シンデレラ転生の左遷リーマンは零時までの身体能力チートで異世界を救う

釈 余白(しやく)

文字の大きさ
22 / 38
第三章:激しくも長き決戦

22.終わりの見えない波

しおりを挟む
『一体奴らの精神構造はどうなっているのかしら。それにこの襲来、いったいいつまで続くの!?』

 悪魔たちの行動原理は何なのだろうか。もちろん目的は女性だけをさらっていくことから繁殖のためと思われる。

 しかしなぜ大挙してやってくるのか。なぜ命を落とすことを厭わないのか。そしてこの数はどうやって生み出されているのだろうか。

 シンデレラはこの戦いの根幹についてわからないことだらけだと、心の中で吐き捨てていた。

 もちろん理由がわかったとしてもやるべきことは変わらない。襲い掛かってくる悪魔たちを全滅させなければ自分たちが滅びるのだから。

 それでも悩みは攻撃の手を鈍らせる。それでなくとも皆の顔には明らかな疲労がにじみ出ていた。

 例の小さな悪魔インプが大挙して飛び出し始めてから三日、つい先ほど日が昇り襲来が収まったところである。

「姫様、無理をせずゆっくりとお休みください。我々も交代で休みますのでご心配なく。歯ごたえのない相手とは言え、こう毎日では皆疲労が蓄積していきますなぁ」

「そうですね。いったいどういうことなのかわかりませんが、いつもっと強い悪魔が現れるかわかりません。気を抜くことはできませんね。ですのでわたしは次の戦いに向け準備を始めます」

「いえいえいけません。せめて半の刻正午まではお休みくださいませんか? そうでないと皆まで休んでいられないと言いだしてしまいます」

「ですが――」

 責任感の強すぎるところは灰賀の性格を引きずっているようにも感じられ、どちらの人格で自制させればいいのかわからなっていた。シンデレラもまた我慢強く泣き言を言わない性格だからである。

 灰賀の考えは彼女の、シンデレラの考えは灰賀のものだからややこしい。それでも二人に共通しているのは、周囲の気持ちをおもんばかることができると言うことだ。

「いいえ、ここは素直に言うことを聞きましょう。わたし一人のわがままで舞台全体に悪影響を出すわけにはいきませんからね」

「ご理解いただけでうれしく思います。もちろん私もしっかりと休息を取りますのでご安心ください。現在は部隊を三つに分け交代制としておりますが、このまま続くと疲れが半端にしか取れなくなるかもしれません

「ひとつ考えたのですが、この波が続く間は騎士団にも手を貸していただいたほうがいいのではないでしょうか。念のため騎馬兵と対空部隊のみそのまま待機してもらい、歩兵騎士団に来てもらいませんか?」

 これはある意味博打だった。悪魔たちの襲来は、今のところ小さな悪魔がふつふつと湧き出る程度でそれほどの勢いはない。おそらくは今後激しくなるのだろうが、その前に消耗しきっては勝ち目が無くなってしまう。

 そうならないよう、この前哨戦ともいえる戦いはなるべく疲労を貯めずに乗り切りたかったのだ。そしてこの案には隊長も即答で同意した。

「ふむ、さすれば部下たちも完全休養が可能でございますな。ではさっそく伝令を出して二個小隊ほど呼び寄せましょう。悪魔の軍勢に変化があった際にまた臨機応変に対応すれば問題は起きないかと」

「はい、ではその方向で連絡をお願いいたします。それとできれば工兵を幾人かよこしてもらえないでしょうか。この場所に―― なんというのでしたか、大きな固定式の弓台を建造できないかと考えました」

「それは弩砲どほう、つまりバリスタのことでしょうか。まさかそれを姫様が人力で引くと? 普通は馬で引いたり巻き上げ機を使って数人で運用するものなのですが……」

「この場所から魔界門まで届かせるには、城の外壁に設置しているあのくらいの大きさが必要かと思いまして。さすがに毎日近くまで見に行くのではお供をしてもらうのも大変ですから」

「うーむ、だから一人で行かせろと言われるよりはいいかもしれませんな。仕方ありません、それも同時に手配いたしましょう。おそらく明日中には出来上がるかと」

「わがまま申し上げます。それにしても、いつになったらあのにっくき魔界門を破壊できるようになるのでしょうね」

「まったくです。姫様が叩いても蹴っても傷一つつかないのですから驚きです。斧程度では刃こぼれしてしまいますし、傷が入ってもたちどころに治っていくとは恐ろしい代物です」

 当初の目的である魔界門の破壊を実行すべく、悪魔を蹴散らしながら門へと接近し攻撃を仕掛けたところ、シンデレラの全力をこめた拳でも傷一つつかなかったのだ。

 もちろん普通の剣では反対に折れてしまう始末だし、一番頑丈な武器である大斧を用いた一撃ではわずかに傷が入ったが、それも自動的に修復されていった。

 おそらく不浄の大気が漏れ出ているうちは破壊できないのだろうと当てを付けたシンデレラたちだが、かといっていつまでも眺めているわけにはいかない。そこで遠くからでも狙撃できる準備をしようと言うわけである。


 それから二日ののち、彼女の要望通りの大型弩砲が前線陣に据え付けられた。巨大な弓に腕よりも太い弦が張ってあるのだが、その佇まいは常識外れもいいところだ。

 なにせ城にあるものは後部に巻き上げ装置が付いていて、兵士が二人か三人で引き絞る構造である。それが普通のクロスボウをただ大きくしたようなものが荷車に乗っているのだから誰もが目を止めるに決まっている。

 まもなく陽が落ちようとするころ、また小さな悪魔との戦いが始まるのかと、部隊員たちがうんざりしながら立ち上がり権を握り締めた。

 そんな彼らの負担を少しでも軽くしたいと願うシンデレラは、バリスタのすぐ後ろへと陣取り、第一の矢をつがえた。



ー=+--*--*--+=-ー=+--*--*--+=-

 本作品をお読みくださいまして誠にありがとうございました。数ある作品の中から拙作をクリックしてくださったこと感謝いたします。少しでも楽しめたと感じていただけたならその旨お伝えくださいますと嬉しいです。

 ぜひお気に入りやハート&クラッカーをお寄せください。また感想等もお待ちしておりますので、併せてお願いいたします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...