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第三章:激しくも長き決戦
22.終わりの見えない波
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『一体奴らの精神構造はどうなっているのかしら。それにこの襲来、いったいいつまで続くの!?』
悪魔たちの行動原理は何なのだろうか。もちろん目的は女性だけをさらっていくことから繁殖のためと思われる。
しかしなぜ大挙してやってくるのか。なぜ命を落とすことを厭わないのか。そしてこの数はどうやって生み出されているのだろうか。
シンデレラはこの戦いの根幹についてわからないことだらけだと、心の中で吐き捨てていた。
もちろん理由がわかったとしてもやるべきことは変わらない。襲い掛かってくる悪魔たちを全滅させなければ自分たちが滅びるのだから。
それでも悩みは攻撃の手を鈍らせる。それでなくとも皆の顔には明らかな疲労がにじみ出ていた。
例の小さな悪魔が大挙して飛び出し始めてから三日、つい先ほど日が昇り襲来が収まったところである。
「姫様、無理をせずゆっくりとお休みください。我々も交代で休みますのでご心配なく。歯ごたえのない相手とは言え、こう毎日では皆疲労が蓄積していきますなぁ」
「そうですね。いったいどういうことなのかわかりませんが、いつもっと強い悪魔が現れるかわかりません。気を抜くことはできませんね。ですのでわたしは次の戦いに向け準備を始めます」
「いえいえいけません。せめて半の刻まではお休みくださいませんか? そうでないと皆まで休んでいられないと言いだしてしまいます」
「ですが――」
責任感の強すぎるところは灰賀の性格を引きずっているようにも感じられ、どちらの人格で自制させればいいのかわからなっていた。シンデレラもまた我慢強く泣き言を言わない性格だからである。
灰賀の考えは彼女の、シンデレラの考えは灰賀のものだからややこしい。それでも二人に共通しているのは、周囲の気持ちをおもんばかることができると言うことだ。
「いいえ、ここは素直に言うことを聞きましょう。わたし一人のわがままで舞台全体に悪影響を出すわけにはいきませんからね」
「ご理解いただけでうれしく思います。もちろん私もしっかりと休息を取りますのでご安心ください。現在は部隊を三つに分け交代制としておりますが、このまま続くと疲れが半端にしか取れなくなるかもしれません
「ひとつ考えたのですが、この波が続く間は騎士団にも手を貸していただいたほうがいいのではないでしょうか。念のため騎馬兵と対空部隊のみそのまま待機してもらい、歩兵騎士団に来てもらいませんか?」
これはある意味博打だった。悪魔たちの襲来は、今のところ小さな悪魔がふつふつと湧き出る程度でそれほどの勢いはない。おそらくは今後激しくなるのだろうが、その前に消耗しきっては勝ち目が無くなってしまう。
そうならないよう、この前哨戦ともいえる戦いはなるべく疲労を貯めずに乗り切りたかったのだ。そしてこの案には隊長も即答で同意した。
「ふむ、さすれば部下たちも完全休養が可能でございますな。ではさっそく伝令を出して二個小隊ほど呼び寄せましょう。悪魔の軍勢に変化があった際にまた臨機応変に対応すれば問題は起きないかと」
「はい、ではその方向で連絡をお願いいたします。それとできれば工兵を幾人かよこしてもらえないでしょうか。この場所に―― なんというのでしたか、大きな固定式の弓台を建造できないかと考えました」
「それは弩砲、つまりバリスタのことでしょうか。まさかそれを姫様が人力で引くと? 普通は馬で引いたり巻き上げ機を使って数人で運用するものなのですが……」
「この場所から魔界門まで届かせるには、城の外壁に設置しているあのくらいの大きさが必要かと思いまして。さすがに毎日近くまで見に行くのではお供をしてもらうのも大変ですから」
「うーむ、だから一人で行かせろと言われるよりはいいかもしれませんな。仕方ありません、それも同時に手配いたしましょう。おそらく明日中には出来上がるかと」
「わがまま申し上げます。それにしても、いつになったらあのにっくき魔界門を破壊できるようになるのでしょうね」
「まったくです。姫様が叩いても蹴っても傷一つつかないのですから驚きです。斧程度では刃こぼれしてしまいますし、傷が入ってもたちどころに治っていくとは恐ろしい代物です」
当初の目的である魔界門の破壊を実行すべく、悪魔を蹴散らしながら門へと接近し攻撃を仕掛けたところ、シンデレラの全力をこめた拳でも傷一つつかなかったのだ。
もちろん普通の剣では反対に折れてしまう始末だし、一番頑丈な武器である大斧を用いた一撃ではわずかに傷が入ったが、それも自動的に修復されていった。
おそらく不浄の大気が漏れ出ているうちは破壊できないのだろうと当てを付けたシンデレラたちだが、かといっていつまでも眺めているわけにはいかない。そこで遠くからでも狙撃できる準備をしようと言うわけである。
それから二日ののち、彼女の要望通りの大型弩砲が前線陣に据え付けられた。巨大な弓に腕よりも太い弦が張ってあるのだが、その佇まいは常識外れもいいところだ。
なにせ城にあるものは後部に巻き上げ装置が付いていて、兵士が二人か三人で引き絞る構造である。それが普通の弩をただ大きくしたようなものが荷車に乗っているのだから誰もが目を止めるに決まっている。
まもなく陽が落ちようとするころ、また小さな悪魔との戦いが始まるのかと、部隊員たちがうんざりしながら立ち上がり権を握り締めた。
そんな彼らの負担を少しでも軽くしたいと願うシンデレラは、バリスタのすぐ後ろへと陣取り、第一の矢をつがえた。
