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不真面目なまとめ役
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翌日、午前中の練習はいつもより軽めに終わらせた。練習試合とはいえ、その前に疲れ切ってしまったら何の意味もない。先発のハカセもかるく二十球くらい投げただけで、またあとで肩を作るつもりらしい。
木戸は相変わらず何も言わないし、僕も何も聞かない。別にチーム内がギクシャクしてるわけでもないからこれでいいのだろう。
昼飯の時間になって園子がやってきた。またパンの差し入れに来てくれたようだ。他にも何人か知った顔が応援に来てくれている。相手は格下の妻土高校だけど、夏の予選で当たるかもしれないので油断は禁物だ。前情報だと部員が足りなくなってるみたいなので、補充できたのかどうかそこが気になるところだ。
ほぼ全員が食べ終わってのんびりしてるとき、マネジャーの由布が立ちあがった。
「みなさん、聞いてください。
今日の練習試合の相手は妻土高校ですが、人数が足りないそうです。
そのため本予選には出ないらしいです。
でも今日は塩二久高校から選手を借りてきたので、練習試合はできると連絡がありました」
続いて木戸が立ち上がって話しはじめる。
「そんなわけだ。
でもこちらが手を抜く必要はないからな。
先発野郎どもは気を引き締めて頑張ってくれ。
予選前の成績次第ではレギュラー入れ替えだってまだまだあるからな。
特に無気力プレーは厳禁だ!」
全員がでっかい声で掛け声に近い返事をした。どうやら本当に僕の出番はないかもしれない。咲には昨日伝えておいたから応援には来ないだろう。ということはおそらく小町も来ないはずだ。
十三時からと伝えてあったが、相手の事前練習もあるので試合は十四時近くからになるだろう。荒田は十分温まっているけど、出番がないとなるとかえって冷やしてしまうかもしれない。僕は少し暑いと思ったけど、ナイロンの半そでを重ね着しておいた。
「チビベン、久しぶりの先発マスクだけどしっかり頼むぞ。
ハカセの球は結構揺れるからワンバン止めること意識してくれ。
池田センパイは慣れない外野ですんません。
センターの倉片がフォローに入るので無理しないでOKです!」
木戸が主将らしいアドバイスをしている。今日は先発のハカセが5点取られたら交代と言っていた。二番手は木尾でどんなに打たれても最後まで投げさせるらしい。
やや急増感はあるけど、妻土相手の戦力としては十分そうだ。この温存メンバーで予選を二回くらい勝てれば、残り三試合はフルメンバー全力で行ける。
「よお、俺のことは途中で出してくれるんだよな?
今日さ、バレー部の子が見に来てるんだから頼むよ。
打てなかったらたい焼きおごるからさ」
スタメンから外された丸山が木戸になにやら詰め寄っている。こいつらったら相変わらず緊張感のかけらもない。ただ、少ないチャンスをものにしたいと言う丸山の気持ちはわからなくもない。今まではそうでもなかったけど、やっぱり思春期の高校生としては、彼女がいるのかどうかは大事なことだと考えを改めている。
「わーったよ、二順したら誰かと交代で出すからそうガツガツすんなって。
俺だってお前に楽しい青春を送ってもらいたいからな。
でも出番がない方が観客と一緒にしゃべっていられるぞ?」
「えっ? ベンチにいなくていいのか?
それなら別に出なくても構わんかなー」
ダメだこいつら…… いくらなんでも舐めすぎじゃないのか? 妻土だけじゃなく塩二久の選手も加わってる合同チームなのに。まあ確かにどちらも毎回一回戦負けばかりのチームではあるが、試合前になめてかかっていい理由なんてこれっぽっちもない。
「お前らいい加減にしろよ?
相手が強いところなら笑って済ませられるけど、格下相手の時は失礼に当たるぞ」
おお、僕が言いたいことをハカセがびしっと言ってくれた。でも微妙にずれている気もする。
「じゃあ博士が滅多打ちにあって四点取られたら出る。
それならいいだろ?」
「なにがいいのか全然わからんな。
僕は相手を貶めるように思われるからやめておけと言っている」
「まあそうかもしれねえけど、出番があるのかないのかははっきりさせておきたいぜ。
俺の良さをアピールできるのは野球だけだからなあ」
「よし、まじめに話すぜ。
マルマンは二順までベンチ、三順目の打席から出てもらうからしっかり働いてくれよ。
ハカセは予定通り五失点まで、もしくは六十球超えたら交代でいくぞ。
木尾はハカセの条件をちゃんと見ておいて、出るタイミングに合わせて肩を作ること。
一年坊どもはこのチャンスをきっちり活かしてくれよ!
