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第17話.学校ヘ行コウ
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結局あれからも何人かに道を聞き直し、ようやく学校に到着したのが昼を回っての三時過ぎだった。
見上げると洋風の大きな校舎だ。真っ白な外壁、大きな塔にガラス窓。それに瓦屋根。
洋風建築。いやこれは擬洋風建築と言うべきものだ。急激な西洋化によって和風建築に携わって来た職人達が、見よう見まねで建てたもの。
和洋折衷と言うべきか、実に見事な建造物である。一言で言うなれば美しいと言う言葉が良いだろう。文化の過渡期における日本的感性と、西洋にならえの技術的革新が究極たるマーブル模様を呈したのだ。百年後でも通用する美術的価値がある。
前世の記憶を持つ私から見るとクラシックな風情であるが、この時代の日本人達には先進的なそれ映っていたであろう。
しかし、門のどこを探しても「北部方面総合学校」の表記は無い。敷地内の小さな詰め所で座っている制服の男に話しかける事にした。
「もし、そこな人。ここは北部方面総合学校ではありませんか?」
「ん、何だ貴様。何用か」
「わしは穂高進一、雪倉宗太郎(ゆきくらそうたろう)戸長より推薦状を賜って来た者です」
そう言って書状を差し出す。それを受け取った男は、こちらを一瞥もせずに言った。
「うん。貴様の言う通り、ここは北部方面総合学校で間違いない。入学希望者は推薦状を持って校舎に入れ」
「はい」
ぶっきらぼうに返された書状を大事に仕舞った。この男の態度の悪さに、内心よろしくない気持ちを覚えつつも校舎の扉をくぐった。
校舎に入ると、すぐに事務所然とした一部屋に案内された。引き戸を開けて中に一歩入ると、煙草の煙が立ち込めている。
立派な革のソファに深く腰掛けている男が、こちらに気付いて手招きした。
「穂高進一です!雪倉宗太郎戸長の推薦で、入学希望に参りました!」
大きな声で挨拶をすると、一礼して男の前に立った。
「私は校長の赤石(あかいし)だ。穂高くんだね、ようこそ。紹介状を見せてくれるかな」
「はい」
言われるがままに書状を差し出した。革のソファに深く腰をかけた校長は紹介状を隅まで眺めると言った。
「よし。では早速試験を受けて貰おうか」
「試験ですか?」
「なんだ聞いておらんのかね」
聞いていない。
紫煙を一息。校長は煙草を灰皿に置きながら、まるで意外な事のように言った。私は正直に応える。
「聞いておりません」
「そうか。数学、英語、漢文、歴史とあるが出来るだろうね」
「数学と英語なら」
「では受けたまえ」
どうやら日時を決めて、同じテストを一斉に受ける平成の入学試験とは仕組みが違うらしい。できると言った二つの科目の試験を言われるがまま、すぐに受ける事になった。
数学は中高生程度の問題であり易しかったが、英語は難題であった。小難しい英文を訳して、自らの見解を述べよと言うものだ。
これには参った。
それでもどうにか答案を仕上げると、鉛筆を置いた。久しぶりの試験と言うものに緊張しただろうか、いや今更だな。
「ではまた、追って合否の連絡があるから沙汰を待てよ」
「はい、本日はありがとうございました」
赤石校長に礼を言って、立ち去ろうとした時に呼び止められた。
「ところで君は、下宿は決まっておるのかね」
「いえ、まだ決まっておりません」
「それはいかんね、寮があるからそこに住まいなさい。私から連絡しておこう」
「ありがとうございます」
校長は私の風貌を見て、住まうところに困っていると判断したのだろうか。まぁ実際にどうすべきかと考えていたので、渡りに船であるのだが。
その後、寮へ案内された。
四畳半ほどの一間に、文机(ふづくえ)が置いてある部屋だった。私は学生生活をこの部屋で過ごす事になるのだ。
見上げると洋風の大きな校舎だ。真っ白な外壁、大きな塔にガラス窓。それに瓦屋根。
洋風建築。いやこれは擬洋風建築と言うべきものだ。急激な西洋化によって和風建築に携わって来た職人達が、見よう見まねで建てたもの。
和洋折衷と言うべきか、実に見事な建造物である。一言で言うなれば美しいと言う言葉が良いだろう。文化の過渡期における日本的感性と、西洋にならえの技術的革新が究極たるマーブル模様を呈したのだ。百年後でも通用する美術的価値がある。
前世の記憶を持つ私から見るとクラシックな風情であるが、この時代の日本人達には先進的なそれ映っていたであろう。
しかし、門のどこを探しても「北部方面総合学校」の表記は無い。敷地内の小さな詰め所で座っている制服の男に話しかける事にした。
「もし、そこな人。ここは北部方面総合学校ではありませんか?」
「ん、何だ貴様。何用か」
「わしは穂高進一、雪倉宗太郎(ゆきくらそうたろう)戸長より推薦状を賜って来た者です」
そう言って書状を差し出す。それを受け取った男は、こちらを一瞥もせずに言った。
「うん。貴様の言う通り、ここは北部方面総合学校で間違いない。入学希望者は推薦状を持って校舎に入れ」
「はい」
ぶっきらぼうに返された書状を大事に仕舞った。この男の態度の悪さに、内心よろしくない気持ちを覚えつつも校舎の扉をくぐった。
校舎に入ると、すぐに事務所然とした一部屋に案内された。引き戸を開けて中に一歩入ると、煙草の煙が立ち込めている。
立派な革のソファに深く腰掛けている男が、こちらに気付いて手招きした。
「穂高進一です!雪倉宗太郎戸長の推薦で、入学希望に参りました!」
大きな声で挨拶をすると、一礼して男の前に立った。
「私は校長の赤石(あかいし)だ。穂高くんだね、ようこそ。紹介状を見せてくれるかな」
「はい」
言われるがままに書状を差し出した。革のソファに深く腰をかけた校長は紹介状を隅まで眺めると言った。
「よし。では早速試験を受けて貰おうか」
「試験ですか?」
「なんだ聞いておらんのかね」
聞いていない。
紫煙を一息。校長は煙草を灰皿に置きながら、まるで意外な事のように言った。私は正直に応える。
「聞いておりません」
「そうか。数学、英語、漢文、歴史とあるが出来るだろうね」
「数学と英語なら」
「では受けたまえ」
どうやら日時を決めて、同じテストを一斉に受ける平成の入学試験とは仕組みが違うらしい。できると言った二つの科目の試験を言われるがまま、すぐに受ける事になった。
数学は中高生程度の問題であり易しかったが、英語は難題であった。小難しい英文を訳して、自らの見解を述べよと言うものだ。
これには参った。
それでもどうにか答案を仕上げると、鉛筆を置いた。久しぶりの試験と言うものに緊張しただろうか、いや今更だな。
「ではまた、追って合否の連絡があるから沙汰を待てよ」
「はい、本日はありがとうございました」
赤石校長に礼を言って、立ち去ろうとした時に呼び止められた。
「ところで君は、下宿は決まっておるのかね」
「いえ、まだ決まっておりません」
「それはいかんね、寮があるからそこに住まいなさい。私から連絡しておこう」
「ありがとうございます」
校長は私の風貌を見て、住まうところに困っていると判断したのだろうか。まぁ実際にどうすべきかと考えていたので、渡りに船であるのだが。
その後、寮へ案内された。
四畳半ほどの一間に、文机(ふづくえ)が置いてある部屋だった。私は学生生活をこの部屋で過ごす事になるのだ。
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