ー=+--*--*--+=-ー=+--*--*--+=-
本作品をお読みくださいまして誠にありがとうございました。数ある作品の中から拙作をクリックしてくださったこと感謝いたします。少しでも楽しめたと感じていただけたならその旨お伝えくださいますと嬉しいです。
ぜひお気に入りやハート&クラッカーをお寄せください。また感想等もお待ちしておりますので、併せてお願いいたします。
悪魔たちの行動原理は何なのだろうか。もちろん目的は女性だけをさらっていくことから繁殖のためと思われる。
しかしなぜ大挙してやってくるのか。なぜ命を落とすことを厭わないのか。そしてこの数はどうやって生み出されているのだろうか。
シンデレラはこの戦いの根幹についてわからないことだらけだと、心の中で吐き捨てていた。
もちろん理由がわかったとしてもやるべきことは変わらない。襲い掛かってくる悪魔たちを全滅させなければ自分たちが滅びるのだから。
それでも悩みは攻撃の手を鈍らせる。それでなくとも皆の顔には明らかな疲労がにじみ出ていた。
例の小さな悪魔が大挙して飛び出し始めてから三日、つい先ほど日が昇り襲来が収まったところである。
「姫様、無理をせずゆっくりとお休みください。我々も交代で休みますのでご心配なく。歯ごたえのない相手とは言え、こう毎日では皆疲労が蓄積していきますなぁ」
「そうですね。いったいどういうことなのかわかりませんが、いつもっと強い悪魔が現れるかわかりません。気を抜くことはできませんね。ですのでわたしは次の戦いに向け準備を始めます」
「いえいえいけません。せめて半の刻まではお休みくださいませんか? そうでないと皆まで休んでいられないと言いだしてしまいます」
「ですが――」
責任感の強すぎるところは灰賀の性格を引きずっているようにも感じられ、どちらの人格で自制させればいいのかわからなっていた。シンデレラもまた我慢強く泣き言を言わない性格だからである。
灰賀の考えは彼女の、シンデレラの考えは灰賀のものだからややこしい。それでも二人に共通しているのは、周囲の気持ちをおもんばかることができると言うことだ。
「いいえ、ここは素直に言うことを聞きましょう。わたし一人のわがままで舞台全体に悪影響を出すわけにはいきませんからね」
「ご理解いただけでうれしく思います。もちろん私もしっかりと休息を取りますのでご安心ください。現在は部隊を三つに分け交代制としておりますが、このまま続くと疲れが半端にしか取れなくなるかもしれません
「ひとつ考えたのですが、この波が続く間は騎士団にも手を貸していただいたほうがいいのではないでしょうか。念のため騎馬兵と対空部隊のみそのまま待機してもらい、歩兵騎士団に来てもらいませんか?」
これはある意味博打だった。悪魔たちの襲来は、今のところ小さな悪魔がふつふつと湧き出る程度でそれほどの勢いはない。おそらくは今後激しくなるのだろうが、その前に消耗しきっては勝ち目が無くなってしまう。
そうならないよう、この前哨戦ともいえる戦いはなるべく疲労を貯めずに乗り切りたかったのだ。そしてこの案には隊長も即答で同意した。
「ふむ、さすれば部下たちも完全休養が可能でございますな。ではさっそく伝令を出して二個小隊ほど呼び寄せましょう。悪魔の軍勢に変化があった際にまた臨機応変に対応すれば問題は起きないかと」
「はい、ではその方向で連絡をお願いいたします。それとできれば工兵を幾人かよこしてもらえないでしょうか。この場所に―― なんというのでしたか、大きな固定式の弓台を建造できないかと考えました」
「それは弩砲、つまりバリスタのことでしょうか。まさかそれを姫様が人力で引くと? 普通は馬で引いたり巻き上げ機を使って数人で運用するものなのですが……」
「この場所から魔界門まで届かせるには、城の外壁に設置しているあのくらいの大きさが必要かと思いまして。さすがに毎日近くまで見に行くのではお供をしてもらうのも大変ですから」
「うーむ、だから一人で行かせろと言われるよりはいいかもしれませんな。仕方ありません、それも同時に手配いたしましょう。おそらく明日中には出来上がるかと」
「わがまま申し上げます。それにしても、いつになったらあのにっくき魔界門を破壊できるようになるのでしょうね」
「まったくです。姫様が叩いても蹴っても傷一つつかないのですから驚きです。斧程度では刃こぼれしてしまいますし、傷が入ってもたちどころに治っていくとは恐ろしい代物です」
当初の目的である魔界門の破壊を実行すべく、悪魔を蹴散らしながら門へと接近し攻撃を仕掛けたところ、シンデレラの全力をこめた拳でも傷一つつかなかったのだ。
もちろん普通の剣では反対に折れてしまう始末だし、一番頑丈な武器である大斧を用いた一撃ではわずかに傷が入ったが、それも自動的に修復されていった。
おそらく不浄の大気が漏れ出ているうちは破壊できないのだろうと当てを付けたシンデレラたちだが、かといっていつまでも眺めているわけにはいかない。そこで遠くからでも狙撃できる準備をしようと言うわけである。
それから二日ののち、彼女の要望通りの大型弩砲が前線陣に据え付けられた。巨大な弓に腕よりも太い弦が張ってあるのだが、その佇まいは常識外れもいいところだ。
なにせ城にあるものは後部に巻き上げ装置が付いていて、兵士が二人か三人で引き絞る構造である。それが普通の弩をただ大きくしたようなものが荷車に乗っているのだから誰もが目を止めるに決まっている。
まもなく陽が落ちようとするころ、また小さな悪魔との戦いが始まるのかと、部隊員たちがうんざりしながら立ち上がり権を握り締めた。
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