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第95話.覚悟ト決意
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「俺は生まれてからずっと、この辺りで生きて来たんだ。山も谷も、草はらも雪も。全部知ってる、目もいいぞ。俺は役に立つ!」
突然現れた乱入者に場は凍りついた。ひとまず吾妻を抑えつつ、ウナを座らせる。
「誰だこいつは」
「説明申し上げます」
中将閣下に話た。彼を現地協力員として拾った事。そして、この部屋に共に暮らしている事。また、この辺りの地理に精通する人間だと言う事を。
私の知る人間だと言うことで、中将も吾妻もひとまずは落ち着いたようであった。
「それで?君はいくつかね」
「十六だ」
本当か、十二か十三か。その辺りに見えるがな。しかし戸籍なんてあってないようなもので、本人の申告が全てである。
「そうか、でもなウナ君。これは危険な任務だ。死ぬかもしれないし、殺すかもしれない。それに重要だ、この戦果如何によって全てが覆る可能性すらある」
「やれます。俺は死んでも良いし、ルシヤ人も殺せる」
ふぅと、こちらにも聞こえるような大きな溜息。中将は、ゆっくりとした動作で煙草を一本取り出して吸った。上等な煙草の煙がふわりと漂った。
「で、穂高君。彼はどうなんだ」
「ウナはこの辺りの山に住んでいたニタイの民です。土地勘はありますし、目も良い。雪兎の試射にも同行しております」
「そうか、能力はあると?」
「能力はそうですね、あるでしょう。ただ」
「まだ子供だ」
中将の声に頷いた。吾妻は神妙な顔をして下を向いている。煙草の灰が、机に落ちた。
「俺は子供じゃない!倭人は男の覚悟を、子供だと言って捨てるのか?」
「わかった、わかった。それで、何が望みだ。飯か金か。お前は戦争してまで何が欲しい」
それを聞いたウナの声のトーンが変わる。いつになく真面目な顔で、真っ直ぐに中将を見据えて口を開いた。
「望みはそう。将軍さん一つだけ。上手く行ったら、一つだけ聞いてくれ」
中将は言ってみろとばかりに首を向ける。
「戦争に勝ったら。この辺りの山をニタイの民にくれ。ルシヤにも倭人にも荒らせないようにして、ニタイの民に任せて欲しい。何もかも上手くするから」
コイツ、ウナは。
訳も分からん子供かと思っていたが、そうではない。全く大きな事を考えていた。ルシヤと日本と、この戦乱の渦中にあって自らの民族の残る道を探っていたのだ。
このタイミングで閣下に直訴するとは。運も味方につけたのであろうが、中々できることではない。
中将も思わぬ直談判に目付きが変わった。じろりと見定めるような、見通すような鋭い目でウナを見る。
「勝ったら、か」
「当然だ、負けたら死ぬ。でもニタイの民は山が無ければ生きてはいけない。ここで逃げたら命は残るが、ニタイは死ぬ」
中将も、私も吾妻もウナの言葉を黙って聞く。大人が三人座っても、この子供だと思っていた彼の言葉を遮ることもできない。
「父も母も、里の皆も。ここへ帰って来れるようにしないといけない。今できるのは俺だけだ。俺が何もしないと、ルシヤが勝っても倭人が勝ってもニタイの民に帰る場所がなくなる!」
ばっと一息で言い続けた彼が、一つ息を吸って続けた。
「だから、だから。俺を使え!」
しんと、空気が止まった。部屋で動くのは中将の吐いた紫煙のみ。飲み干した珈琲のカップに灰を落とした。
中将が眉間によったしわを緩めて言った。静寂を切り裂く声で言った。
「ふはははっ!良いだろうよ、俺にできる限りの事はしよう。山が欲しけりゃくれてやる。それだけの働きを見せろよ、少年」
通った。
全く無作法な、無謀な、勢いだけの主張が。そんなものが一国の将軍を動かした。若い命が真っ赤に燃えているのが彼に伝わったのだ。
「ならば今から貴様は兵隊だ、身分は俺が預かった。ウナ二等卒は穂高中尉、吾妻少尉と共に第一狙撃隊に配属とする。励めよ」
「はい!」
話は決まった。
