1 / 3
プロローグ
しおりを挟む起床後、ワイシャツを着てワインカラーのネクタイを締めると淡いグリーンを基調としたブレザーを羽織る。これが葵の高校の制服だ。軽くはねていた髪は放っておいたまま自室を出ると、朝から元気の良い使用人の声が届く。
「葵様、おはようございます」
「・・・あぁ・・・」
いつものように愛想がないまま応え、葵はそのままリビングへと向かった。
「あら?今日も朝練?大会近いんでしょ?」
リビングに入ると既にテーブルへとついていた人物が顔を覗かせる。2歳上の姉の椿だ。
「あぁ・・・」
「あぁって。もうちょっと愛想振りまいても文句はないと思うわ。全く可愛くないわね」
「・・・」
「このお姉さまに向かってそういう態度はよくないわよ」
椿と葵は、性別は違うが容貌は似通った部分が多い姉弟だった。ストレートロングの髪を綺麗に整えている椿は、身内の贔屓目を取っても美人だと評されるだろう。美人が怒ると迫力があると言われるが、自身の姉にそのような感想など不要で、同じく整った容姿をしている葵にとっては、椿が多少声を荒げて言い寄ってきても、いつものことかとスルーするだけだった。
その二人にキッチンで朝食を作っていた母が割って入ってくる。
「あら?話し声がすると思ったら。葵もおはよう。朝食の準備はできているわよ」
「あぁ」
「ちょっ、葵!」
その態度に椿は更に声を上げる。
「まぁまぁ椿も、今日は講義があるのでしょ?早く食べてしまいなさい」
「お母さんは葵に甘いのよ・・・」
「あら、椿にも甘いつもりよ?」
柔らかく微笑む母に、流石の椿も何も言えなくなる。ハァとため息をつくと、隣にいる葵と共に用意された食事に手を付けた。
「いただきます」
朝食のメニューは焼き立てのパンをはじめとした母である牡丹の手作りの品々だ。卵料理、サラダにスープと葵たちにとってはお馴染みの料理である。
二人が食事をしていると、リビングへまた一人男性が入ってきた。
「ん?皆揃っているのか?」
食卓にいる顔ぶれをみて、男性は破顔する。
「おはようございます、暁さん」
「おはよう、お父さん。今日は遅いのね」
牡丹、椿が声を掛ける。
「あぁ。今日はいつもより会議が遅いからな」
暁は食卓の葵の向かいの席へと座る。目の前で黙々と食事を続けている葵に視線を向けると目元が和らいだ。
「・・・何」
「お前は朝練習か、葵?」
「あぁ」
「そうか。父さんの車に乗っていくか?」
「別にいい」
顔色一つ変えず淡々と答える。それに気分を害された様子もなく、暁は「そうか」とだけ言い、笑みを崩さないまま食事を始めた。
葵が素っ気ないのはいつものこと。口数が少ないのもだ。その性格をよく知っているからか、暁は何も言わない。椿は呆れており、牡丹は笑っている。
こうして瀬戸家の朝は始まっていくのだった。
瀬戸家の人々は、葵を含め両親と姉の四人家族。だが屋敷にはそれ以外にも使用人がいた。瀬戸家は大企業を統括する財閥の一つでもあるのだ。
現会長は葵の祖父で、葵の父である暁も当然のことながら社長として後を継いでいる。そして、恐らくそれは葵にも迫ってくる未来の一つだった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
妹の仇 兄の復讐
MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。
僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。
その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?
さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。
しかしあっさりと玉砕。
クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。
しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。
そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが……
病み上がりなんで、こんなのです。
プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる