シンデレラ転生の左遷リーマンは零時までの身体能力チートで異世界を救う

釈 余白(しやく)

文字の大きさ
20 / 38
第三章:激しくも長き決戦

20.決戦の始まり

しおりを挟む
 予測通りに進んでいた魔界門の構築に変化が見えたのは、夕方になり陽が落ち始めたころだった。

「で、伝令! 申し上げます! 魔界門の様子が、なにやら動く影が見えるようになりました!」

「とうとうこの時がやってきましたか! おそらくそうかからないうちに悪魔どもが飛び出し襲い掛かってくるでしょう。隊長、では手筈通りに迎え撃てるようお願いいたします!」

「ははっ、いざ参りましょうぞ!」

 最後の作戦を立てていたシンデレラたちが、伝令を受けて監視場所までやってきたときには、すでに門の向こう側に無数の影がうごめいている様子がはっきり確認できるようになっていた。

「つい先ほどまではなにかが動いているような程度だったのですが、今ではこの様子です。これが悪魔なのでしょうか」

「そうです、わたしが一度出くわしたのと同じ種類でしょうね。背丈は人間の半分にも満たないのですが、鋭い爪と牙がありますから十分注意してください。先鋒隊はわたしと共に、残りは隊長とともに抜け出た悪魔の対処をお願いしますね」

 今まで魔界門と言うくらいだから扉があるものだと考えていたシンデレラ。それは多くの部隊員も同じだった。しかし目の前で実体化しつつあるのは想像とは異なっており、いうなればガーデンアーチのような形状だった。

 これには一瞬たじろいだが、冷静に考えれば破壊に必要な部分が少ないほうが成功率は高まるだろうとシンデレラは考えを改めた。問題は門を閉じて悪魔の進出を押さえることは不可能であることだ。

 つまり片っ端から撃退していくしかない。いまだ絶対数がつかめない現状から考えると、これは精神を含めた持久戦となりそうだ、彼女はそんな気配を感じ取っていた。

 やがてシンデレラ率いる先鋒隊は門の目と鼻の先までやってきた。すぐ近くで目の当たりにすると、その禍々しさ否が応でも伝わってくる。

 こうして待機を初めてどのくらい経っただろうか。数分か、それとも数十分なのか一時間なのか、それすらわからないくらい緊迫した場に、突然異様な鳴き声が響いた。

 まるでそれが開戦の合図だと言わんばかり、魔界門は黒く光を放つ。いよいよ実体化を終えようとしているのであろう。シンデレラは腰のベルトからダーツを一本抜きとりしっかりと握りしめその時を待つ。

 やがて扉の代わりとなっている結界のような暗幕が徐々に色を薄くしていく。当然、さっきまで陰でしかなかった悪魔の姿が誰の目にもはっきりと見えてくる。

「あ、あれが悪魔…… なんとおぞましい……」
「くそっ、残らずぶっ殺してやる!」
「やらせはせん、やらせはせんぞ!」

 部隊員たちは今にも飛び出しそうに前のめりで合図を待っている。士気の高まりと同時に焦りも感じ取ったシンデレラは、ゆっくりと向き直り皆へ声をかけた。

「よろしいですか皆さん、あれが我々の敵である悪魔です。確かに姿はおどろおどろしく凶悪そのもの、なんとも形容しがたい嫌悪感を持ったことでしょう。しかしいくら異形とは言えあのような矮小な小物インプ、臆するに値しません。即座に蹴散らしてやりましょう!」

「おおお! 姫様の言うとおりだ!」
「あんな雑魚恐るるに足らず!」
「やってやる! いや、やるんだ!」
「「姫様万歳! 姫様に忠誠を!」」

 全員の表情から迷いは消え、高い士気だけが残された。これで今やれることはもうなく、あとは出たこと勝負で押し切れることをシンデレラは祈った。

 シンデレラを先頭に先鋒隊が魔界門へと進軍をはじめたところで、おそらく相手も危険を察知したのだろう。扉にかかる幕からはじけるように一匹、また一匹と悪魔が飛び出してくる。

 それはまるでシャボン玉か放たれるように、それとも水滴がしみだすようにと言ったらいいだろうか。とにかく一つ一つがふつふつと湧き出てきたのだ。

「今こそ我らの力を発揮するとき! みなさん、参りましょう!」

 シンデレラの合図で一気に高まった部隊員たちが一斉に走り出す。もちろんシンデレラは誰よりも早く特攻し小さな悪魔を素手で倒していく。

 この日のためにおのれを鍛えてきた皆もシンデレラに続けと剣を振るった。悪魔は次々に切り刻まれていき、戦局は明らかに優勢、流石の練度と言えよう。

「なんだ、案外と歯ごたえがないじゃないか。これならオレたちだけでも全滅に追い込めそうだな」
「油断するなよ? 敵さんがこいつらだけのはずがないからな」
「問題ないさ! 我等には姫様がついているんだ! きっと勝てる!」

 厳しい訓練で心身を鍛え上げた迎撃部隊員に油断も慢心もない。今はまだ前哨戦程度であることくらいは重々承知なのだ。

 それでもこれだけあっけなく倒し続けると、部隊員の中には疑問を感じ始めるものも出てきてしまう。それは救いを求める人間としては仕方のないこととも言えた。

「もしかして伝承が大げさだっただけじゃないのか?」
「そうだな、昔は兵士の数も少なかったのかもしれん」
「おそらく我らのような厳しい訓練をしていない、貧弱な者たちだったのだろうよ」

 確かにいくらなんでも弱すぎるとシンデレラも感じていた。ほとんどの悪魔は部隊員たちの一刀で消し飛んでしまうのだ。油断を招くのも無理はない。

 しかし、この場を引き締めるべく、喝を入れ皆の慢心を諭す声が響いた。声の主はもちろん迎撃部隊を束ねている隊長である。

「バカ者! 今まで何を学んできたと言うのだ! どんな敵だろうが油断をすれば最後に倒れるのは己だと今一度思い出せ! 自分たちの剣と精神にゆだねられた未来の重さをな! その手には王国の行く末と民たちの命、そして何より愛する家族たちの将来が握られているのだぞ!」

「はいっ! 戦の最中に戯言を発してしまい申し訳ありません!」
「そうでした、気を引き締め直します!」

 やはりこういう時は年長の経験豊富な隊長が頼りになる。シンデレラは悪魔を相手にしながらも、不思議と心が落ち着いていくのを感じていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって? そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

処理中です...