先輩方は最後の夏になるから悔いの無いようにがんばろう!」
「「ウィッス!!」」
なんとか無事にまとまって一安心だ。なんといっても相手に失礼をしたら自分たちの株を下げることになる。そうしないため、試合に勝つことももちろん大切だが、スポーツマンらしく勝負自体に敬意を忘れないことが一番大切だろう。
気合は十分、指揮が高い状態で試合に臨めるようにすることが主将の大切な役目ならば、木戸にはその力が備わっている。つくづく味方でよかったと感じる瞬間だった。
ここまで持ってくるまでにおチャラけるのが最大の難点なんだけどな…… なんてことを考えているうちに試合開始となった。
木戸は相変わらず何も言わないし、僕も何も聞かない。別にチーム内がギクシャクしてるわけでもないからこれでいいのだろう。
昼飯の時間になって園子がやってきた。またパンの差し入れに来てくれたようだ。他にも何人か知った顔が応援に来てくれている。相手は格下の妻土高校だけど、夏の予選で当たるかもしれないので油断は禁物だ。前情報だと部員が足りなくなってるみたいなので、補充できたのかどうかそこが気になるところだ。
ほぼ全員が食べ終わってのんびりしてるとき、マネジャーの由布が立ちあがった。
「みなさん、聞いてください。
今日の練習試合の相手は妻土高校ですが、人数が足りないそうです。
そのため本予選には出ないらしいです。
でも今日は塩二久高校から選手を借りてきたので、練習試合はできると連絡がありました」
続いて木戸が立ち上がって話しはじめる。
「そんなわけだ。
でもこちらが手を抜く必要はないからな。
先発野郎どもは気を引き締めて頑張ってくれ。
予選前の成績次第ではレギュラー入れ替えだってまだまだあるからな。
特に無気力プレーは厳禁だ!」
全員がでっかい声で掛け声に近い返事をした。どうやら本当に僕の出番はないかもしれない。咲には昨日伝えておいたから応援には来ないだろう。ということはおそらく小町も来ないはずだ。
十三時からと伝えてあったが、相手の事前練習もあるので試合は十四時近くからになるだろう。荒田は十分温まっているけど、出番がないとなるとかえって冷やしてしまうかもしれない。僕は少し暑いと思ったけど、ナイロンの半そでを重ね着しておいた。
「チビベン、久しぶりの先発マスクだけどしっかり頼むぞ。
ハカセの球は結構揺れるからワンバン止めること意識してくれ。
池田センパイは慣れない外野ですんません。
センターの倉片がフォローに入るので無理しないでOKです!」
木戸が主将らしいアドバイスをしている。今日は先発のハカセが5点取られたら交代と言っていた。二番手は木尾でどんなに打たれても最後まで投げさせるらしい。
やや急増感はあるけど、妻土相手の戦力としては十分そうだ。この温存メンバーで予選を二回くらい勝てれば、残り三試合はフルメンバー全力で行ける。
「よお、俺のことは途中で出してくれるんだよな?
今日さ、バレー部の子が見に来てるんだから頼むよ。
打てなかったらたい焼きおごるからさ」
スタメンから外された丸山が木戸になにやら詰め寄っている。こいつらったら相変わらず緊張感のかけらもない。ただ、少ないチャンスをものにしたいと言う丸山の気持ちはわからなくもない。今まではそうでもなかったけど、やっぱり思春期の高校生としては、彼女がいるのかどうかは大事なことだと考えを改めている。
「わーったよ、二順したら誰かと交代で出すからそうガツガツすんなって。
俺だってお前に楽しい青春を送ってもらいたいからな。
でも出番がない方が観客と一緒にしゃべっていられるぞ?」
「えっ? ベンチにいなくていいのか?
それなら別に出なくても構わんかなー」
ダメだこいつら…… いくらなんでも舐めすぎじゃないのか? 妻土だけじゃなく塩二久の選手も加わってる合同チームなのに。まあ確かにどちらも毎回一回戦負けばかりのチームではあるが、試合前になめてかかっていい理由なんてこれっぽっちもない。
「お前らいい加減にしろよ?
相手が強いところなら笑って済ませられるけど、格下相手の時は失礼に当たるぞ」
おお、僕が言いたいことをハカセがびしっと言ってくれた。でも微妙にずれている気もする。
「じゃあ博士が滅多打ちにあって四点取られたら出る。
それならいいだろ?」
「なにがいいのか全然わからんな。
僕は相手を貶めるように思われるからやめておけと言っている」
「まあそうかもしれねえけど、出番があるのかないのかははっきりさせておきたいぜ。
俺の良さをアピールできるのは野球だけだからなあ」
「よし、まじめに話すぜ。
マルマンは二順までベンチ、三順目の打席から出てもらうからしっかり働いてくれよ。
ハカセは予定通り五失点まで、もしくは六十球超えたら交代でいくぞ。
木尾はハカセの条件をちゃんと見ておいて、出るタイミングに合わせて肩を作ること。
一年坊どもはこのチャンスをきっちり活かしてくれよ!
先輩方は最後の夏になるから悔いの無いようにがんばろう!」
「「ウィッス!!」」
なんとか無事にまとまって一安心だ。なんといっても相手に失礼をしたら自分たちの株を下げることになる。そうしないため、試合に勝つことももちろん大切だが、スポーツマンらしく勝負自体に敬意を忘れないことが一番大切だろう。
気合は十分、指揮が高い状態で試合に臨めるようにすることが主将の大切な役目ならば、木戸にはその力が備わっている。つくづく味方でよかったと感じる瞬間だった。
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