
いくらかもしない内に、溜まった重りが簡単に暴発して、全身を痙攣させる。先端から勢いよく、びゅ、と溢れた液体は、嗅いだ事の無い生々しいにおいを放っていて、パジャマに降り注いだ。
解き放ってから、ふるふるとしばらく全身を愉悦が駆け巡る余韻に浸り、ようやっと深呼吸ができた。すると、一度、水を口にしたら、もっと水が欲しくなるように、身体は枯渇を見せる。
(うそ…、なんで…)
先ほどまで扱いた場所は、一度ゆるくなったのに、また元通りになってしまった。
自分の身体が自分の身体でないような、得体の知れないものに思えてきて、涙が溢れた。
「依織先輩」
ふと、脳内にあの優しく愛おしい声が聞こえる。
そんなはずない。
ここは、オメガ専用のシェルターで厳重に管理されている。アルファが入れるとしたら、僕が申請書に記載していないといけない。けれど、今回の発情期も、もちろんアルファの欄は無記入だった。だから、ここに僕は、今までと同じように、一人で一週間過ごすのだ。
それなのに、夢の中と同じように、目の前に彼がいるように思えてくる。
「と、おる…」
きゅう、と直前まで、夢の中でいじられていた後孔が強く反応をした。
夢の中の透が、舌なめずりをしながら、ここに挿入をしていた。熱の犯された僕は、理性などなかった。
「ナカ、あつい、よぉ…」
さっきの意識の中では、恥ずかしてたまらなかったのに、自ら足を広げて、その奥へと触れる。そこはなぜか、ぬたりと濡れていて、その滑りを使って入口を撫でるだけでも、声が漏れてしまう。
「ふ、あ、あ…ん、あ…」
こくり、と唾を飲んで、透がしてくれたように、指を割り入れる。自分の短くて細い指では、思った満足感は得られなくて、すぐに指を増やす。初めて触れるのに、そこは簡単に自分の指を飲み込んでいく。
「あ、と、る…透…っ」
瞼の裏にいる彼の行動を思い出す。腹側を撫でられて、それから…。
「んあっ!」
中指の腹が感触が違う場所をかすめた瞬間、足の指が宙へぴん、と蹴られる。
(ここ、だ…)
三本の指先で、先ほどのしこりを探す。見つけ出すと、中指で撫でてみたり、押してみたり、三本の指で叩いてみたりする。その度に、構えていないと足先が暴れてしまう。
「きも、ちい…あ、きもち、よぉ…っ、あ、あんぅ…っ」
視線を落とすと、先ほど射精したばかりの屹立からは、先走りが絶えず溢れている。その奥からは、ぐちょぐちょ、といやらしい音が静かな防音設備の効いている個室に響く。
「ん、やあ、と、る、透、透っ」
最後に現れた、夢の中の透の裸体は、美しかった。
筋肉が隆起し、そのたくましい身体にふさわしい、立派なペニスは、グロテスクだった。
(透、意地悪だった…)
けれど、その笑みが妖艶で、たまらなくいやらしかった。
(透…、両思いって、言ってた…)
だから、僕と…。
ぎゅう、と指先を強く締め付ける。身体がたりない、と疼いて仕方がない。
「と、る…とぉ、う…透…っ」
(好き…っ)
ぐり、と強くしこりと押しつぶすと、目の前がちかちかと白んで、全身が痙攣し、跳ねる。勢いよく飛び出た精液が、頬を伝った。
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました
小池 月
BL
大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。
壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。
加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。
大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。
そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。
☆BLです。全年齢対応作品です☆
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
完結しました!ありがとうございました。