第一狙撃隊。栄誉ある先遣隊は穂高中尉、吾妻少尉、ウナ二等兵。この三名に決まったのである。互いに握手を交わす。
「では準備をしろ、敵は待ってくれんからな」
突然現れた乱入者に場は凍りついた。ひとまず吾妻を抑えつつ、ウナを座らせる。
「誰だこいつは」
「説明申し上げます」
中将閣下に話た。彼を現地協力員として拾った事。そして、この部屋に共に暮らしている事。また、この辺りの地理に精通する人間だと言う事を。
私の知る人間だと言うことで、中将も吾妻もひとまずは落ち着いたようであった。
「それで?君はいくつかね」
「十六だ」
本当か、十二か十三か。その辺りに見えるがな。しかし戸籍なんてあってないようなもので、本人の申告が全てである。
「そうか、でもなウナ君。これは危険な任務だ。死ぬかもしれないし、殺すかもしれない。それに重要だ、この戦果如何によって全てが覆る可能性すらある」
「やれます。俺は死んでも良いし、ルシヤ人も殺せる」
ふぅと、こちらにも聞こえるような大きな溜息。中将は、ゆっくりとした動作で煙草を一本取り出して吸った。上等な煙草の煙がふわりと漂った。
「で、穂高君。彼はどうなんだ」
「ウナはこの辺りの山に住んでいたニタイの民です。土地勘はありますし、目も良い。雪兎の試射にも同行しております」
「そうか、能力はあると?」
「能力はそうですね、あるでしょう。ただ」
「まだ子供だ」
中将の声に頷いた。吾妻は神妙な顔をして下を向いている。煙草の灰が、机に落ちた。
「俺は子供じゃない!倭人は男の覚悟を、子供だと言って捨てるのか?」
「わかった、わかった。それで、何が望みだ。飯か金か。お前は戦争してまで何が欲しい」
それを聞いたウナの声のトーンが変わる。いつになく真面目な顔で、真っ直ぐに中将を見据えて口を開いた。
「望みはそう。将軍さん一つだけ。上手く行ったら、一つだけ聞いてくれ」
中将は言ってみろとばかりに首を向ける。
「戦争に勝ったら。この辺りの山をニタイの民にくれ。ルシヤにも倭人にも荒らせないようにして、ニタイの民に任せて欲しい。何もかも上手くするから」
コイツ、ウナは。
訳も分からん子供かと思っていたが、そうではない。全く大きな事を考えていた。ルシヤと日本と、この戦乱の渦中にあって自らの民族の残る道を探っていたのだ。
このタイミングで閣下に直訴するとは。運も味方につけたのであろうが、中々できることではない。
中将も思わぬ直談判に目付きが変わった。じろりと見定めるような、見通すような鋭い目でウナを見る。
「勝ったら、か」
「当然だ、負けたら死ぬ。でもニタイの民は山が無ければ生きてはいけない。ここで逃げたら命は残るが、ニタイは死ぬ」
中将も、私も吾妻もウナの言葉を黙って聞く。大人が三人座っても、この子供だと思っていた彼の言葉を遮ることもできない。
「父も母も、里の皆も。ここへ帰って来れるようにしないといけない。今できるのは俺だけだ。俺が何もしないと、ルシヤが勝っても倭人が勝ってもニタイの民に帰る場所がなくなる!」
ばっと一息で言い続けた彼が、一つ息を吸って続けた。
「だから、だから。俺を使え!」
しんと、空気が止まった。部屋で動くのは中将の吐いた紫煙のみ。飲み干した珈琲のカップに灰を落とした。
中将が眉間によったしわを緩めて言った。静寂を切り裂く声で言った。
「ふはははっ!良いだろうよ、俺にできる限りの事はしよう。山が欲しけりゃくれてやる。それだけの働きを見せろよ、少年」
通った。
全く無作法な、無謀な、勢いだけの主張が。そんなものが一国の将軍を動かした。若い命が真っ赤に燃えているのが彼に伝わったのだ。
「ならば今から貴様は兵隊だ、身分は俺が預かった。ウナ二等卒は穂高中尉、吾妻少尉と共に第一狙撃隊に配属とする。励めよ」
「はい!」
話は決まった。
第一狙撃隊。栄誉ある先遣隊は穂高中尉、吾妻少尉、ウナ二等兵。この三名に決まったのである。互いに握手を交わす。
「では準備をしろ、敵は待ってくれんからな」
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